見出し画像

読書紹介 第四冊 『若きウェルテルの悩み』

若きウェルテルの悩み 著:ゲーテ 訳:酒寄進一

言わずと知れた大文豪の作品である。
非常に有名だが、最近まで目を通したことが一切なかった。

読書家を自称している身としては
全くもって恐縮の極みである。


しかしこの作品の存在自体は
実は小学生の時より知っていた。

というのも図書室で読める
『火の鳥』の1シーンにこの作品が登場する。



『火の鳥』未来編より 


この後このカプセルの中にいる
人工生命の末路も影響してか、
私は妙にこの作品が頭から離れなかったのだ。


そんなわけで16〜17年越しの雪辱。
物語は終始、ウェルテルが友人に宛てた手紙
という形で進む。

解説によれば当時の流行りの手法だったようだ。
このやり方も今の『異世界もの』よろしく
批判を受けたりしたのだろうか。


滞在先の村でロッテという女性と出会うウェルテル…
惹かれ合う二人…
しかし彼女には婚約者がいる

世間的に正統な恋人がいる相手に対する恋心の中で、
苦しむ悲劇はいつの時代も変わらぬらしい。

ふと夏目漱石の
『それから』を思い出した。
前期3部作の中継ぎ投手。
あれもまさに、かつて恋をしたが他人の妻に
なった女性に
再び惹かれていく話であった。

しかし受ける印象は幾分も違う。

それから=静的
若きウェルテルの悩み=動的

作家性を除いても、物語の長さや国民性も
関係していそうである。


一度は彼女の元から離れることにした
ウェルテルであったが
また再び村へと戻ってしまう。

その頃ロッテは婚約者の夫になっており
3人の関係は段々と悪化していく。
そして最後には…。

読書経験の豊富な方もそうでない方も
こうなっては、濁さなくても結末は
大体が検討つくはずである。

一番印象に残っている部分を抜粋する。
ウェルテルのロッテに宛てた手紙にて、

「いっそうのことアルベルトを!(ロッテの婚約者)
できなければアナタを!
そうでなければ僕を!
……僕です!僕が消えるべきなのです!」

苦悩に満ちた人間の慟哭が脳内に響くようである。
本当にゲーテは人の感情を書くのがうまい。
(やや演出過剰のきらいはあるが)

人の心を揺さぶるものが
何であるかを本能的に理解し、かつ巧みに表現できるのであろう。

ここまで感情を露にする作品を読んだのも
久しぶりであったため
読書の最中は始めから終いまで
ゲーテの描き出す熱量に押されぱっなし、
そんな作品であった。

皆さんもぜひこの熱風に当てられて
欲しいものである。

以下余談
この作品は当時も大ウケだったようで
その影響が解説にて書かれている。
この作品に関して
・海賊版
・ウェルテルを女性に置き換えた女性版
・悩みを喜びに変えた『若きウェルテルの喜び』
など海賊版やパロディ本が大量に出るほどであったそうだ。

海賊版はともかくパロディ本はいつか読みたい
気もするが、読んだら読んだだけ
ガッカリしそうな雰囲気も十分にある。

とはいえこれは
誰かに影響を受けて作品を作ることが
何も恥ずべきことでない、という教訓を教えてくれる。

芸術は模倣に始まる

…これはゲーテではなかった気がする
失敬、失敬、これにて失礼。









この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?