欠けら

 フライングでこっちに先に掲載だけど、明日ノベプラさんでも掲載されるので見やすい方でお読みください。

※この物語はフィクションであり登場する人物名や団体、施設などは架空の世界での設定となります。※

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あらすじ
 生まれた時から喜怒哀楽といった感情を持ち合わせていない少年。陽太が両親に連れられて訪れたのは一つの施設だった。ついに親に見捨てられたのだと思った少年はこの施設での生活を受け入れる。そこで出会ったのは自分と同じ何かが欠けた個性豊かな少年少女達だった。

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登場人物紹介

名前:陽太(ようた)
一人称:僕
性別:男
髪色/髪型:黒色/短髪
瞳の色:黒
設定:この物語の主人公。生まれた時から喜怒哀楽の感情が欠けており、常に無表情。両親に連れてこられた施設での生活を強いられることとなり、ついに親から見捨てられたのだと思っている。

名前:涼(りょう)
一人称:仕事中は私/陽太達の前では俺
性別:男
髪色/髪型:焦げ茶色/肩までの髪を無造作に一本に縛っている
瞳の色:茶色
設定:陽太達を預かる施設の先生。世間からは問題のある障がい児と呼ばれている子供を預かり育てている。表向きは治療のための施設とされているが実際は子供の心と向き合い違っていることの大切さを教え成長を促すことを大切にしている。皆から慕われるとても優しくて暖かい先生。

名前:明香(はるか)
一人称:私
性別:女
髪色/髪型:茶色/ショートヘアー
瞳の色:茶色
設定:一見責任感の塊で真面目で聞き訳が良い問題のなさそうな女の子だが、それ以外が苦手で融通が利かず頭でっかちだと皆から嫌われていた少女。この施設では皆を束ねるリーダーを務めている。

名前:勲(つとむ)
一人称:おれ
性別:男
髪色/髪型:茶色/ミディーショート
瞳の色:茶色
設定:一見明るくムードメーカー的存在の少年だが、自己中心的で人の話を聞けない身勝手さが目立つ。この施設では場を盛り上げてくれるムードメーカーとして活躍している。

名前:佳恵(よしえ)
一人称:私
性別:女
髪色/髪型:黒色/背中までのショートヘアー
瞳の色:黒色
設定:いつもニコニコと笑う可愛らしい少女だが、笑顔以外知らないみたいに悲しい時も辛い時も兎に角優しく微笑む女の子。この施設ではその笑顔で皆を安心させている。

名前:陸斗(りくと)
一人称:ぼく
性別:男
髪色/髪型:黒色/短髪
瞳の色:黒色
設定:たった一日で記憶を失ってしまう少年。記憶障害があり昨日の事も忘れてしまう。この施設では常にノートと向き合って経験したことを書き記している大人しい少年。

名前:圭子(けいこ)
一人称:???
性別:女
髪色/髪型:黒色/ミディアムショート
瞳の色:黒色
設定:生まれた時から声が出ない少女。いつも手ぶり身振りで会話をする。この施設ではだれよりも優れた洞察力と観察力で皆とコミュニケーションをとっている。

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欠けら

 この日僕は両親に手をひかれながらある場所へと向かっていた。

いつもは着ない綺麗な礼服に身を包み、そしていつもなら中々連れて行ってもらえない遊園地で遊んで、ファミレスで大人のメニューだから普段は絶対に食べさせてもらえない大きなハンバーグ定食を初めて食べた日の夕方である。

「お待ちしておりました。私は陽太君のクラスを担当する涼です。さぁ、中へどうぞ」

「よろしくお願い致します」

「……」

大きな保育園にも学校にも見える建物。そこの前に立っている男性へとお母さんが頭を下げていた。僕はよく分からなかったけれど今日一日の両親の行動に全て納得がいってしまい一気に興奮した気持ちが覚めていく。

(あぁ、僕はついに両親に見捨てられたのだ)

この大きな建物は孤児院で、この男の人はそこの先生なのだろう。そうして両親は僕をここに置いて二度と迎えに来てはくれないのだ。そう納得した途端心に隙間風が吹いた。穴が開くってこういう事なのかもしれない。

