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真剣に頑張ることに貪欲であれ ~「スラムダンク」が教えてくれたこと。

今日の「時々、コラム」はnoteのお題企画から、「#マンガ感想文」で記事を書こうと思います。

…とはいえ、自分自身特別マンガが好き、というわけではなく、家にあるマンガも数えるほどなのですが、その中から、みんな大好き「SLAM DUNK(スラムダンク)」の感想文を、ネタバレしすぎない程度に書いてみようと思います。

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「スラムダンク」は言わずと知れた、井上雄彦さんによる高校バスケ漫画です。湘北高校という高校のバスケット部に個性的な面々が集まり、神奈川県大会からインターハイへと歩みを進めていく中での成長や葛藤を描いたもので、私と同じような年代の方なら一度は読んだ、という方も多いのではないでしょうか。また、読んだことはなくてもいろんな名言、例えば

「あきらめたら そこで試合終了ですよ…?」 by安西監督
「安西先生・・・!!バスケがしたいです・・・・・・」 by三井寿
「『負けたことがある』というのが いつか大きな財産になる」 by堂本監督

などは馴染みのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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自宅には「完全版」というのでしょうか、普通の単行本じゃないやつがあります。マンガ自体は1990年から週刊少年ジャンプで連載が始まったとのことですが、私がきちんと読んだのは、2000年に娘たちを出産して間もない頃。オットが1冊ずつ買ってきてくれて、当時双子の育児をしていてあまり外出できなかった私にとっては、大きな娯楽のひとつでした。

読み始めた時点で登場人物はみんな年下で、今となってはもう息子くらいの感覚の年の差があるわけですが、不思議とそれを感じない、読み始めると女子高生の頃のマインドに引き戻される、そんな力があります。

…と思えば、例えば娘たちは小学生のころにこの漫画を読み始め、大学生になった今でも「とうとう花道が年下になってしまった…」と言いながら夢中で読んでいたりするので、その年代、その時の自分自身に置き換えて、漫画の中で暴れたり笑ったり泣いたりできる、というのが魅力なのかもしれません。

おかげで、我が家で誰かが「背中が痛い」と言えば、必ず「選手生命の危機だね」と言うくらいには、みんなスラムダンクファンです。

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あまりマンガに人生観などを求めるほうではありませんが、誰一人として完全な、完璧な人間などいないのだ、というのが「スラムダンク」を読むと伝わってくるし、その凸凹を補い合うようにして成り立っているのが湘北のメンバーである、とも言えます。例えばメガネくんこと木暮キャプテンは勉強もできるし理論派だけど、バスケの実力はレギュラー陣には及ばない。バスケセンスは誰よりも高い流川楓は性格に問題あり、など。

尖ったり凹んだり、いびつなもの同士がぶつかり合って、ある瞬間にガチっとハマる、その面白さが人をわくわくさせるのではないでしょうか。

そして、私が「スラムダンク」が好きな一番の理由は、「基礎が大事」という、スポーツにおいて鉄則であるけれど通常あまり描かれないところをきちんと描写し、最後にその積み重ねが花を咲かせる、という、ある意味「地味な」部分です。

主人公の花道はカッコいいダンクシュートに憧れ、目立つこと(女子にモテること)を第一に考えますが、メンバーやマネージャーたちに毎日バスケの地味な基礎を叩きこまれます。

ボールハンドリングとドリブル左右500回ずつといった基礎練習や、安西監督による強化合宿でのシュート2万本練習などは、最後のあの瞬間に放たれる1本のシュート(名言「左手はそえるだけ」のあのシーン)のための伏線であり、人間やっぱり積み重ねが大切なんだよなあ…その苦労の中で得てきた友情、まわりの人たちの協力、そして何より本人のうまくなりたい!という気持ちが、ぱっと花を咲かせるんだよなあ…と納得させるのに十分です。

スポーツ観戦が何より大好きな私にとっては、選手の裏の部分や、華やかではない部分こそが大好物なので、あれがああなって、最後のアレになるんだなあ…と、毎回報われるというか、スカッとする瞬間です。

そして、ここが多くのファンを虜にする理由のひとつだとも思うのです。天賦の才ももちろんあるけれど、たとえ桜木花道が天才であったとしても、その才能が花開くには惜しみない努力と、まわりの人たちとの縁や関係性が必要なんだよなあ。

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ただ一所懸命なのでもなく、基本的に「人生楽しく」的なキャラクターでありながら、一生懸命やるということを恐れない。真剣に頑張る、ということに貪欲。そして、一度道を踏み外しても、やり直すことができる。バスケ漫画ではあるのですが、ついつい「生き方」「働き方」に投影してしまう、そんな魅力が「スラムダンク」にはあるのです。

ちなみに、「スラムダンク」で誰が一番好き~?というのもよく聞かれる話題ですが、この質問には非常に答えづらい…。

「顔は三井だけど性格は宮城リョータ…パーフェクトなのはやはり仙道…いやあでも藤間も神も捨てがたい…待てよ、まわり回って水戸洋平では?」という感じで、終わりのない問いです。

回を追うごとにぐんぐんと作者の画力が増してくることもあり、魅力的なキャラクターが次々に出てくる、というのも推せる理由です。

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実はこの漫画、スタッフ間でも貸し借りをしています。

その昔、もう10年以上前のこと…とある助成金申請の審査会に参加したくらしアトリエは、「プレゼンは素晴らしかったけど事業の中身がない」という情けない理由で落選しました。

今から考えたら「そりゃそうだわ!」という納得の落選内容だったのですが、その時はそれなりに一生懸命だったため、帰りのエレベーターでしくしく泣いて、審査委員長のおじいちゃんに「残念だったね」と慰められるなど、いやあ思い出すと恥ずかしくて顔から火が出るな…という経験をしたのです。

そんな傷心の中、スタッフが何か現実逃避で夢中になれる読み物を貸してほしい、と言うので「スラムダンク」を貸したのですが、案の定?夢中になって読んで励まされ、お互いにこの漫画が糧になって立ち直れた…というか、気持ちを切り替えることができました。

人生いろいろあるさ、とか、高校生でも這いつくばって立ち直っているんだ、とか、あきらめたらそこで試合終了だったな、とか、そんなことを考えて、次に進むことができたのです。そして今があります。

それ以降、なんか辛いことがあると「スラムダンク借りようかな」とか、「スラムダンク貸そうか?」が「がんばろうね」の代わりの合言葉になることもあり、ちょっと皮肉の効いた励ましにもなっています。

なので、「スラムダンク」は私たちにとってはなくてはならない漫画。

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今も自宅の本棚で文庫本の小説に挟まれていますが、何か辛いことがあったり、気持ちを奮い立たせたいことがあったりすれば、いつでも湘北バスケ部に戻れる。そんな、心強い存在です。

とはいえ、この漫画の出番が来るということは、何か辛いことや気持ちを切り替えたいしんどいことがある、ということになるので、出番が少ないほうがいいと言えばいいのですが…。

スタッフいわく「落ち込んでもスラムダンクがあれば立ち直れると思ってるから、存在自体が支え」とのこと。いずれにしても、ありがたい作品です。


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