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読書記録:小川糸『たそがれビール』

今回読んでいたエッセイは小川糸『たそがれビール』(幻冬舎文庫)です。小川糸さんの小説は何冊か読んでいるけれど、エッセイは初めて手に取りました。この本は「日記エッセイシリーズ」とされている通り2012年の出来事が日記風に書かれていて、著者の日常を覗き見しているようで楽しく読みました。

特に毎年恒例らしいベルリンでの長期滞在中の過ごし方はただただ羨ましく、憧れました。あらゆる芸術鑑賞、街角での食事。著者にとっては大切なインプットの時間なのでしょうが、とても優雅で夢のような暮らしです。

著者はベルリンがお気に入りで、ドイツ人の気質や文化を絶賛しています。私自身はドイツ映画と相性が良いので、もしかするとドイツ人とは感性に通じるところがあるのかもしれない、と密かに思っています。ベルリン・フィルが毎年行っている野外コンサート『ヴァルトビューネ』は一生に1度は行ってみたい。NHKで必ず放送があるので、毎年楽しみにしています。夫にその素晴らしさを語り続けていて、彼に良さが伝わった暁にはドイツ旅行が実現するかもしれません。

しかし、ドイツ旅行には大きな懸念があるのです。ドイツ料理といえば思い浮かべるのは、大きなソーセージと、そこに添えられたじゃがいも料理、そしてたっぷりのザワークラウト。念の為説明すると、ザワークラウトとはキャベツを乳酸発酵させたもので、ドイツ料理には欠かせない存在のようです。

私は野菜全般が余り好きではなく、特にキャベツが苦手です。珍しいね、とよく言われますが、確かに自分以外にキャベツが苦手という人に会ったことがありません。えぐみや苦さを感じてしまい、皆さんのいう甘くて美味しいというのがわかりません。きっと遺伝子レベルの合わなさなんだと思います。

ただし、ドレッシングをびしゃびしゃにかけた千切りキャベツや、じっくりコトコト煮込まれたロールキャベツなど、キャベツの味が無くなれば食べることができます。我が家ではこれを『アイデンティティを無くしたキャベツ』と呼んでいます。

ビアホールなどで何度かザワークラウトを食べてみたことがあるのですが、見た目のクタクタさに反してしっかりとキャベツのアイデンティティが残っていて驚きました。酸っぱさのあとに押し寄せるキャベツ感。数口ならなんとか食べられるものの、それが毎食となると心が折れると思います。しかし残さず食べることを美徳としているし、食べないことでドイツの食文化を否定しているように受け取られても心外であるし。

ちなみに夫は『酸っぱいものが苦手』という理由でザワークラウトがお好きでない様子。詰んだ。

そんなわけでドイツに行ってみたい気持ちをいつもキャベツが萎えさせるのです。でっかいソーセージや、アイスバインという豚スネ肉の煮込みは大好きなのに。本場のザワークラウトはキャベツ感が弱めじゃ無いよなぁ。。むしろ強そう。。

しかし著者の滞在記に心は強く揺さぶられました。海外旅行の予定は当分ありませんが、ドイツへの憧れは常に頭の片隅に置いておくことになるでしょう。夏の長い夜にヴァルトビューネコンサートの余韻とアイスバインを肴にビールを飲む、その日を夢みて。

今回も読んでいただきありがとうございました!


ヘッダーとこちらは先日広島でいただいたお好み焼き。
このあと新幹線の大混乱に巻き込まれ、
帰宅まで10時間かかるとは知らずに楽しみましたとさ。

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