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Kuquli 1st album『Kuquli』全曲レビュー

はじめに


こんにちわ。髙橋です。

この1年間、ほぼ毎日自室に閉じ籠り、演奏したり、歌を歌ったり、録音したり、MIXしたりしてきたのだが、2024年5月3日にようやくそれらが1つの作品としてサブスク上で解禁となった。
※以下リンクから飛べます
https://songwhip.com/kuquli/kuquli

名義は『Kuquli(ククリ)』で全11曲のフルアルバム。

自身が在籍するバンド「eleki」の『eat』(5曲収録のミニアルバム)のリリースが2014年なので、個人的に10年ぶりに音楽作品をリリースすることになる。

マスタリング以外は基本全て自分でやってきたのでこの際、ライナーノーツについても自身で全曲を解説してみようと思う。

長くなりそうだが、良ければ付き合って欲しい。


1.Lab

1曲目を飾る曲。実は収録曲の中で1番最後に書いた曲でもある。

全曲に於いて、特に「こういう曲を作ろう」と思って書き出すわけではないが、この曲の場合、ベースラインは『Jesus lizard』で、全体的なサウンドは『SOUNDGARDEN』の様なイメージがあったかも知れない。

イントロ、サビの右側のリードギターは最初もっとJesus lizard寄りの気持ち悪い不況和音だったが、詩が出来る上がるにつれて、プラスで89年公開の日本のカルト映画『鉄男』みたいなイメージなんかも湧いてきて鋼鉄感のあるリフに差し替えた。

因みにこれは勝手な自分のイメージで、実は制作している段階では『鉄男』を観たことがなかった(笑)。
※出来上がった後で映画を観てみたが思っていたよりスピード感がありインダストリアルだった

メロディーは3回書き直したが最終的には
サイケ時代突入前夜の『The Beatles』や中期の『Oasis』なんかが多用しているスケールやハーモニーを使って構築した。

なのでメロディーだけ抜き出すと実は結構ジョン・レノンだったりする。一度、メロディーだけジョン・レノンの声で脳内再生してみて欲しい。おっ、めっちゃジョン・レノンじゃんってなると思う。

lab(実験室)というのは言うまでもなく自分の部屋のことを指していて、自身の音楽を創造するにあたり大切な場所だ。

楽器も沢山あるが、本や漫画、アートもぎっしり壁一面に収納していて、それらを手に取るといつの間にか1日が過ぎてしまう。

好きなものしか置いてないからずっと遊んでいられる。自分の部屋ってそういうものなのかなと思うが普通はどうなんだろう。


2.Weekend

村上龍の『コインロッカーベイビーズ』の様な世界観がぼんやりとあって詩先で書いた曲。

比喩はサイコキシネス且つ退廃的な表現を目指した。

詩とメロディは早い段階で出来上がったが、A・Bメロのコード進行だけがしっくりこず3年ほど放置していた。

ギターのサウンドは当初、『My Bloody Valentine』の様に音を歪ませてアームを握ったままストロークするシューゲイザー的なアプローチだった。
※Bメロの右側のギタートラックはその時のテイクをそのまま残している。

その後、1番のAメロは海底に沈んでいくイメージ、2番のAメロはチリチリ小石が宙に浮かぶイメージで作っていった。

この辺は『コインロッカーベイビーズ』もそうだが大友克洋の『AKIRA』の影響も強い気がする。


全体の音は最終的に大好きな『LOSTAGE』の様なメランコリックでハードなロックに寄った感がある。


3.回転式

8年ほど前、Ryosuke Takahashi名義のテクノプロジェクトで作ったトラックをリアレンジして、そこに詩を乗せてできたポストパンクを意識した楽曲。

イントロ、アウトロのツインギターは元々シンセだったがギターに置き換えて弾いてみると『Rega』っぽいなと感じたのでいっそ本人に弾いてもらおうかなとも考えたが、もう録音してあるしなー、まあ良いかと思って止めた(笑)。

