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小説 | わかりにくい彼女

焼き肉を一緒に食べに行った帰りにキスされた。

外見、性格、タイプど真ん中の、小動物のような彼女。
いっつもニコニコ楽しそう。
僕のこと好きっていうくせに、付き合いたくはないらしい。

僕の友達の前で、僕への好意を隠さない。どれだけイケメンの友達に会っても、興味ないみたい。愛想はいいけど、だれといても僕が一番、そんな気持ちが伝わってくる。元カノたちは、隠れて連絡先交換してたりしたのに。

不意にキスしてくるくせに、手は繋がない。


僕はわからなくなった。
でも一緒にいるのは楽しい。ずっとずっと一緒にいた。


最近仕事が楽しい。
自分がやってることが、社会を、世界を変えてるのを実感する。
今度大きなプロジェクトを任されることになった。
頑張りたい。

彼女と毎日会うことはできなくなった。

ある時


「付き合ってください」


そう言われた。


もちろん彼女にじゃない。
一緒にプロジェクトをやってた後輩の女の子。
あ、そっか、こうやって付き合うんだっけ?わかりやすいな。
そんなふうに思った。長いこと忘れちゃってた。

OKの返事をして、付き合うことになった。



彼女に「彼女ができた」って伝えた。
いつもニコニコしている彼女の顔が少しだけ曇ったような気がしたけど、「よかったね」って笑顔で言ってくれた。僕らの関係は何も変わらないんだろうなって思ってた。


その日を最後に彼女に会うことはなくなった。
彼女はいなくなってしまった。
家にも行ってみたけど、引っ越ししてた。
彼女の友達に聞いても連絡が取れない。


彼女は本当に「いなくなった」。

人って消えれるんだ。



焼肉の後のキス。

「どうして僕にキスしたの?」

って聞いたことがある。

「したかったからかなぁ?わかんない」

そんな答えをもらった。



今、そんなことを思い出して僕は泣いている。
なんで泣いてるのかはわからない。
わからないけど、この涙は圧倒的に僕の中で正しい。
それだけはわかる。
わかってしまったんだ。











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