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360年続く老舗で育った母から叩き込まれた、商売を長続きさせるために大事な3つのこと

私の母は京都・伏見の造り酒屋に生まれました。創業は江戸時代。老舗の伝統を守るためと、祖母は相当に厳しく母を育てたそうです。

厳格な家で育った母は当然、私に対する躾もかなり厳しめでした。大学生になっても門限を煩く言われたり、たくさんのルールやしきたり…自由に過ごす同級生みては不満を募らせ、当時は逃げ出したくて仕方がありませんでした。

だから私は伝統というものにアレルギーがあり、伝統があるもの全般を毛嫌いしていました。母の実家について話せるようになったのもごく最近です。

ずっと毛嫌いしていた伝統を見直し出したのは、就職して働き始めるようになった頃。子供の時には理解できなかった母から叩きこまれた事が、仕事をしていく上でとても役立ったからです。特に起業をして自分で事業を始めてから、母の教えの真意がわかるようになりました。

そんな母の教えのなかで、商売を長く続けていく上で大事だと感じた3つの事について書きました。

1.見せびらかさない

一目でそれとわかるブランド物の服やバック。高級車。素敵な恋人などなど。SNSがそんな投稿で埋まってる人は要注意です。特に自分で事業をしている人、有名人などは気を付けないと自分の知らないうちに、怒りや恨みを集めてしまいます。

例えば…

お客様「うちが払ったお金で贅沢している…」
スタッフ「自分は一生懸命会社のために働いてるのに…」
友達「自分はいい暮らしができないのに…」

嫉妬とは美しいものではないかもしれませんが悪い人でなくてもついつい、人間はこんな風に考えてしまう生き物なのです。自分が逆の立場だったらどうか、立ち止まって考えてみなければいけません。

見せびらかすことによって満たされるにはあなたの虚栄心だけ。周りの人は不快に思ってあなたから距離を置いたり、鬱屈した感情を募らせて機会があれば意地悪してやろうと思う人もいるでしょう。

私もSNSをしていますし、ついつい「見てみて!」といいたくなる気持ちはわかります。仕事のためやブランディングなどもあるでしょう。でも、豪奢なものを人に見せるのは最小限にとどめるのが得策です。

もっと言うと、贅沢な暮らし自体出来るだけ避けるほうが良いです。長くやっていると、良い時も悪い時もあります。贅沢に慣れすぎると、悪い風向きの時に耐えられず破滅する人が多くいます。

お金持ちになって贅沢な暮らしをしたい!というのは多くの人が夢見ることです。でも長く成功し続けるためには、贅沢しすぎず質素に暮らすというのが大事だなと思います。

2.花も実も取らない

物事には対面(花)と実利(実)両面があります。基本的に相手に花持たせて、自分は実を取ること。もし自分が花をとるときは実を渡す。花も実もとると相手には恨みしか残りません。

昔の私は勝気だったこともあり、花も実も取ろうとしてしまって失敗した事が何度もありました。

例えば、どんな会社にも自分より年がずっと上なのに仕事が全然出来ない先輩っていますよね。今よりずっと若かりし日の私は、そんな人を理詰めでけちょんけちょんにして非常に怒られました。

「あなたの言ってることは正しいかもしれない。でも、自分より年齢がずっと下の女の子にプライドを傷けられて、あなたに協力しようと思う人がいると思う?」

当時の私に投げかけられた言葉です。

人間は理屈ではなく感情で動く生き物なので、プライドを傷つけられらたら、どんなに正しいことを言われてもあなたに協力しないでしょう。昔は納得できませんでしたが、大事なのは花(自分が正しいというプライド)ではなく、実(協力してもらうこと)大事だなとわかるようになってから、いらないプライドを捨てられ、相手に花を持たせることができるようになりました。

長く商売をしていくには、たくさんの人の協力が不可欠です。できるだけ、相手に花を持たせることを心がけましょう。

3.置かれた場所で咲く

生まれた家は変えれないし、与えられた能力に限界を感じたり、会社の決定にやるせない思いをしたり、天災や疫病の被害を受けたり…不条理なことが人生にはたくさんあり、自分がどんなに頑張っても変えられないこともたくさんあります。でも自分が置かれた環境を許せず、怒りに任せて自暴自棄になったり、不平不満ばかり言って何もしないのはやめましょう。

古い家では伝統を守っていくために、常に家を継ぐ長男が優先されます。母は次女だったので、不公平に感じる事が多々あったそうです。反面、長男であった叔父も家を継ぐ事が自動的に決められている人生に疑問やプレッシャーを感じていたと聞きました。

どんな場所にいても、どんな役割についても、その場所なりの苦しさや嬉しさがあります。長く商売をすると自分が望まないような環境に置かれることもたくさんあるでしょう。そんな時でも、自分に与えられた環境の中で常にベストをつくし続けることが大切です。

最後に

起業することや商売を始めることは大変です。ただ、始めた商売を長く続けることも同じくらい大変です。派手さから、古いものより新しいものに目が行きがちですが、人間というものの性質は大昔からあまり変わりません。だからこそ、長く生き残っているものは人間の本質を捉えているのではないでしょうか。

伝統を絶やさないためには、時代に適応していくことも同時に必要です。伝統とは大事なエッセンスを守りながら、時代によって少しずつ形を変え受け継いで行かれるもの。そんな風に思えるようになってからは、伝統を大事にしたいと感じるようになりました。

最後にそんな母が育った家のことを紹介させてください。京都・伏見の地酒を作っている北川本家「富翁」という蔵元です。

「富翁」とは儒教の基本書とされる中国・四書五経からのことば「富此翁」にちなんでつけられたそうです。富とは物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさのこと。「心の豊かな人は晩年になって幸せになる」という意味です。「お酒作りには人の輪が大切」と説いていて、職人さんや契約農家の方々とのご縁を大切にしています。

現在はコロナ禍で、日本酒の出荷量が減少しており、被害をうけた契約農家の方を助けようとクラウドファンディングを実施中です。

【山田錦のお米とお酒】創業360年京都・伏見で顔の見える酒造りと農家との取り組み

https://camp-fire.jp/projects/view/327953

もし興味を持っていただけたかたはぜひご支援の方よろしくお願い申し上げます。

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