「いいか、陽太。おりこうさんにして、先生の言う事をよく聞くんだぞ」

「うん」

「陽太。ご迷惑をかけないようにね」

「大丈夫」

男の人と話を終えた両親が僕にお別れの言葉をかける。それにすっかり気持ちが拗ねてしまっていた僕はぶっきらぼうな態度を意識しながら答えた。

「そでれは、私達はこれで」

「陽太君。ちゃんとお別れしなくて良かったのかい?」

立ち去っていく両親に何も告げずに僕はいじけてソファーの上でずっとうつむいていたのに、男の人がそう言ってくるので急にこみあげてきた思いに立ち上がり振り返るも、今更両親になんて言えばいいのか分からないから座り直す。

「いいんです。僕はここで生活することになるんですよね。それなのに顔を合わせてしまったら一緒に帰りたいって思ってしまうので」

「そうか……俺が今日から君と一緒に暮らすことになる涼だ。よろしくね。さて、早速お友達を紹介しよう。ついてきて」

先生の言葉に僕は黙って立ち上がり後について歩く。しばらく廊下を歩いて向かった先には教室みたいなところがあった。

「皆、今日から新しいお友達が入るからよろしくな」

「陽太です。よろしくお願いします」

先生が言うと部屋の中にいた数人の子が僕の顔を見てきた。緊張しながら自己紹介する。

「陽太君はじめまして。私はこのクラスのリーダーを務めています。明香です。あっちで勝手なことやって全然話を聞いていないのがこのクラスの問題児。勲君です」

「おれね。ヒコーキがごんってなって、山にぶっこんだら滝になると思うんだよ」

「どうして、山が滝になるの?」

「そんなの決まってるだろう。山に大きな穴が開く。そうしたら山にたまっていた水が全てそこに流れ込んで滝になる。な、凄い考えだろう」

「もう。またそんなくだらないこと言って。飛行機が突っ込むなんてことありえないわよ」

「相変わらず勲君の話はぶっ飛んでて面白いね」

明香ちゃんの背後で一人だけ騒いでいる男の子が勲君で、その子は何やら隣にいる子達と話をしていた。

「あなた達。話はあとにしてくれない。今は新しく入ったお友達に挨拶が先でしょ」

「あぁ、明香ちゃんごめんね。私は佳恵だよ」

「ぼくは陸斗だよ。こっちの子は喋れないんだ。この子は圭子ちゃん」

「……」

明香ちゃんの言葉にニコニコと可愛らしい笑顔の佳恵ちゃんと陸斗君が言うと紹介された圭子ちゃんが身振り手振りで僕に何かを伝えたがっていたけど、さっぱりわからない。

「よろしくお願いします」

とにかく今日から一緒に生活するのだから第一印象は大事だよね。そう思い綺麗にお辞儀して顔を上げるとすでに皆は僕から意識が離れていた。

「ここにいる子達は皆それぞれ違うけれど、それぞれ違うからこそ一緒に暮らせるのだよ。まぁ、そのうち君にも分かる日が来るさ」

困った顔で先生を見上げると彼がにこりと笑い話す。その言葉の意味を知る事になるのはもう少し先の事で、この時の僕はただ疑問を抱いただけである。

こうして両親に捨てられた僕はこの施設での生活を始めたのだけれど、一緒に暮らしている子達は皆個性的なんだ。

まずリーダーを務めている明香ちゃん。彼女は真面目で責任感の塊。施設での生活についてのルールに兎に角うるさい。この前なんて夜八時以降はテレビを見ちゃダメだって言われていたのについ気になってしまって時間以上見てしまったら顔を真っ赤にして怒ってきた。少しめんどくさい子である。

次に勲君。彼の話はいつも面白い。だけどこっちの話を全くと言っていいほど聞いてもらえないし、いつも自分勝手なことばかりしていて明香ちゃんに怒られてばかりいる。一方通行ってこういう人のことを言うのかな?

