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Back to the late 90’s 第31話 CLUB ItoI『Freakin' Time』③

『Freakin' Time』をカテゴライズすると、ALL BLACK MUSICと言うコンセプトで開催していたが、実質はHIPHOPイベントと呼べる内容だった。KOMA君、TOSHIBO君をはじめ出演しているDJ達は、皆HIPHOPを中心に選曲していたからだ。


ただ上記のコンセプトをベースにしていたので、HIPHOPを軸として、その元ネタとなるSOULやJAZZ、DANCE CLASSICS、R&Bはもちろん、HOUSEやREGGAEを選曲してもOKだった。


この辺りは『Freakin' Time』のレジデントDJだったKOMA君とTOSHIBO君が、HIPHOPだけにとらわれず、それに関連する音楽全般に対して幅広い見識、理解があるが故に、できたと言えよう。お二人ともDJとしての技量は、高くて、プレイを間近で見させてもらう度に「敵わないなあ」と痛感させられた。

当時のCLUB ItoIのレギュラーイベント一覧とそのジャンル。木曜日を見るとTOSHIBO君、KOMA君、私、BEATBANGの順に名前がクレジットされ、ジャンルを表すアルファベットを見ると「G」と「RB」と表記されている事からカテゴライズすると「Garage」「R&B」と言うことになる。因みにCLUB ItoIの看板と言うべき土曜日はKILLASAN MOVEMENTによる『Body Grooving』で、これは後に月曜日レギュラー『Good Times』が土曜日レギュラーになり大盛況する。



2000年になったとは言え、まだまだ根本的に閉鎖的だった大阪のHIPHOP業界は、他のジャンルに対して寛容とは言い難く、とりわけDANCEHALL REGGAEをHIPHOPイベント内で選曲すると、あからさまに嫌がる反応を見せるHIPHOP DJやオーディエンスを度々見かけた。これは逆もありきで、REGGAEイベントでHIPHOPをプレイするのも、御法度だった。


当時大阪で、HIPHOPイベントにてREGGAEをかけて文句を言われなかったのは、KENSAWさんぐらい。またREGGAEイベントでHIPHOPやR&Bをかけても文句を言われなかったのはKILLASAN MOVEMENTの看板セレクターだったSOLDIERさんぐらいだ。ただこれらは、同業者やオーディエンスの内心をさぐると、KENSAWさんやSOLDIERさんの選曲に対して、物申せなかっただけだったと思う。

SOLDIERさん。週末土曜日のCLUB ItoIでレジデントをつとめられていた看板セレクター。CLUB ItoIをつくった紀平3兄弟(BOSS、KAZU、TOSHI)と共にKILLASAN CREWとして活動し、長年大阪のREGGAEシーンを牽引されてきた。基本的にDANCEHALL REGGAE中心の選曲だが、時よりR&BやHIPHOPなども選曲に取り入れていた。SOLDIERさんが、DANCEHALL REGGAEの合間にYASMIN『Wanna Dance』を選曲していたのを今でも覚えている。



東京では、HIPHOPイベントでREGGAEを選曲に取り入れてる事がトレンドになり、ごく普通になってきて、それに対してオーディエンス達も良いリアクションを見せてきていた。一例として『BLAST』誌1999年1月号にDJ HASEBEさんが渋谷HARLEMで選曲したプレイ・リストが掲載されているが、それを見ると、途中でDANCEHALL REGGAEがしっかり選曲されているのがわかる。

HASEBEさんが、1998年11月24日に渋谷『HARLEM』にて行った選曲リスト。
上記のリストを見ると、HIPHOPやR&Bに混じってBEENIE MAN『Romie』やRED RAT『Dwayne』、MR.VEGAS『Head High』と言った1997、1998年リリースのDANCEHALL REGGAEを選曲に取り入れているのがわかる。



話を『Freakin' Time』に出演していたDJ達の選曲に戻すと、KOMA君は、HIPHOPを中心にDANCE CLASSICSやHOUSE、それにHIPHOPの元ネタとなるSOULやJAZZなど、TOSHIBO君も基本的にKOMA君と似ていたが、KOMA君に比べHIPHOPの割合が多かった。BEATBANGは殆どHIPHOPのみで、それ以外は選曲しなかったが、当時の大阪HIPHOPシーンのDJ達の大半が、そうだった。DJ CHAN-UとDJ NAN-JYOもBEATBANGと同じだ。

CLUB ItoIのDJブーツ内で選盤中のBEATBANG(写真左)に、真ん中はまだDJを初めて間もないNAN-JYO(写真中央)、そしてBEATBANGの選曲に合わせホストMCをする筆者(写真右)。


そして、私の選曲は?と言えば、他の出演者と違い、ごく稀にHIPHOPを織り混ぜたりはしたが、大半はR&Bだった。そしてGRAND Cafe『Lesson』でKOMA君直伝で学んだDANCE CLASSICSやHIPHOPの元ネタとなるSOULやJAZZに、私がその頃から既に得意としていたDANCEHALL REGGAEを選曲した。


当時、他のHIPHOPイベントで、私ごときレベルのDJが、KENSAWさんやHASEBEさんのようにHIPHOPイベントでDANCEHALL REGGAEを選曲すれば、他の出演者やオーディエンスから、間違いなく総スカンを喰らい、なかには怒り出す人もいただろう。実際に他のHIPHOPの現場で、そう言う場面にも何度か遭遇したが、『Freakin' Time』においては、全く記憶に残ってないので、なかったと言えよう。

つづく.......

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