BLACK LAGOONの魅力、正常位じゃ誰もイケない世界
仕事やめてえ!
とか
世の中クソだよ!
なんて
叫びたくなる夜というのは誰しもあることだろうと思う
そういう時にいつだって味方してくれるのはフィクションで、特にスカッとしたアクション漫画なんて最高だ
でっけえ銃! ごっつい筋肉! ぶっ飛ぶ銃弾! 飛び散る血潮! サイコー!
てなもんで
そして数あるアクション漫画の中でも、クソッタレな仕事と社会にファッキンしたい時におすすめの一冊といえばこれ
『BLACK LAGOON』!
今日はそんなラグーンの魅力についての話
おしながき
・そもそも『BLACK LAGOON』ってこんな漫画
・ファッキン現代社会
・「真逆」のロアナプラ
・誇りはねえのか、お前の頭ン中にはよ!
・全部読むのがめんどくさい時のまとめ
そもそも『BLACK LAGOON』ってこんな漫画
『BLACK LAGOON(以下ラグーン)』は言わずとしれた広江礼威先生の代表作であり、でっけえ銃もったおっかねえレディ達がBANG! BANG! とヤリあっては雑兵共をばったばったとなぎ倒していく爽快ガンアクション漫画である(怒られそう)
舞台は東南アジアの架空の港町、ロアナプラ
きったねえし危ねえしで滅茶苦茶な街であり、マフィアもギャングもなんでもござれの中で人々は「はした金」のために命がけで騙し合い撃ち合いを繰り広げているといった世界観
主人公=ロックは元はうだつの上がらない日本人サラリーマンだったが、東南アジアで海賊(ラグーン商会)に拉致られてから人生が180度狂ってしまう
その後はなんやかんやあって日本の本社から裏切られたりしつつ、自分を拉致ったラグーン商会に加わってはロアナプラでよろしくやっていく
(たぶん)主人公だけどもっぱら雑用・頭脳担当であり矢面に立つことはない
ヒロイン=レヴィはロックをさらったラグーン商会の一員で、二丁拳銃を引っさげた戦闘担当のスーパーウーマン
船上かつ1対30くらいの状況で全員の脳天に風穴あけたりする人外だが、ラグーンの人外の中ではまだ人間に近いと思う
他にもダッチやベニーボーイといった愉快な面々を交え、ラグーン商会は様々な厄介事に首を突っ込んでいく
そして時にはロックの頭脳が、時にはレヴィのマッチョ(大抵の場合はこっち)が襲い来る厄介を解決していくのである。現在も連載中
というような漫画
そして今更だけどこのnoteにはネタバレしか存在しないので、未読の人は読むかアニメを視聴することをオススメします!!!!!!!!!見ろ!!!!!!
さて、未読の人はいなくなったところで考えてみたい
ラグーンを語る上で外せないものと言えばなんだろう?
レヴィの脚線美、ロベルタとぼっちゃんのおねショタ、ヘンゼルとグレーテルのもろもろ……
まあ、それも間違ってはいないけれども
ラグーンを語る上でまず押さえないといけないのは
「現代社会」
だろう
冗談抜きである
というかもう、いっそ宣言しよう
ラグーンは「社会派漫画」なんだ!!!!!!