詩はもっと淡々とした方向に持っていこうと考えていたが思いの外、感情的になった。なったものは仕方がないのでそのままにしている。

この辺が所謂「ちょうど良い感じ」にならない所以なのかも。

サビは新しく書き直したが想定していたよりポップになった。

スタッカートなベースは『New Order』の様なシンセベースが意識の根底にあったかも知れない。

間奏はThe Bendの頃の『RADIOHEAD』っぽいと勝手に思っている。


4.祭典

週刊誌の不確かで偏った報道であったり、SNSで湧いてくる罵詈雑言について書いた曲。

気持ちが悪い人たちに対して道徳的な話をするより、その本人の前にデカい鏡を置いて、映った自身を客観的に見せれば良いと考えた。

出来上がってみると、方向性は僕が憧れ敬愛する愛媛のハードコアバンド『Zerohour』に近い表現になっている様に感じる。

サウンド自体は少し『The Most Secret Method』の影響もあるかも知れない。


「気持ち悪さ」や「邪悪さ」にフォーカスして曲を書いたことはこれまでなかったが、「集合体」をイメージさせるようなグロい歌詞とかも書けて割と楽しんで作れたことで最終的にはストレスは軽減された気もする(笑)。

この辺のグロい表現は色々なホラー作品から影響を受けていると思うが、台湾ホラー映画の傑作『呪詛』からの影響は間違いなくあると思う。


5.雫が落ちる

イントロのツインギターの絡みは自分が別でやっているバンド『eleki』の8年ぐらい前のスタジオセッションで出来ていた様に思う。

実際にlogicの中に、その頃のデモのプロジェクトが残っていたので、そこから再構築していった。

サビは新しく書き直した。メロディーはAメロのものを少し変化させ流用し、ハーモニーを足した。

バックは『Red House Painters』なんかからきているんだと思う。メロディーが全く違うので雰囲気もだいぶ異なるが。

出来上がってみたら敬愛する『nilescape』のメロディー、『bed』の影響も感じる気がする。

詩は一人称を使わず、心理描写と風景の切取り、比喩表現のみで構成した。

今作の中でも好きな楽曲の一つ。


6.惑星

『Bauhaus』の様な邪悪な香りのするポストパンクの楽曲をヘビーにダブワイズするイメージが最初にあって書き出した。

他にも『Massive Attack』の「Mezzanine」や『Primal Scream』の「Vanishing Point」といったトリップホップ、UKダブの名作も少し意識したかもしれない。

が、あくまでもロックバンドとしての演奏が前提という事をバランスとしては大切にした。

少しマニアックな話となるが、この曲は他の曲よりベースの低音は削らず、キックのロウと帯域が被っても良しとしている。底の方で何かが蠢いているイメージ。

曲が完成していく過程の中で、少し日本のビジュアル系のバンド群の香りも漂ってきて、あまり詳しくは無いが『BUCK-TICK』とかはこういう事をやっているバンドなのかな?とふと思った。
※詳しくないが知っている数曲は結構好きだった

歌の内容は、、そうだな、察してくだい(笑)


7.Addict

タイトルを直訳すると「中毒者」。

この曲のほとんどのボーカルパートは敢えてベロベロに酔った状態で録音した。

酒を飲みながら詩を書いて、深夜2時ぐらいから歌い出しておよそ1時間ぐらいで録り終えた気がする。

間奏の右のギターソロは酔っ払った感じを表現したくて敢えてキーからスケールアウトした和音で弾いた。
少しずつ我に帰り心が苦しくなる感じはコード進行で表現するようにした。

音は『Abra Moore』の『Four Leaf Clover』のアルペジオをループさせる様なイメージがあったかも知れない。

全体的には『Soccer Mommy』の様な怠さが感じられる様にとも考えていたかも。出来上がった曲の方がシンコペーションが強調されていて、線が強くよりロックなアレンジではあるが。

本作はこの辺ぐらいから音楽性自体は聴きやすくなるが徐々に重たい内容になっていく。
と言うか曲順考えたらそうなってしまった。


8.檻と残像

詞先で書いた曲の1つ。

全体的にあまり出来が良くないと感じていて、初期段階では本作からは外そうと考えていたが、昨年末に突如今のコード進行が浮かび結局残すことにした。

『My Bloody Valentine』の様に
アーミング+ストロークでギターの音程を揺らそうかとも考えたが、最終的にはどちらかと言う『Sigur Rós』の方に寄せていっているのかなと思う。

言葉は何日もかけて厳選して紡いで、結構何回も書き直した。
書いている時は、時間、宇宙、衛星、重力の様なワードがずっと頭の中にあった。

何について歌っているか最後まで明記しない事にして恋人、家族、または諦めた何かだとか、聴く人によって対象が変わる様にした。

最後のボーカルの高音は『U2』のアイルランド凱旋ライブの時の「Where The Streets Have No Name」をやる前のボノのシャウトをイメージして録音した。

