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ふたつの、みかづき①

あなたはとってもちいさなこえで、
はずかしそうに

ぼくとずっといっしょにいてください

と言って、ちいさな箱のなかの三日月を見せてくれた
ふたりしてにこにこして、ちょっと涙ぐんで、
またすぐ笑顔になって

そしてわたしは
いっしょにいようね、って言った

生まれてはじめて、だいすきな人から指輪をもらった。三日月が輝く、金色のちいさな指輪。

・・・

物心ついたときには、一生結婚なんかするもんかと固く心に決めていた。どうしてそう思ったのか、当時のわたしにはまるで分からなかったけれど、とにかく異性どうしで「ケッコン」して、もしかしたら子どももいたりして、という「あたりまえ」がとにかくいやだった。

「異性愛」というものがわたしには合わないらしい、と気づいたのは、はじめて同じ性別のひとと付き合って、しばらく経ってからだった。

9年付き合って、5年目ぐらいのときにはそのひとに異性の恋人ができた。なぜかわたしたちは別れず、そのうちに異性の恋人とそのひとは別れて、でもやがてわたしは運命の出会いをはたしてしまって、結局はやっぱり別れたのだった。
そのはなしはいつか、書けるときがくるまでねむらせておこう。

三日月の指輪をくれたひとと出会ったのは、父が突然亡くなったすぐあとだった。たいせつな出会いは、いつも大きな別れのあとにくる。はじめましてのときから、すきになってしまいそうな気がしていた。

出会った当時、わたしたちにはそれぞれ恋人がいた。いろんなことが重なって、わたしは数年前から当時の恋人との関係を終わらせるきっかけをさがしていた。

※※※昨年末から寝かせていて、完成を待ったらいつ投稿するか分からなかったので小出しにすることにしました。のんびり更新していきます。※※※


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