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【鬼滅の刃×仏教②】日常生活の苦しみを和らげる方法。

 前回、下弦の伍の鬼である累を事例に、「満たされない思い」を仏教的な解説しました。

さっそく累がその思いをどう超えていったか、見ていきましょう!

自分の過去を思い出し、原因をつかむ。

首を切られた累は死ぬ直前、人間だった頃の記憶を思い出します。

彼はもともと体が弱く、長く生きることのできない体質でした。

そこで鬼舞辻無残が現れ、鬼になることで強く、長く生きられるようにしようと働きかけました。

そうして鬼となった累は人を食いました。
その行為に耐えられなかった累の両親は、一家心中を図ります。

しかし、累は苦しみを共に背負い、死のうとした両親の想いを汲み取ることができませんでした。

自分を殺そうとしている、、、。

そう勘違いして、即座に両親を殺害してしまったのです。

(転載元:漫画『鬼滅の刃』5巻 第43話 地獄へ)

自分の行ったことが誤りであったことに気づいた累は、非を認め、後悔します。

そして、累は「ごめんなさい。」と両親に言い、涙の中でこの世を去っていきます。

(転載元:漫画『鬼滅の刃』5巻 第43話 地獄へ)

苦しみから逃れる8つの心がけ。

こうして、累は苦悩から解放される結果となりました。

このシーンはアニメ版の中でも屈指の名場面でした。

普段あまり泣かない私も、こみ上げてくるものがあり、涙が・・・(笑)。

彼はなぜ、満たすことのできない苦しみを超えることが出来たのか。

実は仏教には、苦しみを説くために八正道という8つの方法があります。

(転載元:第一学習社『テオーリア最新倫理資料集』p61)

正しい言葉遣い、正しい見方をする、といった、当たり前だけれども実践するのが難しい内容が並んでいます。

累はこのうち、正見(正しく物事を見つめること)と正業(「謝る」といった正しい行為)を実践していたと思われます。

そうすることで、自分の中の苦しみが解け、やすらぎの境地に至ったと言えるのかなと思います。

私自身、この8つの実践によってハッとさせられることは多くあります。

例えば生徒との向き合い方に関して。

授業の中で、どうしても寝ている生徒ややる気のない生徒に対してはいい気持ちがわきません。

、、、ごくごくたまに「憎悪」に近い感情がわく時もあります。。。
※その後、その感情に気づいて猛省します(笑)。

でも、寝ているとか、やる気がないというのは表面的なことで、実際はいろんな要因があることが多いです。

直前が体育の時間で体力的にきつかったり、、。

そもそも5時間目で眠気のきやすい時間だったり、、。

家庭の事情で学校に来ること自体が精一杯だったり、、。

そこに気づくと、自分の心が軽くなります。

別の視点で見る、もっというと自分の先入観を捨て、ありのままに見ることが大切だなとつくづく感じています。

☆別の視点から:悪人こそ救われるという真理??

一連の回想を見ながら、私はもう一つ、脳裏に浮かんだ思想がありました。

浄土真宗の開祖、親鸞が説いた「悪人正機」という考え方です。

(転載元:第一学習社『テオーリア最新倫理資料集』p96)

親鸞は以下の言葉を用い、悪人こそ救われると説きました。

善人なおもて往生す、いわんや悪人をや

弟子の唯円という人が書いた、『歎異抄』の有名なフレーズです。

善でさえ往生できるのだから、悪人ならなおさら救われるべきだ。

直訳だと、以上のようになります。

でもなんで悪人が救われるの??と疑問に思いませんでしたか?

善人は自分の善い行いに自信を持つため、仏にすがる気持ちは薄い。

しかし、悪人は自信を持てるような善なる行いはしていない。
地獄へ行くと思い込んでいる。だからこそ、仏にすがる気持ちが一層強い。

仏にすがる気持ちの強い悪人こそ、救われるのだ。

このように親鸞は説明しています。

逆説的で深いな…と私は思いました。

同時に、これはまさに累のことそのままだと思いました(笑)。

振り返ってみますと、

累が過去を思い出す直前、炭治郎が累の背中に手を置いています。

そして、こういいます。

「温かい・・・陽の光のような優しい手」

さらに、回想のなかでこんなことも言っています。

「でも…山ほど人を殺した僕は…地獄に行くよね。
父さんと母さんと…同じところへは…行けないよね…。」

すがるような思いがひしひしと伝わってくる言葉でした。

そして、両親の温かい言葉へと続きます。

「一緒に行くよ 地獄でも 」

(アニメ『鬼滅の刃』第20話 寄せ集めの家族 より)

授業で累の最後の場面を映像で流したところ、1人の生徒が感動して泣いていました。

許されるべきではない悪人が救われる。

そんなところに心魅かれるものがあると思うと、
悪人正機というのはあながち間違いではないのかなって思った授業の時間でした。

~追記~

どっちかというと、累の動画よりも、私はその高校生の純粋な姿にウルウルしました(笑)。

高校生って良いなあ。

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