実のところ、今回はそういう感じの話です
ファッキン現代社会
もちろんラグーンの魅力は小粋な台詞回しと派手なガンアクション(そして性癖全開の美女)にこそあり、社会派云々と改めて言うのも無粋な感はあるだろうが
それでも、精巧に作り出されたフィクションを娯楽のうちに納得してしまっては、あまりに無責任な消費者というモノだ
それに、ラグーンは「社会派漫画」という主張、実のところそれほど素っ頓狂な話でもないと思っている(ひょっとすると超超今更なことを言っているかも)
なにせロックの境遇が既にあからさまだ
彼は社会の歯車として死んだような日々を送ってきて、いざ有事の際にはゴミのように捨てられてしまう
そして波瀾万丈のラグーン商会に入ってからは、むしろロックは生き生きとして日々を送るようになる
これだけだって十分に「痛烈な皮肉」ってやつだが、あるいは「導入部に安直な文明批判を入れただけだろ?」なんて言われるかもしれない
まあ、導入だけってんなら確かにそうだが、ラグーンは徹頭徹尾この姿勢だ
言ってしまえば
「そっち(日本)よりこっち(ロアナプラ)のがイカしてんだろ?」
ってな感じの、ある意味で高潔なナルシズムで満ちている
少し話は逸れるが、しばしばラグーンについての批判で「台詞回しがクサい」なんてものがある
まあわからないでもないが、ある意味ではこれの裏返しなのかもしれない
ロアナプラに惚れ込んでしまうような連中(僕のような)には、羨望の対象である彼らの叫びはイカしたロックの雄叫びなわけだ
しかし全くあんなスラム街に魅力を感じないのなら、キャラクター達のセリフも空虚な空威張りに聞こえることだろう
どっちが良いとか悪いとかいう問題でもない
ただロアナプラの住人たちは「この街が好きだ」と当たり前のように言うような連中で、一方の僕は少しだって「この国が好きだ」なんて言えそうにない
ラグーンが「社会派漫画」だというのは、つまりそういうことだ
あのゴミ溜めのような街で生き生きとキャラクター達が活動する、それ自体が既に「痛烈な皮肉」というわけなのだ
「真逆」のロアナプラ
さて
スラム街だのゴミ溜めだのと散々に書いたが、ラグーンの「皮肉」はロアナプラという舞台だけにとどまらない
そこで生きるキャラクターたちもまたそれぞれが、現代社会に中指突き立てるような「痛烈な」ものを持っている
最も象徴的なのがラグーン商会のメンツの役回りだろう
基本的に戦闘はレヴィ一人の役目であり、もやし男であるロックやベニーはともかく、ムキムキマッチョのダッチすら前線に出ることはない
まあ
「それって作者の趣味では?」
と思わなくもないし、たぶんそれもあるんだろう
しかし、ゆっくりとラグーンのキャラクターたちを見回していけば、これが意図的なものだと解釈できる
ようするに
「逆」
なんだ
現代の日本社会と、南国の犯罪者ヘイヴンロアナプラ
この二つの世界はまったくもってことごとくが、鏡写しにしたように逆になっている
そして、この「逆」というのがラグーンという作品の裏のテーマなのだ(と思う)
話を戻そう
ラグーン商会では女が戦い、男が事務仕事をしている
これは、ぶっちゃけてしまえば現代の日本社会とはすっかり逆だ
日本ではまだまだ、男が戦い女は裏方というよくわからん「社会的要請」ってやつが幅を利かせている
ナンセンス極まりない話だが、ラグーン商会の経営者にコテコテの日本人が入ってきたとして(例えばロックの元上司たちのような)、彼らはきっとレヴィが戦うことについてとてもとても嫌な顔ってやつをするだろう
クルーザーでドンパチやってるレヴィをダッチとベニーがボートから援護している光景を見たら卒倒してしまうかもしれない
もちろんラグーンにおいてそんなことは起こらないんだが
こういった「逆」の設定はラグーン商会以外にも見られる
例えばヘンゼルとグレーテルの双子ちゃんなんかもそう
二人は子供であり、そして殺人鬼だ
単なる「印象的な設定」ってやつと流すこともできるが、しかしやっぱり意図的なものなんだということがこのエピソードだとわかりやすい
例の有名なセリフ
いいな~~~~~ベニーかっけえ~~~~~(突然興奮するオタク)
で
双子ちゃんは学校に通わなかったし、友達になるべき子供たちと殺し合ったし、幸せに暮らすことはなかった
子供は学校に通い、友だちを作り、幸せに暮らすべきだという「社会的要請」とは逆の環境で生まれ育ってしまった二人のエピソードなわけだ
もっともこれは、さっきのラグーン商会と違って逆になった先は悲劇だったけれど
しかしそれでこそ、この「逆」が貫かれているのだとも言える
ラグーンの世界は、ロアナプラの世界はとにかく徹底して現代日本の中で押し付けられる「社会的要請」を突っぱねる
その先が悲劇だろうが喜劇だろうが、突っぱねずにはいられない
そうした「逆の美学」とさえ言えるようなものが、ラグーンの魅力なのだろう
嫌気のさす社会、クソッタレなこの社会には絶対に迎合しない
ロックなんだなあ、ラグーンってのは
そもそも主人公がロックだし、なんにも隠しちゃいないんだけど
誇りはねえのか、お前の頭ン中にはよ!