次は佳恵ちゃん。僕佳恵ちゃんは好きなんだ。可愛いしいつもニコニコ笑っているし。一緒にいると安心できる。だけど佳恵ちゃんが笑っていない所って見た事ないかもしれない。兎に角笑顔が素敵な女の子なんだ。

次は陸斗君。この子には本当に始めは驚かされた。一週間毎朝会うたびに自己紹介してくるんだもの。なんでも一日で記憶を忘れてしまうんだとか。それでノートに今日あったことを書き記しているんだって。それでもノートに書いたことを確認することもたまに忘れてしまうみたい。なれるまでに時間がかかっちゃったけれど、今ではすっかり日常となっているのでもう驚かないぞ。

最後は圭子ちゃんかな。あの子は生まれた時から喋れないんだって。だから身振り手振りでお話してくる。手話ってやつらしいけど僕手話なんてわからないからちょっと困っちゃったんだ。だけど僕が手話を知らないって分かるとジェスチャーに変えてくれた。それからはよくお話するようになったよ。

そうして僕がこの施設での生活に慣れはじめた頃。先生に声をかけられたんだ。

「どうだ。ここでの暮らしは」

「初めは戸惑うことだらけで、困ってしまいましたが今では皆との生活はとても楽しいです。だけど、嫌なこともあるし、いまだに困ってしまうこともある」

如何だと聞かれたので感想を述べると先生がにやりと笑い口を開く。

「陽太君は喜怒哀楽の感情を持っていない子だと両親から聞いていたが、そんなことはない。ちゃんと嫌だって事も困るって事も楽しいって事も分かっている。親御さんや周りがそれを理解してあげられていないだけなんだな」

「え?」

一体何の話だろうと驚く僕に先生は机の上へとパズルを出す。

「いいか、陽太君よく聞くんだ。この通りバラバラのピースでは何の意味も持たないが、一つ一つを繋げていくと一枚の絵になる」

「……」

先生は話しながらバラバラのピースをつなぎ合わせていく。

「君達もこのパズルと同じ欠けらなのだよ。それぞれがバラバラだと人との違いや欠けている部分が目立ってしまうかもしれない。だけど、その欠けら達が集まると一つの絵になる」

「おしゃっている意味がよく分かりません」

一生懸命説明してくれる話の意味が分からなかった僕は素直に言うと先生はにこりと笑った。

「明香ちゃんはその責任感の塊で皆をまとめてくれて、勲君は場を盛り上げてくれるムードメーカーだ。佳恵ちゃんはどんな時でもいつも笑顔で皆を安心させてくれて、陸斗君のおかげで一日一日の出来事を大切にしようと思える。圭子ちゃんは喋られない代わりにその観察力で何かあると身振り手振りで周りに教えてくれる。そして陽太君。君はいつも冷静でいられる。そうして君のおかげで皆は気付き考えることが出来るんだ」

先生の話は難しくてよく分からなかったけれどこのバラバラのピースが一つずつ集まって繋ぎ合わさっていく姿に僕達の姿が重なって見えてああそうかと思う。

「一つだとただの欠けらだが、こうして集まり繋ぎ合わされば一枚の絵となる。つまり、君達一人一人の違いが集まって世界は作られていくのだよ。そうして社会は出来ている。ここにいる皆もそして君の両親も俺もそれぞれ違う欠けらが出会い繋ぎ合わさって一つの世界を作り上げているのだよ。だから、君達は決して欠けているんじゃない。ダメな子なんかでもない。皆どこかが欠けているこのピースと同じ。どこかが欠けていたとしてもこうして集まればほら、綺麗な絵になる。な、分るだろう」

「うん」

今はまだ先生の話の全てを理解できたわけではないけれど、大きくなった時僕は全ての意味を知るのだろう。

いままで人との違いに苦しんで悩んできたこと。両親に見捨てられるのを恐れていた僕がここに来てその事を考えなくなったのはいつの頃だったかもう覚えていないが、今はこの施設での生活がとても楽しくて仕方がない。だってここにいる皆はどこか欠けている。それでも一人一人が集まれば一つの世界を作り生活していけるのだから。

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あとがき

 今回は本当に思いついたままを書き殴ったので支離滅裂な文章になり誠に恐縮です。とりあえず【皆どこか欠けている。だけどそれぞれが集まれば一つの絵のように社会を世界を作っているのだよ】的な事を書きたかったのですがそこまで書くまでの間のお話が思い浮かばずこのような支離滅裂な短編小説文になってしまいました。もっともっと腕を磨かなければと再認識させられた作者です。

基本長編か短編の小説を掲載予定です。連続小説の場合ほぼ毎日夜の更新となります。短編の場合は一日一話となります。 連続小説などは毎日投稿していきますが私事情でPC触れない日は更新停止する可能性ありますご了承ください。 基本は見る専門ですので気が向いたら投稿する感じですかね?