ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記~9
そうしてお客が注文した品を取りに来る当日を迎える。
「失礼……この前お願いした品を取りに来たのだが」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。アイリス」
「はい。……こちらがご依頼いただいた品になります」
不安そうな顔で入店する客にイクトが笑顔でアイリスを見やる。彼女も自信満々な笑顔で答えると棚の奥から服が入った籠を取り出す。
「百着丁度こちらの籠の中に入っております。是非お手に取ってご確認ください」
「あ、ああ。……これはこのきめの細やかな生地はメルクイーンか。そしてこの刺繍は不死鳥の羽の糸」
「お気に召したでしょうか?」
服を手に取った男性が驚いた顔で呟く。その様子を固唾を飲んで見守りながらアイリスは尋ねる。
「王国騎士団の威厳さを保ちながらも品がよくそして民衆から好かれそうな素朴な雰囲気もありとても気に入った。これならちょっと稽古しただけで破けたりもしなさそうだしな」
「よかった……」
硬い表情を崩しようやく笑顔になったお客の言葉に彼女は安堵して微笑む。
「正直君に依頼した時はこんな無理難題な依頼きっと途中で自信を無くしてやめてしまうのではないかと心配していた。だが、君は決して最後まであきらめずお客のためを思い依頼をこなそうと必死に頑張ってきた。マルセンやマーガレット様が君の店を勧めてくれた理由がようやく分かった気がする。君は職人として立派に仕事をこなしたんだ。ありがとう」
「こちらこそ、お客様のおかげで私自分じゃまだまだできないことだらけだって思っていたことができたんです。ですからお礼を言うべきなのは私の方なんです」
お礼を言われてアイリスは慌ててそう答え頭を下げる。
「……私は王国騎士団第一部隊隊長のジャスティンだ。また何かあったら君に依頼したいと思う。これからもよろしく頼む」
「はい、こちらこそ今後ともよろしくお願い致します」
ジャスティンの言葉にアイリスは新しいお客様と仲良くなれたような気がして嬉しくなり笑顔を浮かべた。
その後入団式でアイリスが作った服を着た新人達の晴れ姿は瞬く間に王国中の噂となり、ライゼン通りには凄く腕の良いお針子の少女がいると知れ渡ることとなる。
そして仕立て屋アイリスは人気が急上昇し我も我もと服を仕立ててもらいたいというお客が毎日訪れるようになった。
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