なお、ボノはもっとエグい。


9.動かなくなるまで

元々は自身のバンド『eleki』用に2014年に書いた曲。

elekiは基本的に各メンバーが持ってきたネタをセッションで広げていくという作り方だったが、この曲は僕が1人でデモ段階で作り込んで持っていった曲で、ずっとlogicにその時のプロジェクトが残っていたのでそれをブラッシュアップしていった。

ずっとアルバムのタイトルにもしようとも考えていた(結局しなかったが)。

思えば出来てから今回世に出るまで実に10年もかかってしまった。

杉並区の『シャトレ明大前』という11階建てマンションの10階で1人暮らししていた頃、深夜1時頃にいつも聞こえてくる最終電車のガタンゴトンっていう音だったり、昼間は陽当たりが凄く良い部屋で、埃が陽に当たってキラキラしていたり、、

その全てが好きで、そういう何気ない風景を全部残したいなと思っていた。

当時の自分の部屋の前から見えた夜景



同時にelekiの活動が様々なしがらみの中ストップしだした時期でもあり、バンドこそ全てという価値観が揺らぎ出し、自分はこの先どうしたいんだろうと考えていたある夜、「動かなくなるまで」という言葉が浮かんでから1時間ぐらいで書き上げた。

青臭いがこれはこれで良いと思っている。


10.My Melancholy

サビの詩とメロディーが一緒に降りてきた際は、詩が赤裸々すぎて恥ずかしいと感じ書き直しを考えた。

が、これが自分の本当の想いではないのかと思い、そのままにした。

自分にとってはまあまあ勇気のいる決断だったが、自身のイメージをかっこ良く見せる為に何かをコントロールすることは最早不要だと思って。
結局のところそれは自分ではない。

サウンドは『The Smith』のジョニー・マーのキラキラしたギターだったり、『Aztec Camera』の様なネオアコースティックなイメージ。

あと、出来上がってみると全然違うのだが『XTC』がずっと頭の片隅にいた気がする。

詩は、いつも昼休み、飯も食わず品川のビルの窓から時折空を見上げながら書き上げていった。


11.Today

今作の最後を飾るのは
作中でも最も古い楽曲で作曲自体は2004年まで遡る。
なので20年前の曲ということになる。

当時、自分は大阪の淀川沿いの小さなアポートに住んでいたのだが、バンドをやりながら飯を食うために、難波にある『千日前河童ラーメン』というラーメン屋で深夜帯にバイトをしていた。

夕方になると御堂筋線の西中島駅から電車に乗り、難波駅で降りて店に向かい、早朝に仕事を終え始発の電車に揺られて西中島駅へ戻るという生活を繰り返していた。

帰る頃にはとにかくヘトヘトになっていて、電車の中ではいつもウトウトしていたのだが、西中島駅に着く直前の、真っ暗だった地下から地上に出る瞬間、一気に朝日が差し込んで車内が光に包まれる光景が好きで、その光景を歌にしておきたいと思って書いた曲だ。

当時の演奏は『スーパーカー』と『くるり』を足して2で割ったようなアレンジだった。

20年経っても自分で良い曲だなと思っていたこと、当時の録音に納得がいかなかったという理由で、アルバムに収録する・しないは一旦置いといて、とりあえず録音した。

特に何かを意識をしたわけでもないが『HARUHI』の『ひずみ』ぐらいシンプルに〜みたいに思っていた気がする。

しかし全曲に於いてそうだが、自分の場合作っている段階で、ぼんやりイメージした曲を都度がっつり聴いて確認するわけではないので、出来上がった後に聴いてみると全然違うってなったり、或いは逆に寄りすぎてしまったということがある。
今後は都度聴いて確認して距離感をコントロールした方が良いとも思う。

因みに公開する予定は無いが、ほぼ昔のアレンジのままのバージョンも録音してある。

3番のサビは、
「正しくても、間違っていたとしても俺たちは祝福を受けるべきだ」と思い、
後からそういう趣のコーラスを入れた。

最後は日常に戻り最初の独白で終わる構成にした。
昔からの友人たちへ向けた便りの様なものだ。

強がっている事は明白だが、それでも日々は続いていく。


あとがき


以上、アルバム全曲レビューでした。
長々と書いたが自分が影響を受けた音楽も含め、楽しんでもらえたらと思う。

多分、今作が気に入らないという人もいるとは思うが、今後も音楽は作り続けるつもりなので、そういう人はまた次作を期待してください。

少なくとも1回は聴いてくれて本当にありがとう。

日々の暮らしの中、負けて、折れてしまう事も多々あるが一生懸命生きて、分け合い、幸せになろう。

では。


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