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ひとりで楽しむことの価値。

3月くらいから、自分たちならではの「ニューノーマル」のあり方をいろいろと考えてきましたが、そのうちのひとつが、より多様性が認められる社会になるのかも、という期待でした。

具体的には、「ひとりでいることが良しとされる社会になるのかな」という期待です。

「大勢で楽しむ」ことと「ひとりで楽しむ」ことは、これまで同じ価値を持ってなかったように感じていました。

すなわち「大勢で楽しんだほうがいいじゃん」という圧が、ひとりが楽しい人々に少しずつストレスを与えているんじゃないか、という仮説です。

「ひとりなの?かわいそうに」と言われる(気がする)。「こっちにおいでよ、楽しいよ」と言われる(気がする)。被害妄想かもしれませんが、ひとりでいることに楽しみを感じる人間にとって、「数の論理」はある意味脅威なのでした。

「ひとりでいることがみんなでいるより楽しい人なんている?」という声が聞こえてきそうですが、もちろんいるのです。ただ、「完全に一人で生きている」人はそうそういなくて、ひとりでいることが楽しい、という人の背景には、分かり合える人や信頼できる人が必ずいるように思います。私自身、思いをぶつけられる家族や仕事仲間がいるから、ひとりでの時間を楽しむことができる。孤独が楽しい、というのではなく、「それぞれが自立して楽しむこと」を「ひとりが楽しい」と言い換えている、のだとご理解ください。

そんな「ひとりが楽しい人たち」にとって、大勢でワイワイすることは苦手であり、数の論理で迫られると反論もできず、「かわいそうだと思われていないだろうか…」という意識にさいなまれつつ日々を暮らしていました(大げさ?)。

それが、「自粛」「ステイホーム」という世の流れでひっくり返るかもしれない。少人数で、あるいはひとりで何かをするということはむしろ称賛され、社会に影響を与えないことが良いことだとさえ思われる。

ひとりでいることが、大勢でワイワイするのと同じ重さで「いいね」と言われる。そんな社会になるのでは…なったらいいな。

もう一度説明しますが、大勢でワイワイするのを否定してるのではなく、ひとりでいることが、大勢でワイワイするのと同じ重さで「いいね」と言われる日が来るかもしれないと言う「ひとりでいることが楽しい派」(おそらくマイノリティ)の密かなる期待、ということです。

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現在、「シマシマしまね」の施設は完全予約制、そして貸切制です。おひとりで、あるいはお友だちなど信頼のおける人同士でお越しいただき、2時間という時間を思い思いに過ごしていただいています。

読書をしたり手紙を書いたり、おしゃべりをしたり。

私たちスタッフは気持ちの良い空間をつくることに尽力し、お客さまをお迎えする。そして最後に「のんびり過ごせました」と笑顔で帰られるお客さまをお送りする。

お店が定期的にオープンしていた昨年度までの状態、つまり「シマシマしまね=ショップ+ワークショップ」という形態しか知らない方にとっては、なんて不効率な…と思うやり方かもしれませんが、それは経済的な軸から見た思考(収益がどのくらい出るのか、という指標に基づく考え方)であり、今回来られたお客さまの満足度や、スタッフの精神的充実度を測ると、今までとなんら遜色はないように思います。

人と人とが直接会って生まれるつながりや縁ももちろん大切だけど、ひとりの時間や、自分と向き合う時間も同じように大切で、そっち側ももっと評価されていい。

そのための場所として、「シマシマしまね」を使ってもらいたい。「集まって何かをする」という価値と同等に、「自分だけの時間を満喫する」という価値もあるはずで、それを提供することが、山の中で活動する自分たちの強みになるんじゃないか。

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そんな気持ちもあり、予約・貸切制という運営を始めたのですが、天気の良い日も雨の日も、目の前の緑はとても美しく、いらっしゃる方々は思い思いに過ごしてくださり、田んぼは風に揺れ、鳥がさえずり、私たちスタッフは総じてめちゃくちゃハッピーな日々を過ごさせていただいています。「ここでの時間を楽しむ」ことの価値を、お客さまに初めて教えていただいたような感覚です。


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世の中では「早く元に戻るといいですね」というのが会話の定型句みたいになっていて、「元に戻ることが良いことだ」みたいになっているけど、それはもちろんそうなんだけど、どうせなら全部ひっくるめて元どおり!みたいな大雑把な収束ではなく、これをきっかけに新しい価値観や今までと違う概念を認めるような社会になるといいな…。

くらしアトリエでは「自分の時間を大切にする」という概念をこれからもずっと持ち続けたいし、施設での活動も、「くらしの学校オンライン」も、それぞれがそれぞれの時間や学びを大切にするツールとして、役立ててほしい、と思っています。


とはいえ、「ひとりを推奨する地域づくりのNPO」というのは、一見するとすごく矛盾しています。「地域づくりとは大勢でするもの」というのが固定概念だからです。

ここからが本題。

私たちはそもそも、地域づくりは「自分と、自分の周りにあるもの」が基本だと思っています。

まず自分自身が、住んでいる土地を楽しみながら暮らしたい。

そのためには、おいしい料理を作りたいし、家族が良いコンディションでいられるように気を配りたい。知的好奇心を忘れず、いつも学ぶ気持ちを持ってアンテナを張っていたい。そんな「ひとりひとりの楽しさの積み重ね」が少しずつ連鎖して、最終的に地域全体を豊かにするんじゃないか、というのが私たちの持論です。(大げさかもしれないけれど、NPO法人設立時からこのことをずっと訴えています。)

一人一人が楽しいという図

(いらないかな、と思いつつも、せっかく図を作ったので載せてみます。図にしたら図にして説明するほどでもなかった‥。)

それぞれが同じ気持ちで「ここで暮らすこと」を存分に楽しめば、おのずと地域は活気を持つだろうし、明るくなるのではないだろうか。

だから、「ひとりを楽しむこと」と「地域づくり」は乖離していないし、大勢じゃなくても寂しがる必要はない、と思うのです。


13年前に開催したイベントで、「人がたくさん集まることでの功罪」を痛感している私たちにとって、たくさん人が来るというのは喜びであると同時に、恐怖でもありました。

以来、企画段階で「このくらいの人数の方に来てもらいたい」という目安を自分たちで作り、なるべくそれを超えないように、つまりはバズらないように、確実に楽しんでいただけるように、というところに心を配って運営をしてきたつもりです。

今思うのは、「たくさんの方にコンセプトを伝える」ことと「たくさんの人に来てもらう」のは同じではない、ということ。今までその2つを=(イコール)で結ぼうと頑張ってきたけれど、今回の自粛期間は、自分たちなりの「伝え方」をあらためて考える良い機会になったと思っています。

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大勢でワイワイするのもいいし、ひとりでじっくり楽しむのもいい。他にもいろんな価値があるかもしれない。どの価値が優れているとかではなく、いろんな価値を認めることで、社会が成熟すると思うんですよね。なので、「シマシマしまね」はおひとりさま大歓迎ですし、自分の時間を過ごしたいという方にはぴったりの場所です。もちろんお友だち同士で過ごされるのも良いですし、制限人数ギリギリでいらして、ワイワイ過ごされてもOK。

7月は暑さがだんだんと厳しくなりますが、緑も濃くなって田んぼの風景も面白くなってきます。良かったら、緑を感じる貸切の時間を楽しみにいらしてくださいね。お待ちしています!


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