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『なんでも言い合える友人』との本選び〜“プロ中のプロ”の翻訳(Kさんの視点)〜



『なんでも言い合える友人』


Kさんは、私に
そんな風に
話して下さいました。


Kさんは73歳の
男性です。


「認知症の予防に
頭に刺激を与えたい」
お互いにメールで
近況報告をするのが、
日課になっているようです。


Kさんは
事故で頭を打ったことが原因で
脳の機能に大きな影響をうけています。
記憶が抜け落ちる症状でした。


語学学習も、
認知症予防に
はじめました。
英語の教師の経験もあり
好きな英語を学びます。


早朝の習慣はワールドニュースを
iPadで聞くこと。
3年かけてニュースの内容は
ほぼ聴き取れるように
なったようです。


語学学習の
Kさんの目標は、
読む、書く、聞く、話す
4つができる事です。

今回は
“読む”事に挑戦しておられました。


「友人にね、
イシグロカズオさんの本を
すすめられてね、
読んでみることにしたんです。」


「今まで、新聞や
研究論文は読む経験がありますけれど、
小説は…
経験がなくってね。」


「小説は、独特でしょう?
論文と違って分かりにくいかなと
思っているんです。」


「というのはね、
論文は、
理路整然とした文体だから
読みやすい、理解しやすい
んですよ。」

「文法も大体は、決まった形で
書かれていることが多いので、
多少単語の意味が分からなくても
前後の繋がりで
想像できる」

「自分も(論文を書いた)
経験もあるから
慣れているし…」


(相手に分かってもらうために
書くのが、論文の形態。
文体は、分かりやすく構成されて
いないと意味がない💦のです。)

「けれどね、小説はね…
人の気持ち、心の細やかな動き、
感情などの表現が、
たくさん出てくるでしょう?」


「僕の今の英語力で
果たして
理解できるのかな…」

「日本語の小説は良く読みますが、
英語ではお目にかかる機会が
なかったから…

自信がないんですね…」

「興味はあったけれど
難し過ぎるとね…
読み進めることが
できないから。」

「本を選びます。
ノーベル賞💦
どんなに難解な表現が
されているのだろう?
と気になって
調べてみたらね、

日本語でも
読みやすいと
評判が良かったんですよ😊」

「人の感情を表現した文体は
初めて(の挑戦)です。」

◇◇◇◇◇


「友人と読み合わせを
今度ね、してみようかと
いう話しになっているんです。」

「ご存知と思いますが
カズオ・イシグロ氏
ノーベル賞受賞した方の
作品です」


「翻訳した土屋さんが、
また凄い人みたいでね。
細やかな心情を日本人にぴったり
くる日本語で訳してくれている
らしいんですよ。」

「土屋政雄さんは、
イシグロさんの本をいくつか
訳されていますが、
“プロ中のプロ”みたいですね」


◇◇◇◇◇

英国でのお話しです。
主人公のスティーブンスは“執事”さん
仕事仲間のミス・ケントン(ベン夫人)“女中頭”
が登場し、お話しが展開します。


なんだかKさんの
生き生きした表情を
みながら
お話しを聞いているうちに
私も読んでみたくなり
手にとった一冊でした。

読んで見ると、
情景が目に浮かぶように
感じられ、
あっという間に
読み進んでいます😳



スティーブンスと
ミス・ケントンの
男女間でのやりとりは
興味深いものでした。


私からみた主人公スティーブンスの
イメージは、
プロ中のプロの“執事さん”
のお仕事ぶり。


Kさんに言わせれば
ただの神経症的な男でしょう…と
感じられたようですが😅(苦笑)


(人それぞれの
感性の違いがあって
色んな感じ方に☺️
ほっとさせてもらいました。)


スティーブンスの
細やかな配慮の仕事ぶりは
共感できる面がありました。
少し前の自分なら
仕事と人柄を分けることなく
単に尊敬に値する人物像として
目標にしたかも
しれません。


今の自分は違いました。
“プロ中のプロ”
仕事と人柄を分けて
捉えていることに気づきました。
こういう(仕事に生きる)生き方も
ある…スティーブンス(主人公)
の個人の生き方を
尊重する見方でした。


そして、一番心に残った感情は、
一言では今の私には説明できない
切ない感覚です。

なかなか理解できない
男性目線が新しく
興味深いものでした。


2021/6/26:日記



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