梅しごと。「季節の食材で保存食づくり」という行為は、気持ちを豊かにしてくれる。
今日の「時々、コラム。」は地方暮らしを楽しむツールの一つとも言える「梅しごと」について。
今年も梅の季節になりました!
我が家には南高梅の木があり(およそ10年前に植えたもの)、毎年実をつけてくれます。また、朝晩の犬の散歩の際には、ご近所さんの庭を眺めて「わあ、この家のは今年もたくさん実がついてるなあ」「ここの梅は小さめなのね」と、梅チェックも欠かしません。
事務所のある「オープンスペース.美南」さんの庭にも梅の木がたくさんあり、どの木も実をたくさんつけています。今週、少し収穫させていただけることになったので、自宅から瓶などをせっせと運んで、事務所で「梅しごと」にいそしみました。
仕込んだのは梅シロップ。
美南さんの庭の梅に、我が家の南高梅も少し加えて、大小ランダムな梅たち。
水で洗ってへたを取り、
梅の組織を壊してエキスが出やすくなるように冷凍庫でひと晩凍らせます。冷凍せずにそのまま漬けてももちろんOK。
氷砂糖1㎏に梅だいたい1㎏。氷砂糖→梅→氷砂糖→梅、という順番で消毒した瓶に入れて、できあがり。
少しだけお酢を入れると発酵しにくいとか、氷砂糖じゃなくてきび砂糖やグラニュー糖で作ったりとか、レシピはいろいろありますが、まあ気をつけて消毒すれば誰でもおいしいシロップを作ることができます。
あっけないほど簡単ですが、できあがった瓶は氷砂糖のキラキラと青梅の緑色がとてもかわいい。
青梅はすぐに色が変わって、やがてしわしわになっていくのだけど、仕込んだ直後の水玉模様のかわいらしさは本当に愛おしくて、「ああ、豊かだなあ…」と思います。
家を建ててキッチンが広くなった時には、とにかく保存食作りが楽しくて、梅もいろんな方法で瓶に仕込みました。梅シロップ、梅酒、うまみ漬け、梅干し、梅味噌、梅醤油などなど。
「瓶に何かを仕込む」という行為は何であんなにわくわくするのでしょうか。一時期は「保存食用の小屋が欲しい」とまで思ったほどです。
いろいろな保存食づくりをひと通りやってみて、自分に合った調理法や、味の好みがだいたい分かってきて、今は梅を使った保存食は梅シロップと梅干しだけ、ちょこっと漬けるだけですが、それでも「季節の食材で保存食づくり」という行為は、気持ちを豊かにしてくれます。
自分が自然の中で生きている、生かされていることを実感するというか(大げさだけど)、「おいしいものを今年も食べることができて、ありがとう!」という気持ちになるのです。1年に1度、しみじみ感じる豊かさ…これぞ、地方暮らしの至福のひとときです。
そう言えば実家の母も毎年尋常じゃない量の梅やラッキョウを仕込んでいて、梅干しなんて一生消費できないのでは…と思うほどなのですが、歳を重ねた母なりに「今年も無事に仕込むことができた」という安堵感や幸せを感じているのかもしれません。
ちなみに我が家の梅干しは毎年、石見焼のふたつぼで保存して、そこからWECKのちいさな瓶に小分けにして常備しています。
石見焼は塩分に強いので、梅干しや味噌を入れて長期保存するのにも向いているのだそうですよ。
今年は、昨年出雲市の「松ヶ枝屋」さんから頂いた漬物用の桶(これも石見焼)で仕込んでみたいなあ、と思っています(松ヶ枝屋さんから頂いた漬物桶の話はこちらから)。
「シマシマしまね」にお越しくださるお客さまの中にも梅を仕込んだりいちごジャムを作ったりと、保存食づくりを毎年の恒例行事にされている方がたくさんいらっしゃいます。
思うに、島根はそういう「季節の手仕事を楽しむ暮らし方」がとても、しっくりくる土地柄なのです。
田舎に行けば行くほど庭が広く、梅やびわ、柿の木が植わっています。特に梅はあちこちで見かけるのですが、これは梅の花が咲く時期と大いに関係していると思います。
雪が多い地方では、春の訪れは何よりも待ち遠しいもの。2月、早春の頃にほろっとかわいらしい花を咲かせる梅は、「ああ、もうすぐ春が来る」と人々をわくわくさせる、そんな役割を持っているのです。だから、山深い土地であればあるほど、梅を植えたくなるんじゃないかな。
びわも果実酒にしたり葉っぱをお茶にしたりできますし、柿は干し柿にして冬場の貴重な甘味になります。自分の家で育てたもので暮らしを豊かに育んでいく、そんな時間の過ごし方が、比較的容易にできてしまうのが、島根をはじめとする地方の良いところではないでしょうか。
こういう「季節の手仕事」に真剣に向き合えば向き合うほど、地方の暮らしはせわしなくなってきます。春は山菜、ジャムづくり。
梅雨の時期は梅しごと。山椒も実がなり始めて、こちらも保存食に。夏場はキュウリやナスでぬか漬け。赤紫蘇でシロップも。
秋から冬にかけては大根やゆず、白菜など、これも保存食にぴったりの食材たちがわんさか採れますから(買わなくてももらえたりする)、頑張って作って、頑張って食べないと1年が回らないのです。ほんと、地方の暮らしは忙しい!
「今年は梅がたくさんなりますね」「今年は梅ができませんが~(できないですね、の意)」などの会話も、ご近所の方とのコミュニケーションの糸口になります。暮らしと自然が混在し、ないまぜになっているのが、地方の醍醐味だということでしょう。
また、そこかしこにこうした自然の恵みが育っていることで、外に出て、上を向いて歩くことがとても楽しくなります。梅の季節には自然と顔が上向きになっていて、「ああ、いつもは下を向いて歩いていたんだなあ」と感じることも。
そして何より、仕込み終わった保存食をおいしくいただくことができる。
夏の暑い時期に、梅シロップを炭酸水で割って飲むと、甘みと酸味で疲れが取れる気がします。
今週事務所で仕込んだシロップは、夏場の仕事のお供にできたらいいな、と思っています(うまく仕上がりますように…)。
季節ごとにちょこっとずつつまんでいる程度ですが、それでも「ああ、ここに暮らしててよかったな~」としみじみ感じることができる、自然との対話とも言える保存食づくり。とても豊かな時間で、願わくばこの暮らし方を次の世代にもつないでいきたいなあ、と思います。
「季節を感じる暮らし」が受け継がれていくことで、地方が地方である意義が保たれるのかも。
今は青梅の盛りですが、もう少しすると梅も黄色く色づきはじめ、それは「梅干しづくり」の合図です。熟しすぎないうちに早く漬けねば!と、これもとても気忙しくなります。
梅干しづくりもすごく簡単。赤紫蘇で色付けをするのが少し面倒ですが、色付けしない白干しだったら本当に手間いらず。
夏のお弁当や食欲のないときの一品にぴったりなので、手に入る方はぜひ、チャレンジしてみてくださいね!
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