マガジンのカバー画像

消雲堂綺談

276
私は怪談奇談が好きで、身近な怪異を稚拙な文章にまとめております。
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

子母澤寛「幕末奇談」の怪談

子母澤寛「幕末奇談」の怪談

僕は子母澤寛の新撰組三部作(中公文庫、新人物文庫)が好きで、自分が趣味で新撰組に関する文章を書くときには新人物文庫の「新選組日誌(菊池明・伊東成郎・山村竜也 編)」や、大石学さんの「新選組」(中公新書)などとともに参考にしています。子母澤さんには“幕末研究”と“露宿洞雑筆”を合わせた「幕末奇談」(文春文庫 ISBN-4-16-746404-7)という本もあり、それには小豆はかりやのっぺらぼうなどの

もっとみる
消雲堂綺談「恐怖」

消雲堂綺談「恐怖」

「ばりよん」または「おばりよん」外山暦郎「越後三条南郷談」より

昔、越後地方に「ばりよん」という妖怪が時折現れて人を恐怖させた。夜の道を歩く者の背中にいきなり飛び乗って「おばりよん、おばりよん」(オンブしてくれ)と言いながら頭を囓るのだ。そのために夜間に歩く者は金鉢を被って、ばりよんを防いだという。ばりよんは他の地方にも名を変えて現れる。ばりよんとは、所謂「おんぶお化け」のことだ。「子泣きじじい

もっとみる
消雲堂綺談「隧道」

消雲堂綺談「隧道」

もう30年以上前になる。当時、同棲していたU子から不思議な話を聞いた。

その年の夏、U子は岩手県にある実家に里帰りし、高校の同窓会に参加した。同窓会には彼女が高校時代に交際していた及川嘉男も参加する予定だったが、会場には彼の姿が見えなかった。

「嘉男君はどうしたの?」U子が親友のS子に聞くと、好奇心が動いたのか全員がこちらを見て何か言いたそうな顔をした。U子は嘉男に何かあったのだろうと感じた。

もっとみる