で、そんな「逆の美学」が息づくラグーンという作品
それが最も強烈に描かれるのが上のセリフの出てくるエピソード
ラグーンを読んだ人、あるいはアニメを見た人ならわかるだろうけど一応
沈没した潜水艦のお宝を漁ろうっていう話
レヴィが死体から貴重品を漁ろうとしていたことで陸までぎすぎすし続けた末、ロックがレヴィにブチギレるあの一連のシーンでぶちまけられる名言だ
もう少し前文を引用
「てめえはなんだよ
アウトローの本場、荒くれ者の海賊様じゃないか
それがなんだ。口を開けば、カネかね、かねカネいいやがって
でっかい獲物が目当ての大悪党
なのに、てめえは死人からも物をかっぱぐ
誇りはねえのか、お前の頭ン中にはよ!」
といった感じ
このシーンはしばしば
「ロックが説教臭い」「モヤシのくせに偉そう」「レヴィが正論」「ロベルタまだ?」
とか言われるけど(僕もそう思っていた)、先の「逆の美学」ということを考えると、なるほどロックがブチギレるのも当然だという気になってくる
そもそもなんでロックがここまでブチ切れてるかと言えば、もちろん元はレヴィが金のために死体漁りとかしてたからなんだが、結局はレヴィが「社会的要請」って奴に与している面を見てしまったからである
たしかにレヴィの生い立ちは不幸だ
金のために振り回された半生ってやつだろう
だからレヴィが金に拘るのは、一見すると当然のように見える
理想論じゃ生きていけないってのも正論だ
しかしこの当然のように見えるってのが問題で、だってラグーンの世界は「逆」なんだから、そんな一般社会からの正論はお呼びじゃないわけだ
理想論こそ、真の正論なのだ
金が大事、結構
しかし金のために生きるなんてのはあらゆる人間がやっている
ロックだって金のために社畜として働いてきたわけだし
「おれがこんなにこだわっているのはな、そんな生き方に気づかせてくれた、その女が、オレを裏切った連中と同じ事をぬかしてやがる
オレにはそいつが我慢ならねえ」
そんなことは、まさにこのセリフに集約されている
「正常位じゃ誰もイけねえんだよ、ロック。」
なんて抜かしてたレヴィが、実のところラグーンの誰よりも正常位にこだわってたって話だ
まったくどんな事が嫌かと言って、自分や周囲とは違うと思って尊敬していた人が、根っこのところでは自分の大嫌いな連中とおんなじだったって思わされること嫌なものはないね
そりゃロックの言い分はむちゃくちゃではある
「お前は俺のヒーローなんだから、俺のヒーローらしくしてやがれ!」
ってなわけで、まあレヴィにその場で撃ち殺されても文句は言えないだろうが
しかしラグーンの世界で分があるのはロックの方だった
そしてこの話のオチ
「どっちの側」にいたいのかと問われたロックの答え
「オレが立っているところにいる。それ以外のどこでもない」
ここに「社会派漫画(まだ言ってる・・・)」ラグーンの答えもまたあるのだ
たしかにロアナプラの連中は高潔なナルシズムで生き生きと日々を生きる様を見せつけてくるが、双子ちゃんのように「逆」がいつだって正義と幸福をもたらすわけじゃない
お前が立ってるところにお前は立ってろ!
そういう話だ
いや~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ラグーン最高!!!!!!!!
僕も僕の立っているところにいます!!!!!!!!!
全部読むのがめんどくさい時のまとめ
逆張りオタクは『BLACK LAGOON』を読め
おわり
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