見出し画像

【取次制度黙示録 ②-2】雑誌はもう売れないの?

前話回想

取次協会があまりに雑誌が売れないので、現状の出版流通を維持するのに299億円の追加負担が必要と言い出した。これを各出版社で分担負担しろという。でも費用負担しても肝心の売上が増える訳でもない。
そもそも昭和の人口増ボーナスの時に作って、現在では非効率的になった出版流通を守る意義は何処にあるの?新聞も雑誌も過去の成功時のスタイルに囚われすぎじゃないの?
紙の新聞同様に、雑誌もなくなるの?

売れてる雑誌ってあるの?

雑誌の定義について取次協会の資料によると
『定期的で⼤量発⾏が必要な出版物=雑誌』となるようだ。
でも現在の出版業界では雑誌を大量発行しても、その半分以上が返品=古紙の素となる。即ち紙の雑誌を刊行し取次流通に乗せることは、古紙の素を作る仕事に等しい状態なんだ。

上記はあくまで『取次物流』経由の雑誌の話だ。
そう現在のまっとうな雑誌は取次を経由せずに読者に届けれれるスタイルのものが多い。
例えば近年各種メディアによく取り上げられるのは『ハルメク』だ。

シニア女性向けに特化し、読者のコミュニティ作りにも大成功。ライフスタイル提案会員制Webサービスから通販等の物販ビジネスも展開。まさに王道の雑誌ビジネスに成功している。
雑誌自体は取次ルートは一切使わず、宅配定期購読方式。一切書店、CVSに並ばない雑誌が『女性誌NO1』を名乗っているのが現在の状況を端的に表している。

『ハルメク』は1996年に前身となる『いきいき』が刊行を開始したが、同様のスタイルをとるもっと古い雑誌がある。1969年刊行開始の『日経ビジネス』だ。

こちらも日本のビジネス雑誌NO1を誇るが書店には並ばない。
※都内等の一部大型書店では店頭での扱いもあるが例外的扱いである。
週刊雑誌を宅配する稀有な形態であるが、2019年以降はデジタル版と実質上統合。速報性のある話題はデジタルで、分析記事や特集等冗長性が必要な内容は雑誌でと使い分けがされている。
そして日経グループには多くの各ジャンル別の専門雑誌が刊行されており、そこへのハブの役割も果たしている。勿論専門雑誌も一部を除き書店には流通していない。

多品種、少量でも売れる雑誌?

上記の大手刊行の雑誌と対極に位置するのが『ZINE』だ。
『ZINE』は個人または少人数の有志が、非営利で発行する自主的な出版物、との定義があるが、冊子形状のものが大半を占め、継続して刊行されるタイトルも数多く存在するので、事実上雑誌のような扱いとなっている。

書店でもZINEを見かける機会も増えてきたが、流通的には刊行者と書店との直接取引であり、取次を通すことはない。

雑誌の販売手法のアップデート

上記のように雑誌でもビジネス的に成功しているタイトルは存在する。
しかしそれは、かつてのフツーの書店やCVSの店頭で売上を伸ばしている訳でもない。寧ろ従来の販売手法しかもたない雑誌群の多くは販売部数減に苦しんでいる。

雑誌ビジネスを継続するには、非効率的な書店CVSルートではなく、別の販売ルートとデジタルや宅配定期購読等を組み合わせる必要があると言える。
かつては、大手出版社が大部数で雑誌を作れば自然と多くの広告を獲得できて、たとえ雑誌が1冊も雑誌が売れなくても黒字を確保できるほど広告が取れた時代もあったようだ。
勿論そんな時代は二度と訪れない。
雑誌ビジネスを継続するためには、雑誌のテーマに沿ったコミュニティを運営することが求められている。

いまの出版配送網ってこれからも必要なのかな??

さて、これで雑誌ビジネスを継続するにあたって、現在の出版流通網を経由する意味合いがあまり無いことが分かってきた。
それでも、昭和の人口増時代&ネットがない時代に作った出版配送網を、同じ状態で維持するためだけに出版社は約300億円を負担するのだろうか?
取次は莫大な負担を関係各所に求めても、
経年劣化の状態の自社のビジネスモデルを改めることはしないのか??

取次協会は『出版社に負担増して貰わないと出版物流がハードクラッシュしかねない』と半ば公然と脅迫めいた発言をしている
でも、この場合のハードクラッシュって、どんな状態なのだろう?
たぶん出版物流が多少混乱したとしても
Amazon等のEC書店、電子書籍は通常通り稼働し続けるだろう。。
寧ろ出版物流のハードクラッシュをきっかけに
ECや電子書籍が再注目されて、取次流通ルートの苦境は増すことになる、、

その状態は『読者』にとって果たしてハードクラッシュなのかな?

かつて昭和の出版流通は文字通りのインフラだった。
100万部近くを発行する週刊誌や多くの月刊誌、本がないとフツーの国民はテキスト情報に触れる機会が激減した。。
※新聞物流は全く別に存在するが、、

ネットの普及に伴い、出版流通は既にインフラではなくなった
『表現の自由』もネット上で担保されている部分もある

この現在の状況について、出版業界全体でもう少し真剣に考える必要があるのではないか??
300億円の追加負担も必要かもしれないが、現状の商流物流に改善、改革の余地はないのかな?

すでに紙の本や紙の雑誌が手に入らなくても
困る人たちはごく一部に過ぎない世界になっている
この現状をいまだに認めていないのが、出版業界の寂しい実情だ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?