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地域づくりに「正解」はない。あるとすれば…

地域づくりに「正解」はない。あるとすれば、「住民の方たちが一生懸命考えた結果」が正解に一番近い形、なのではないでしょうか。

かつて活動していた「はたよどり」という地域に出会うまでは、「地域に賑わいを」が正解で、それが地域づくりや町おこしなのだと思っていました。

今日の「時々、コラム。」は、私たちの活動の原点であり、方向性に気づきを与えてくれた場所について綴ってみたいと思います。

今週、ふと思い立ってかつての事務所があった雲南市の「はたひよどり」へ出かけました。
2021年の冬にいまの「オープンスペース.美南」に移転するまで、この「はたひよどり」が私たちの拠点でした。
山の中の一軒家を借りて活動をしていたわけですが、この地域に暮らす皆さんの誇りが、「畑展望公園」。くらしアトリエは折に触れてこの公園の魅力を発信し続けてきました。

「畑展望公園」でGoogle検索すると、まず出てくるのがこちらのnote。

また、Instagramのハイライトからも、はたひよどりの様子を見ることができます。

今週、「そろそろ紅葉がピークかな」と出かけてみたのですが、もみじの色づきはまだまだ、といった感じで、山が赤くなるのはもう少し先のことなのかな、という印象でした。

もちろん、紅葉の見ごろでなくても、この公園には素晴らしい眺望があるので、出かけるたびに「すごいな~」と感動します。

地域の方が設置している芳名録を見ると、「日本じゃないみたい」とコメントを書いておられる方もいらっしゃいました。お世辞とか比喩とかじゃなくて、壮大で、すこーんと気持ち良いくらい遠くまで見える景色を見ると、本当にそう思えてくるのです。

もちろん、もっと眺望の素晴らしいスポットは全国的に見ればたくさんあると思います。でも、この「畑展望公園」の素晴らしいところは、畑地区の皆さんが自らこの公園をつくり、守っていらっしゃるところ。

高齢化で草刈りなどがままならなくなって、アウトソーシングしている、と聞いていたのですが、先日行った時も遊歩道の草はきれいに刈られていて、危なげなく上に登ることができました。
おそらく、なのですが、以前この公園がローカルテレビで取り上げられ、放映されたことがあったそうで、その時にすごくたくさんの方が訪れたとのこと。きっと、地域の皆さん張り切っちゃったんだろうな、と想像しています。案内板や眺望ガイドなども新しくなっていて、気概を感じました。

地方の、しかもこの「はたひよどり」のようないわゆるキーパーソンがいない限界集落においては、テレビや新聞の威力は絶大です。

だからきっと、テレビで取り上げられたということは何よりの誉れで、ビッグニュースだったに違いありません。

くらしアトリエはこの「はたひよどり」という土地で活動することで、「地域おこしって言うけれど、”おこされる“ことを必要とされていない場合もあるんだな」ということを知りました。

もし私たちがもっと積極的に地域の中に入り、「こうしたほうが絶対いいですよ!」と前に出て提案をし、地域を変えよう!と運動をしたとしたら、あの土地で円満に活動をすることはできなかったんじゃないか。
なぜなら、地域の方々は誰も、「地域を変えよう」とは思っていなかったからです。

「公園をもっと多くの方に見てもらった方がいい!」と伝えても、「人が来るのは嬉しいけど、あんまりたくさん来られると困る」という返事が返ってきたり。
「何か皆さんの役に立ちたいので、映画上映会をしたいんです」と言っても、「観たい映画なんてない」と一蹴されたり。

もしかしたら、もっとガツガツとアプローチをして強引に地域の中に入り込んでいたら、あるいは「はたひよどり」はもっとアグレッシブな地域になっていたのかもしれないけれど、私たちはそんなことしたくなかったし、向こうも望んでいなかった(ように見えました)。

地域の活性化、ということで言えば、私たちがいた約12年の間、「はたひよどり」の認知度は少しは上がったかもしれませんが、結果としては「ほぼ何も変わらなかった」気がします。でも、それが間違っているとは思わないのです。賑やかにはならなかったけれど、それが悪いことだとは、思えない。

もし、はたひよどりの皆さんが「もっと地域を元気にしたいんだ」とおっしゃっていたら、私たちは必死でそのリクエストに応え、いろんな企画を提案し、一緒になって街を元気にしていたと思います。

でも、元気になることだけが、解決策ではない、というのを、何となくですが皆さんが教えてくださっていたようにも思うのです。賑やかになるだけが地域づくりのあり方ではなく、いろんな地域があって当然ですよね。

静かに、毎年、毎月、毎日を同じように過ごして、歳をとって……。もしかしたらこのまま「静かに閉じていく」のかもしれませんが、それも、皆さんが選んだなら、誰にも邪魔はできないのでは、と思ったりします。

逆にもし、私たちくらしアトリエが「はたひよどり」ではない、もっと「地域づくり」が盛んな場所に拠点を持っていたなら、今のような「シマシマしまね」は存在しないし、かつて行っていた「くらしの学校」も「地元を愛する集い」も、開催されていなかったでしょう。

あの土地で、お互いにいい距離感を保って、いい意味で放っておいてもらったからこそ、「本当の地方とは」を模索することとなり、結果的に、お年を召した方にも喜んでいただけるようなアイデアや、前に出過ぎない在り方のようなものを育んでこれたのでは、と思うのです。

もちろん、これが地域づくりの正解!と言いたいわけではありません。それぞれに役割があり、それぞれに成果がある。たまたま、「はたひよどり」と「くらしアトリエ」は、相性が良かったような気がします。(少なくとも私たちはそう思っています。)

NPO法人のくらしアトリエは、地域づくり団体にカテゴライズされているけれど、地域を「つくる」ってすごく大きなことで、その地域に暮らす人自身が考えていかなければならない。私たちにはその「お手伝い」はできても、真ん中に立って牽引することはできません。

ですが、こうして折に触れて出かけた場所のいいところを、写真や文章で切り取って、皆さんにお伝えすることはできる。
地域で作られたおいしいものや手仕事のものをピックアップして、それを望んでいる方に届けることができる。

それくらいの塩梅で、日々を過ごしている皆さんの伴走者のような立ち位置が、ちょうどいいなあ…、というのが、活動を続けてきて見えてきた「くらしアトリエの在り方」。

ぐいぐい引っ張っていくことはできませんが、寄り添って背中をちょっとだけ押すくらいはできる…そんなスタンスで活動を続けていく、ということを、この地域が教えてくれたんだと思います。

それは、この静かで美しい土地で、シャイで静かな住民の方の中に入らなければ、分からなかったのかもしれないね、と、この公園に来るたびにスタッフと話しています。

畑展望公園の紅葉は、これからが本番かな、という雰囲気です。寒くなると雪が積もってしまうのですが、晴れた日には遠くまで見渡せる眺望が、地域の皆さんの誇り。ぜひ一度、訪れてみてくださいね。

注:展望台にある望遠鏡に出雲縁結び空港発着の飛行機のタイムスケジュールが置いてあるのですが、少し前のものなので離発着の時刻が正しくありません。
このあたりも、地域の皆さんの「来た人に何とか楽しんでもらいたい」という意気込みがあらわれていて、私はすごくじーんとしたのですが、ご覧になる際にはご自身でスケジュールを調べて頂ければと思います。

展望公園の近くの「簸川三山展望所」も眺望が見事です。

こちらもよかったら寄ってみてくださいね。駐車場はありませんが、車1台が停められるスペースがあります。

2023年の秋も残りわずか。思いっきり堪能したいものです!

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