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第5回「本屋のこれからについて考えてみる」

今回のお題について

街の本屋さんがひとつ、またひとつ閉店する一方で、店主一人でスタートする個人書店はひとつ、またひとつと開店しているのは一体なぜなのか?
いち本好きからの視点と、本の売り手としての視点でちょっぴり真面目に雑談してみました!

昔ながらの本屋さんと新しい本屋さん

いと:今、本屋が基本的には減ってるけど、ゆうちゃんはどう思う?昔ながらの本屋は減ってて、独立系の個人書店は増えていると思うんだけど。
ゆう:わたしも現状はそうやなって思うんやけど、本好きな人は同じくそう思ってるけど、特に気にしていない人はただ本屋が減ってるっていう風にしか思ってないんちゃうかな。小さな個人書店が増えていることに気づいているのは本が好きな人だけで、そこに意識の差異がありそう。
いと:そうかもしれないね。
ゆう:新しい本屋ができていることに気づいてへんってことは、そもそも本屋に行かへんやん。そういう人が大半ってことは、最近生まれた小さな本屋さんが、この先10年とか続いていく感じはあんませんなって感覚的に思ってる。
いと:確かに、店主自身のライフスタイルの変化もあるだろうし、ずっと続く本屋は少ないかも。
ゆう:この先、個人書店がバンバン出てくるようなの状況が続くっていうわけでもないんちゃうかな、と。蔵と書をやっていると、「自分も本屋やりたい」と思ってるって話はたまに聞くけどね。
いと:私は10年前くらいに、新潟県内の商店街で個人書店を2年間やったけど、その頃はちょうど個人書店がちょっとずつ出始めてた時期で。当時、本屋特集の雑誌が出たり、本屋さん自身が書いた本が出版されるようになって、本屋ブームが来ているなって思ってたよ。
かといってここ10年で本を読む人の裾野が広がったかといったら、そういう印象もないんだよな。
ゆう:むしろもともと本好きだった人の「好き」がより強化された感じかな。ぜんぜん読まない人がめちゃくちゃ読むようになってるとかではないと思う。

本屋は本を買うだけのところではなくなっている?

ゆう:特に都会の方がそうやと思うねんけど、ひとり暮らしが昔より増えて、居場所を求めている人が増えてる気がするんよな。お気に入りの本屋さんで店員さんと喋りながら本を選びたい、みたいな。本を選ぶ時間とその空間にお金を払っとる感覚なんかな。
いと:本を買いたいというよりは、人と喋りたいのかも。
ゆう:行きつけの飲み屋さんみたいな感覚で小さな個人書店に行く人が増えたような気がする。
いと:そもそも、独身の期間が長かったりひとり暮らしの期間が長いと、誰かと話したいなって気持ちになるし、機械的にものを買うよりは、顔を出して色々喋って本の話を聞きながら選ぶのが楽しいっていうのはある。
ゆう:本屋やったら自分のタイミングで行けるし、行くと店員さんと喋れる絶妙な感じがいいんかもね。カフェとかと違って、絶対オーダーしなきゃいけないわけでもないし。そのゆるさがいいんかなって。
いと:お客さんはコミュニケーションを求めて来ていて、ただ本屋側としては売り上げに繋げられるものが本しかないっていうのは経営上キツイなって思うんだよね。
ゆう:うん、それあるよね。だから、本屋さんでいろんなイベントをやったりコーヒーを出したりするところが増えてるんやと思う。
いと:ブックカフェみたいなのが増えてきたのも、喋るだけで何も買わないお客さんを線引きしてるんだと思うんだよね。
ゆう:でもわたしは、そこを強制したくないんよな。まあ今、お金のことを気にしなくていい立場(地域おこし協力隊)で場所を開いてるからってのもあるんやけどね。お客さんに対して、自分が生きてくために「お金落としてよ」って思いたくない。
いと:お客さんも、何か買ってお金を落とさなきゃいけないなってプレッシャーを感じず、自然と払っちゃうような本屋を目指したいよね。

買おうと思ってなくても買っちゃう本屋で本と出会いたい

ゆう:名古屋にあった大好きな本屋さんは、買おうと思ってなくても本買っちゃうお店やってん。棚に並んでる本に惹きつけられて、ついつい買っちゃうの。帰省時は荷物増えるからあまり買わないようにって思ってるのにも関わらず。永遠の憧れよね。
いと:そういう本屋さんってすごい。でも、思わず買っちゃう屋さんでも潰れちゃうっていうのが衝撃。
今の本屋さんって色んなライバルがいるよね。ネットショッピングとか、他の娯楽とか。
ゆう:本好きは本を変わらず本屋で買っとるけど、ライト層のようなたまーに本屋に行って買ってたような層がほぼAmazonに流れた気がするんよね。「この本がほしいから本屋に見に行こう」というのが「この本がほしいからAmazonでポチろう」に変わったというか。
いと:私も普通にAmazon使うから、何とも言えないんだよな。読みたいと思った時に、タイムラグがあると嫌じゃん。もし割と好きな本屋があっても、注文して届くのが結構先になると、その間に熱が冷めちゃうっていうか、待てなくなる。
ゆう:そもそも、ベストなのは本屋に行って本に出会うことなんよ。ただ、田舎におると本屋が遠すぎて気づかぬうちに本屋に足を運ぶ頻度が減って、リアルで本に出会いにくくなってさ。SNSとかで本に出会ってまうから、そのままネットで買っちゃうんちゃう?本屋に行って目の前にあったら、その場で買うもん。
いと:それあるね。読みたいと思うキッカケがスマホになってる。
ゆう:なんだか悲しいなあ。

