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移住とは (愛川町日記 2015年12月30日より転載)

移住。

街づくりのひとつのキーワードになりつつある。

地域によっては「定住」を促し、地域によっては「移住」を促している。

つまり、「出る」と「入る」。簡単に言えばそうなる。

愛川町は後者であり、移住者の受け入れに力を入れている。

一昔前なら、といってももはや歴史の域なのかもしれないが、人は生まれた場所に戻り一生を全うするものであり、長く親しんだ土地から離れる事は一大決心を強いていた。

しかし、現在は生活の多様化もあり「セカンドライフ」「田舎暮らし」の言葉があるように、「移住」というのが比較的選択しやすい時勢となって来ている。

愛川町は、そういう時勢に乗り移住者を受け入れる為「愛がある動画」などプロモーションに力を入れている。

しかし、「愛」と不確かなものだけで人々の流れをつくりだすのは少々難しいだろう。


CCRC。

という言葉がある。

今、日本が取り入れようとする言葉である。(日本版CCRC

「Continuing Care Retirement Community」の略で

簡単に訳すれば「継続介護付きリタイアメント・コミュニティ」となる。

主にアメリカで発達した高齢者居住コミュニティのことだ。

言葉が少し難解だ。

「特別養護老人ホームなどの既存の福祉施設に住む」、

ということではなく

「健康なうちから地方に移住して作る新しいコミュニティー」のことだ。

他の地域に移住し、地域の活動に参加し、簡単な仕事をし、年齢を重ねて、介護が必要になった場合には、医療機関と連携し、継続的にケアを受けられるようにする。

首都圏・大都市圏の高齢者増加により地方を整備し、移住を促す。

政府が推し進める「移住」のひとつの形である。


愛川町にはこのCCRCを移住者の起爆剤として呼応できるのだろうか?

移住者は高齢者である。

確かに自然が多い点では評価されるだろうが、交通の便が悪く、医療機関も厚木や相模原に及ばない愛川町では高齢者には住みにくい土地となるかもしれない。

環境の整備や社会保障の増大など町にも大きな出費を必要とする。

それに愛川町は「移住」により、「人口」を増やしたと同時に「将来の地域の担い手」を増やしたいのだ。

「地域の活性化活動に参加を望む事」と「高齢者として第二の人生を生きる事」では、熱量も違い、ベクトルも違う。


今の愛川町で左右を見れば、圧倒的に足りないのは「若者」である。

町の未来を託し、町を盛り上げる若者である。

NHKの調べによれば、移住する人々の世代として20代~40代が8割を占めている。

では、「若者」の移住を促す「キーワード」とは?


まずは「雇用」である。


大企業を誘致し、施設を作り「雇用」を生み出す。

交通網を整備し、企業地帯への輸送を便利にする。


そんな悠長な事はできないだろう。

当然それは「第三の矢」として時間をかけて行う事である。

ならば「農業」はどうだろうか?

愛川町の農業移住者は少しずつであるが増えてきているそうだ。

全国的に見ても若者の「農業移住者」は多い。町田市では希望者が多く斡旋する農地が足りない事態も起きている。

農業移住者を定住させるべく自治体も様々な支援を行っている。

例えば、鹿児島県枕崎市は「新規就農者の夫婦に二年間毎月20万円支給」。鳥取県日南町は「農業を始めるのに800万円支給」、島根県飯南町は「兼業農家に毎月12万支給」など。様々な条件があり額面通りの支給ではないのかもしれないが、今見直されつつある「農業移住」に対し移住に頼る自治会はあの手この手を展開している。

愛川町でも新規就農者の家賃を支援する「愛川町新規就農者支援家賃補助金」を行っている。

ただその支援だけで「農業移住者」を呼び込む笛の音となるのだろうか?

「移住者」のターゲットを絞り、そこに効率良い支援と周知をしていく事。

やみくもに「広く浅く」の中途半端な「移住促進事業」ならば、他の自治体のきらびやかな「文言」に埋没してしまう。




移住体験も良いだろう。

移住しての「プラス」だけではなく「マイナス」も知ってもらう。

その上で「移住」から「定住」にシフトしていく。

地域の未来を託す若者の為に「表現の場」「活躍の場」を創る。

先出の農業移住者が「生産したものを売る場所」や「意見を交換する場」など

移住の悩み相談が「町の窓口」だけではなく、若者たちが作る「イベント」「団体」。

自治会の仕組みも簡素化し分かりやすく参加しやすいシステムにする。

さまざまな移住者が町に溶け込める場所と手段を作る。

孤立させず町に思い入れを持ってもらう。

これらの事は移住者が来てから作るのではなく、今のうちに準備しておかなくてはならない。




「移住」。

それはあくまでも「入口」でしかない。

そこから「定住」し、家族をつくってもらわなくてはならない。

新たな「移住者」を呼ぶ、体験者になってもらわなくてはならない。

「移住」だけではなく、その後の展開まで考えていく必要はある。


そして、なによりも今愛川町に住む人々全員が「愛川町のPR大使」という意識を持つことだ。

「愛川町は何もない所」

そんなマイナスな第一声が飛び出すようでは、移住希望者も愛川町に魅力はわかない。

そして定住後も移住者とともにコミュニティーを形成していく。



結局は。

今定住している私たちの「地域<愛>」が移住者を動かすのかもしれない。


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