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毎日連載する小説「青のかなた」 第31回

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「この子はエリライ。メスです。反対側はオスのプールで、ケントとアレクがいます。それぞれ肌の色が微妙に違ったり、体に傷がついたりしているので、そういった特徴で個体を見分けています。ほら、エリライは他の子よりも肌がピンク色がかってる」
「本当だ……。かわいい」
「イルカたちは全員一緒に生活しているというわけではなく、海の中にネットで仕切りを作って居住スペースを分けています。僕たちスタッフは『プール』と呼んでいて、オスはオスだけのプール、メスはメスのプールで過ごします。子育てをしているお母さんと赤ちゃんは、他の個体とは別のプールです。赤ちゃんがいじめられることもあるので。――光さん、こちらに来て」

 レイはドルフィン・ベイの奥へ光を連れて行った。

「ここは子育て用のプール。赤ちゃんとお母さんはもちろん、サポートのために子育て経験のあるメスも一緒に入れることがあります」

 一頭のイルカが近寄ってきた。他のイルカよりも体の色が明るく、きれいなライトグレーをしている。黒目がちな丸い瞳がやさしげな印象だった。

「この子はメイ。メスです」

 レイが言う。彼がフロートに膝をついたので、光もそれに倣う。そうするとメイとの距離がより近くなった。

「メイ。こんにちは」

 メイの横に黒い影が見えたかと思うと、また別のイルカが勢いよく水面に顔を出した。メイよりもほんの少しだけ小さいイルカだ。まんまるな瞳で光を見上げている。

「この子はルー。メイの息子で、生後一年半を過ぎたところです」レイが言う。
「ルー……」
「RUR(ルー)は、ホワイトロックリリー……パラオの国花です。白い花びらをつける、かわいらしい花ですよ」

 おっとりしているメイとは違い、ルーは首や瞳をきょろきょろ動かしながら光を見つめてくる。興味津々といった様子だ。その落ち着きのなさがとても愛らしかった。まるで「遊ぶ? 遊ぶ?」と言っているみたいだ。

「かわいい……」
「でしょう」レイがどこか誇らしげに言った。
「光さん、イルカに触れたことはありますか?」
「いえ。水族館では、いつもガラス越しに眺めるだけで」
「そう。なら触ってみましょうか」

 レイはそう言うなり、体勢を変えてフロートの上に腹ばいになった。両肘をつき、胸から上だけを起こす。寝転がりながら海を眺めるような感じだ。

「光さんも同じようにして」

 そう彼が言うので、光も腹ばいになってみる。体勢が低くなったぶんメイとの距離が近くなり、彼女の瞳の形までしっかりと見える。黒々としていると思っていたイルカの目は、間近で見ると紫のような灰色のようなふしぎな色だった。

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