新刊とスタバのフラペチーノ問題

いと:本に使えるお金がそもそも減ってるんじゃないかなと思うんだよね。娯楽に使えるお金が減っている中で、それを本以外のカテゴリに取られてる。
ゆう:昔に比べて選択肢が増えたからな。本は買わないけど、アプリのゲームとかに課金してる人なんてたくさんおるよね。
いと:1ヶ月に一万円くらい課金してる人の話も聞いたことある。
そう思うと、本ってめっちゃコスパが良いと思うんだけどな。
ゆう:芥川賞取ってる田中慎也さんって作家さんがどこかで言ってたんやけど、「有名人の講演会とかに行ったら何万円もかかかるやん。でも、本は大抵一律の値段やし、なんならどれだけ著名な人の本も古本屋とかで100円で会ってたりするわけで、ものすごくコスパがいいものなんだよ」って。
いと:本当にそう。
ゆう:価値観、むずかしない?例えばスタバのフラペチーノに、高校生とかも普通に700円払うやん。でも、文庫本の700円は高いって言われたり。
いと:本好きからするとよく分からないんだよな。笑 むしろスタバのフラペチーノのほうが「めっちゃ高くない?」って思っちゃう。
ゆう:コーヒーとか食べ物やったらその場ですぐ楽しめちゃうけど、本は読むまで自分に合うか分からないし、買っても読まないかもっていうのがあるからかな。フラペチーノやと大抵ハズレないやん?って考えると、保守的になってるんかな?冒険したくないというか。
いと:それあると思う!失敗してもいいっていう余裕がなくなってるんじゃないか。間違いたくないし、安全圏だけにお金を使いたいみたいな。
ゆう:時間もちゃう?3時間もかけて読んだのに、「何やこの本!」ってなったらもう本を読みたくなくなる、みたいな。余裕があれば、しょうがないかな、次読もう!って思うけどさ。
それで失敗したくないから、みんな念入りに下調べして、例えばコスメを買う時もレビューを見漁って時間をかけて迷って選んだりするやん。本もレビューをたくさん見て、検討して買うかどうかを決める。そのレビューを読んでいる時間、ページを読めばいいのにね。笑 そこまでして選んだ本が微妙やと、すごい失望しちゃうんかな。
いと:何となく選ぶんじゃなくて、すごい情報収集して比較してから選ぶようになったと思う。
ゆう:そういう社会になったから、本は選ぶときのリスクが大きく感じるようになったんちゃう?そうなると、やっぱ安いし電子書籍でいっかってなる気持ちもわかる。
いと:安全を求めるから、新刊を買わないで少しでも安い中古で買うし、図書館で借りる。フラペチーノは美味しいって99%分かってるから、あの値段を払うし、過ごせる時間も確約されてる。
あとは、短い時間で楽しめるものが増えすぎたのかも。
ゆう:そうそう、YouTubeとかTik Tokとかね。
いと:考えなくても入ってくるじゃん。そういうものと本を比較すると、本はものすごくスローな媒体だよね。この前総合病院に行ったときに、結構たくさんの人が長時間待っていたんだけど、本を読んでる人は私くらいしかいなかった。本を読む人って本当に少ないんだなって思うよ。
ゆう:それな。わたしもこの前病院行ったとき、わたし以外は誰も本読んでへんかったし、都会で電車に乗ってもみんなスマホ見とる。そのあたりは田舎も都会も一緒やね。むしろ本を読んでる人がいると、仲間意識が芽生える。笑
いと:それくらい本を読まなくなっちゃったんだよな。
ゆう:そんな状況の中で個人の書店が流行ってるのは逆に面白い現象やなと思うし、もともと本好きの人がもっと深い本好きになりやすくなってる気がする。SNSを介してやったり、お店が居場所みたいになっとるからそこでリアルな本好きとも繋がれたり。
いと:本好きコミュニティのような感じになってる。お店で知り合いが増えて、買う人はより買うようになってて、それがどうにか個人書店を助けてるのかな。
あとは、自分も含めてみんな、閉店する段階になって「もっと行けばよかった」とか言うけど、「じゃあもっと行きなよ」って思う。行かないからその本屋さんは閉店するわけであって。でも、自分も一お客として頻繁に底の本屋にお金を落とせないってのもあるから、この本屋で買いたいっていうお店を増やしていきたいなと思う。
ゆう:そのあたりは意識の問題かなって思う。Amazonで楽をとるのか、お店で買って応援するのか。応援しても潰れるものは潰れるかもしれないけど、そこの本屋に関わっている、そこの本屋で買ったっていう気持ちとか思い出を大切にしたいよね。ゆるく、自分ができる範囲で関わっていきたいな。

さて、お互いどんな本を紹介しよう?

今回もしょーもない話をうけて、お互い頭を悩ませながら選んだ本の紹介POPがコチラ。
さて、どんな本のPOPなのかは、またまた次回の記事で答え合わせをします。
みなさんもぜひ、「もしかしてあの本では?」「ゆう or いとは、この本を紹介しそうだな」と、ぜひ想像して楽しんでみてください!

いと→ゆうへ この本を紹介
ゆう→いとへ この本を紹介

ゆう : まず最初に浮かんだのがヨシタケシンスケさんの「あるかしら書店」やってんけど、たぶんPOPのデザインに引きずられたところもあるし、すでにヨシタケさんの本は3回目に選んどったから違うな、と思って。なので、今回の予想は、「まだまだ知らない夢の本屋ガイド」!結果マニアックな本やけど、いとぽんなら読んだことあるかなと思って。

いと : なるほどね~。どっちも読んだことがあって、今回のテーマで思い浮かんでいたんだけど、今回は意外な本を選んでみたよ。多分、ゆうちゃんはまだ読んだことがないかなと思う本!ゆうちゃんが選んでくれたのは、POPからすると本を読む人が写っている写真集かな?今回はいい線いってる気がする。笑