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広告代理店マンからデジタルプロダクトファーム創業への道のり(後編-NYでの経験)

前編では、私が広告代理店でキャリアをスタートし、どのようにデジタルプロダクトのプロダクトマネージャーを経験したのか、そしてそこでどのようなことを感じたのか書いてきました。
そこでも書いた通り、その時点では起業するというビジョンがあったわけではなく、クライアントのデジタル化の課題にただ向き合っていただけでした。


NYでDXコンサルタントを経験する

NYに駐在する前、私は電通のデジタル&新規事業系の部署でコンサルタントとして、クライアントのCRM戦略やデジタルプロダクトを活用した新規事業などの支援を行っておりました。会社としては、「自社事業で培ったノウハウをクライアントに提供することでお金を稼ぎなさい」という指示だったのだと思います。

当時はまだ今ほどDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が流行していませんでしたが、当時からマーケテイングだけでなく様々な顧客体験の中心がスマートフォンになってくることを信じて、クライアントのプロジェクト支援を行っていました。

NYに駐在することになったのは、当時支援させていただいたクライアントのプロジェクトがNYのクライアントオフィスを中心に推進されることになったためで、私は当時電通が買収したMerkleというデジタルエージェンシーと一緒にプロジェクトを推進するコンサルタントとして仕事をすることになったためです。

米国における先進的なデジタルエージェンシーとの協業により、様々な刺激を受けたことはもちろんですが、いち生活者として多くのデジタルプロダクトに触れることができたことも大きな学びになったことは間違いありません。

実は、日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が、一般化したのが2017年頃だったと思いますが、実は同じ時期に米国ではそれほどバズワードにはなっていなかったように思われます。それは、米国でデジタルトランスフォーメーションが遅れていたということではなく、デジタルトランスフォーメーションが当然の経営戦略であったからだと理解しています。

それを示すような会話を米国のコンサルタントとしたことがあります。

私「どうして、アメリカではDXというワードがバズワードになっていないの?」
米国人コンサルタント「そもそもDXってデジタルを使った企業変革なんでしょ?」「そもそも、この時代にデジタルを使わない経営変革ってなに?」「そんな変革って可能なんだっけ?」
私「確かにそうだよね。経営変革にデジタルを活用しないって想像できないね」
米国人コンサルタント「そういうことだと思う。DXって当たり前に経営がやるべきことだと思うし、わざわざデジタルって言葉つける必要ないってことだよ」

このように、日本にいるときに課題だと感じていた、デジタルを活用した企業変革というものが、特別なものではなく当然にどの企業でも取り組むべきこととして認識されていることに衝撃を受けたのがこの頃でした。

サンフランシスコのスタートアップと出会う

また、そのプロジェクトの一部として、デジタルプロダクトを中心にした新規事業の推進を行ってきたのですが、そのプロジェクトのパートナーとして、当時サンフランシスコにHQがあってa16zをはじめとするVCから資金調達を行って急成長していたGigsterという会社と出会うことができました。

以前にも書きましたが、日本においても大手SIerをはじめとするシステム開発会社の顧客は企業の情報システム部門であることが多いため、業務システム、機関システムなどの経験を持った人が多くなる傾向がありました。米国においても日本と同様にSIerは多く存在するのですが、Gigsterのようにフロントエンドの開発に強みを持ち、新規事業などで重要となるデジタルプロダクトの開発が得意な企業が存在していました。

さらに、Gigsterがユニークだったのは、システム開発業界にある多重下請けにより、下請け会社に委託するのではなく、自分たちで優秀なフリーランスタレントをネットワーク化し、プロジェクトの応じてチームを組成してコンサルティングやソフトウェア開発をデリバリーしていたことでした。

彼らと出会って一緒に仕事をしていくうちに、日本にいるときにぼんやりと課題に思っていたことが解決できるのではないかという感覚を持つようになりました。

日本でもこんなチームが作れたら、電通の時に向き合っていた日本のクライアントのビジネスに変革をもたらせるかもしれない。

日本でもこんなチームが作れたら、日本の企業のデジタルプロダクトがステキになって、生活者としても便利になるかもしれない。

日本でも、フリーランスの人たちとこんな大きくて面白い仕事ができたら、働き方も大きく変わるかもしれない。

そんな期待を実現したいという気持ちでいっぱいになっておりました。

起業は突然に

「文分さんはいつ頃から起業したいと思っていたのですか?」と聞かれることがよくあるのですが、それに対しては「まったく計画はしていませんでした。この会社を立ち上げるときに、起業しようと思っただけです」と答えています。

別にずっと会社員をやっていたいとか明確な意思があったわけではないですが、いつか起業したいというような感覚は全く持っていませんでした。それでも、米国で体験した経験をもとに日本に帰る際に、起業という方法(いわゆる社内起業ですが)が最もやりたいこと、やるべきことを実現できるのではないかと思ったのがきっかけです。

もちろん、起業は思っただけでできることではないですし、GNUSの立ち上げにおいては、多くの方々の支援やご協力があって企業として立ち上がることができたと思っています。あまり詳しく書けないこともありますが、大企業の中で新規事業として立ち上げることの難しさはたくさんあります。

ただ、僕のように「もともと企業を目指していなかった人」でも、何かのきっかけで起業したいと思うようになったのであれば、それは大切なきっかけなので、大事にしていただければと思いますし、僕でご相談に乗れることがあれば支援させていただきたいと思っています。

ということで、ざっくりではありますが、GNUS立ち上げまでのお話でした。


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