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発信も地域づくりも「消費型」でありたくない。(15回目の総会を終えて。)

先週末、NPO法人くらしアトリエの定期総会を開催しました。
昨年度行った事業や決算について報告し、また新年度の事業計画や予算について承認を得るための会議で、すべてのNPO法人に義務付けられているものです。

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2007年に法人化しているくらしアトリエ、今回の定期総会が数えて15回目の、ちょっとした節目を迎えました。

15年前、スタッフの子どもたちもみんな幼く(当時はまだ生まれてない子もいる)、打ち合わせや制作には子連れが必須でした。大変でしたが、今思えばなんだかんだ言ってそっちのほうが集まりやすかったように思います。

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何人かのメンバーの入れ替えはありましたが、今のスタッフ(NPO法人では社員と言いますが)はみんな、もう10年以上一緒に頑張ってくれている人たちばかり。

活動が続くにつれてスタッフそれぞれのライフステージが変わり、頻繁に集まることはできなくなりました。それぞれ、別の仕事を持って休みがとれなかったり、子どもの習い事などで時間をとられたり、転勤で遠く離れてしまったり。

良好な関係性は保ちつつ、久しぶりに会ったときの話題が子どものことからだんだんと健康のことや介護のこと、お墓のこと(以前書いたコラムをご参照ください)などに変わりつつあります。

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リアルに、当時産まれたばかりのスタッフの子どもが、高校生になるくらいだからな~。しみじみ。

立ち上げ当初、「自分たちの子どもが山陰を離れるときに、地元に誇りを持って島根を後にすることがゴール」と冗談半分に言っていたのですが、実際に子どもたちが島根を出てもう3年が経ち、子どもたちはそれぞれに相応の誇りを持っていてくれていて、「これは、もう目標達成なのでは?!」と思うところもあります。

それでも、「続ける」ということには、すごく意味がある、とあらためて思う。

「住まう人」と「地域」、そして「暮らし」とのかかわりについて、ずっと考え続けて今に至るくらしアトリエですが、こういう、一見すると当たり前で誰もが普遍的に持っている思いをコンセプトに掲げているからこそ、長く続けることが大切なんじゃないか、と思うのです。

なぜかと言うと、誰かが地域での生き方・暮らし方に悩んだり迷ったりしたとき、「当たり前」をずーっと発信し続けている団体がひとつあることで、「ああ、そうだった、島根で暮らすことの豊かさがここにあった」と再確認できるんじゃないか、と思うからです。

この地域に住まう人の横で並走しながらずっと変わらず、「島根って素敵なところだよねえ。ここに住んでいてよかったなあ」とふんわりと言い続けてる人がいるのといないのとでは、地域と暮らしの見え方が違うような気がするのです。

流れる時代の中で、ずっとそこにとどまっている存在…とどまっているからこそ、迷ったときに見つけやすい、そんな存在でありたい。

それは、いわゆる「バズる」=消費型の発信とは対極にあるあり方、とも言えます。

「そう言えば島根っていいよね、ってずーっと言ってた人たちがいたなあ…」と検索してもらったり、思い出してもらえるような存在であることが、自分たちの理想。だから、頑なにシビックプライドを掲げて発信を続けています。

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「続ける」ということは、地域づくりにおいてもとても重要だと思います。

今まで、ぱっと盛り上がっては廃れ、盛り上がってはさーっと波が引いていく、という地域づくりを目の当たりにしてきました(その間、自分たちはずっと同じことを言い続けていたわけですが)。

その結果、なんだか切ない、どんよりとした空気が残る。

その言いようのない「地方の哀愁」みたいなのが、常にどこかで起こっているように思います。もちろん、みんな地域を良くしたい、盛り上げたい、という熱い思いで動いた結果なのですが、どんなに大変でも続けていく、続けられる人がいる、というのは案外難しいのかもしれません。

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くらしアトリエは直接的に地域づくりにかかわっているわけではありませんし、今はむしろそことは距離を置きつつ、「人が楽しく、豊かに歳を重ねていくために」という、より概念的な部分に注力しているので、偉そうなことを言える立場ではありませんが、情報が豊富に行き来し、かかわり方が多様化する今だからこそ、地域づくりも「消費型」であってほしくない、と強く思っています。

地に根を下ろして発信し続けることに固執しているのは、そんな思いもあるのです。

ポスターデザイン山-サイズ小

くらしアトリエとしては、島根が、あるいは山陰が、そこに暮らす人たち自身の誇りと愛着によって輝くような地方であってほしいと考え、新年度からもまた変わらず、発信を続けていくつもりです。

もちろん、おいしいお店の情報やおすすめスポットなどの発信も大好きなので続けていきますし、たまには固い話題や、真面目に地域を語ることも、同じように行っていきます。

自分たちも迷いながら、試行錯誤しながらではありますが、芯の部分は変わらずに、常にわくわくする気持ちを忘れずにありたい。
総会を終え、楽しそうに近況報告をしているスタッフたちを見ながら、そんなことを感じました。

サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。