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きょうもあしたも、うらがえし

むすこが洋服を裏返したまま、洗濯機に投げ込みます。

「洗濯物 裏返し」でググってみたら…

「旦那」…!

「イライラ、理由、縁起」
…え、縁起? なんだろう、ゲン担ぎ?占い? 「洗濯物を裏返しにしておくと、気になるあの人が声をかけてくれるかも★」みたいな。とにかく、洗濯物裏返しには、一定数の「イライラ」な人がいるみたいです。

むすこが自分で服を脱ぐようになってからというもの、ずっとずっと表にしてから洗濯機に入れてねと伝えてきました。そう教え始めたとき、幼い彼は楽に脱ぐ方法を選んだために裏返ってしまった靴下やシャツをかわいい手で不器用に表に戻し、得意そうな顔で洗濯機に投げ込んでいました。私は「えらいねぇ、よくできた。ぱちぱち」と彼を褒めちぎってね。かわいい。

それがどうしたことか、ここ数年の洗濯物はほとんどが裏返しです。
靴下、シャツ、制服のポロシャツ、普段の運動着に野球着まで。私は、はじめのうちは裏返った衣類を表に直して洗っていたものの、そのうち面倒でそのまま洗うようになり、そしてむすこに「脱いだ服の裏返しは戻してから洗濯機に」と、やんわり伝えてきました。でも、一向に直りません。洗濯担当の私は、最近は裏返しを直さずに洗濯し、直すさずに畳んで、むすこの部屋の前に置いておきます。

さぞかし着るときにやっかいに思っているだろうとほくそ笑んでみたものの、彼は全く気にしていません。着る時に裏返しの靴下を、Tシャツを、するりと表に戻して着用します。そうだった、彼は何事にもおそるべし高い順応性を持つ性質でした。幼児の頃から、不便なもの・面倒なもの(体感)に体や気持ちをすんなりなじませてしまう天才でした。

洗濯物裏返し表返し攻防は、むすこが自分ひとりで風呂に入るようになった小学校3年生頃から始まりました。脱衣所で私や夫からの小言を聞かなくて済むようになった彼は、のびのびと服を脱ぎ、ぽーんと洗濯機に放り込み、浴室で歌を機嫌よく歌をうたいます。洗いあがったパンツが裏返しでも気にも留めず、表に戻して気持ちよさそうに着用。あ、たまにパンツは裏返しのままはいています。かわいい。その一連の様子を夫に伝えたら、「キミと一緒じゃないか」と一笑に付されてしまいましたよ。

ほーか?

あるとき、「小さい頃は脱いだものは表に戻して洗濯機に入れていたじゃないの」とむすこに言ってみたんです。そうしたら、「そんなことしてたっけ?別にオレ、裏返しでもぜんっぜん気にしないしー」と、わが家の大飯喰らいの彼はこう宣いました。裏返しを直して洗濯機に入れていた記憶など、積み重なる日常でまるっと上書きされています。彼にとっては「洗濯物裏返し」など、生きていく上でなんの必要もないのです。洗濯物なんかより、どうかどうか、今日の晩ごはんが味濃いめの肉でありますように。

ほーか。

そして私は考えました。「習慣」ってなんだっけ? 洗濯物が裏返しだと、なんでダメなんだっけ? 私は一体なぜ、干すときに、畳むときに表に戻すべきと思っているんだっけ? そもそも裏返しの洗濯物を「不便」「不愉快」だと、そして「悪」だと決めつけているのはどんな理由があるんだっけ? 

わかりません。

ぐるぐるぐるぐる考えてむすめにふとこぼしたら、「お母さん、なんで裏返しにそんなにこだわっているの。わたしね、前から気になってたの。べつに着るのはむすこくんじゃん」と笑われてしまいました。

ぽろり(うろこ

衣類は「個人のもの」だってことに今さらながら気が付きました。衣類の持ち主がそう扱うなら、洗濯物なんて別に最後まで裏返しでかまいません。誰も、誰も困りません。親が洋服を着せてあげるとなると別ですけども。ほら、着せるときになって靴下とか裏返っていたら面倒ですから、洗濯のときに表に戻しておきたいですけども。

春には中学生になる人間の洋服。仕舞うのも、着用するのも本人です。裏返しで脱いだら、裏返しのままでいいんです。

将来、彼が家を出て私たち家族以外の人と同居を始めたとき、もし洗濯担当になった同居人が「裏返しは悪」の人だったらどうしましょう。そのせいで同居人との仲が険悪になったらどうしましょう。洋服は個人のものだよって親として仲介した方がいいでしょうか(やめれ)。


まあいいや。次世代にパス。


きょうもあしたも、うらがえし。




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