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栞の旅

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本を開くと青みがかったきれいな栞がぱらりと落ちた。夜景とも夕焼けともいえそうな微妙な色合いのちょっとエモーショナルな写真。しかしよく見ると、東京タワーに富士山、夜空にも夕焼けにも見える空の色、光るビル群。実は野暮な情報満載の写真に少し笑う。裏を返すと冒頭の文字が素っ気ない黒いゴシック体でさほど規則性なく並んでいた。
わたしの住む町、岡山にはない聞き慣れない書店名だった。エキュートなにやらの表記から、駅ナカもしくは駅ビルで展開している書店なのだろうと想像できる。

半時間ほど前、ほんとうについさっき、私は岡山の古書店でこの本を買った。

古書店の在庫確保のすべを私は知らないし、知ったところでどうしようもない。でも、ふいに手にした見慣れぬ書店の栞ひとつで、この本がどうやって岡山まできたのか勝手に想像してしまう。

東京、もしくは品川、横浜、新幹線の中で読む本を……と、この本を買い求めた人は、男性だろうか、それとも女性だろうか。西日本へ向かう新幹線へ乗り込んだ用事は一体何だったんだろうか。ビジネス、帰省、観光。あ、古書店で読了本を手放すシチュエーションを考えると、ビジネスや観光は不自然か。事情はどうあれ、おそらく「岡山に住まいがあり、帰ってきた」人だろう。

そして偶然にも、この本の中に「帰り道は旅のお釣りである」との言葉を見つける。

帰り道はどんな心持ちでしたか。旅の終わりを名残惜しく思いましたか。それとも、使い慣れたベッドを恋しく思いましたか。

岡山への帰り道、この本を選んだあなたは一体どんな人ですか。


◯参考文献
「少しぐらいの嘘は大目に  向田邦子の言葉」
向田邦子著  碓井広義編 

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