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継承語としての日本語教育をどうすればよいのかと悩む中国在住日本語教師のぼやき

最近、日本語を学ぶ人の傾向が変化しています。

以前は高校生や大学生がほとんどでした。学習者というか、学生のほとんどが日本への留学を目指していました。

しかし、最近では中国の大学受験のために日本語を学ぶ子どもとか、趣味で日本語を学ばせたい親が増えています。

そして、それに次ぐグループとして、日本にルーツを持つ児童に日本語を学ばせたい親が増えています。

例えば、親の片方が日本人で、もう片方が中国人の場合、家庭でも社会でも中国語が最初に選ばれる言語になります。しかし、親から受け継いだ言語は「日本語」とも言えます。

そういうメインで使ってはないけど、親から受け継いだ言語を継承語といいます。

継承語の立場が弱い場合、子どもは継承語を学ぶ意欲がなくなります。

例えば、日常生活において中国語でコミュニケーションを取ることに面倒なことはない場合、日本語を使うことはありません。ですから子どもからすると日本語はただの親の母語であり、学ぶ理由がわからないのです。

でも、親としては日本語も大事にしてもらいたいと思ってます。それで、なんとかして子どもにも日本語を学んで欲しいと思っています。そして、日本語教師の力を借りたり、または各地にある日本人(日本語)補習校に通わせたりします。

わたしも日本語教師として、日本語の背景をもつ幼児や児童に日本語を教えています。継承語としての日本語の背景をもつ子どもたちに日本語を教えるのは難しくないだろうと思っていたのですが、外国語として日本語を教えるより、はるかに難しいことに気づき悩んでいます。

どうして継承語として日本語を持つ子どもに教えるのが難しいのか?

子どもの意欲は非常に低い

すでに説明したとおりですが、子どもたちは日本語を学ぶ理由が理解できません。だって、授業以外で日本語を使う機会なんてありません。アニメを見るときだって中国語字幕がありますので問題ありません。

ですから、日本語でコミュニケーションを取る練習にモチベーションは保てません。またグループレッスンの場合、それぞれの児童の能力に差があることがはっきりします。

休憩時間は中国語で遊んでいるのに、授業になると急に日本語でコミュニケーションをとることが求められます。誰だって恥ずかしい思いはしたくないです。そんなわけでテンションを保つのが難しいのでしょう。

教員の側も手探り状態

わたしは中国語を話すことができます。でも日本人特有のアクセントの問題がありますし、はっきりいって6歳の子どもの中国語の方が、正確で複雑です。ですから、中国語で指導することは得策とは思えません。

大人であれば、わからないことを前提に学ぶことになりますし、外国語としての日本語を学ぶので,授業で提供される内容が聞き取れなくても、学ぼうとします。しかし子どもたちは、そんなことをしません。わからなければ、空想の世界に飛んでいったりします。

ですから、どうやって日本語能力を伸ばすか試行錯誤の毎日です。

親の中国語能力が高い

さらに、親の中国語能力が高いので、家庭で日本語を使わないという側面もあります。これは良いことですが、日本語学習においてはデメリットもあります。現地の学校の宿題や勉強を見てあげることもできますので、日本語を教えるための時間が減るという現状もあります。

◇◇◇

これまで、数年の間、継承語教育について悩んできました。どうやらこの問題はすぐには解決できないですし、児童の置かれている状況も多種多様で一概に言えないのが現状です。

ただ、「外国語としての日本語教育」と「国語としての日本語教育」そして「継承語としての日本語教育」に重なる部分も結構あることにも気がついています。

助詞の使い方や、動詞の活用など、外国語として教える方法を使いながら、子どもたちに正しい日本語を教え、家庭内でのコミュニケーションにそれをフィードバックするというのは、良い方法に思えます。

そういったことを試しつつ、子どもたちの日本語能力を向上させていきたいなと思ってます。

今週もnoteを読んでくださりありがとうございました。また来週!

ぜひぜひ、サポートをお願いします。現在日本円での収入がなく、いただいたものは日本語教材や資料の購入にあてます。本当にありがとうございます。