見出し画像

接骨院の闇

私は接骨院に騙された?かもしれない。
とにかく、とんだ散財となってしまった。

2023年10月下旬、ギックリ腰に悩み接骨院を探す。自宅最寄駅から徒歩五分のN接骨院へ予約、仕事帰りに初診となった。
この接骨院は大阪に運営会社の本社があり、関東にも数店チェーン展開している。国家資格を持った若いスタッフ(先生)が3~4名ほど働いている。

まず最初に症状のヒアリングと体の可動域チェックや、痛みのレベルなどを数値化したりと、初検が行われた。
施術に入る前に料金説明を受けた。保険適用もあるとのことで、毎回約600〜1000円でよいという。保険外の施術料としてサブスク利用申し込みを勧められたので、1回あたりの施術料が安くなるのならと思い、6回(6ヶ月)のコースを申し込んだ。毎月5500円自動クレカ払い。
(Squareという決済システムからメールが届き、請求と決済が同時に行われる)
サブスク加入同意書内には、途中解約の場合の清算金請求があることが明記されていた。重要だと思った私は、許可を得てこれを写真に撮って保管した。

ひと通りの手続きが終わったので、施術をしてもらった。背骨、骨盤、首の調整、筋肉ほぐし、ストレッチ。
なかなか気持ちの良い施術だった。骨格矯正と呼ぶいわゆる「ボキボキ」する手技は苦手だが、腕前は上位の方かもしれない。良いところを選んだなと思った。
初診のその日はサブスクの5500円と初診料と思われる1700円を支払った。

それから月が代わって11月初めにまた来院、保険証を提示、同時に、ある用紙への署名を求められた。
その用紙には、ところどころスペースがあり、何か役所にでも提出するようなイカツイものだった。文字も細かくて老眼の私にはすぐにはよくわからなかった。
あとで知ったことだが、それは「療養費支給申請書」と言って、患者が健保組合に出す療養費の請求書なのだ。それを接骨院が代わってやってくれるというシステム。
本来、患者が一旦全額負担して、保険適用部分を返してもらうという流れなのだが、接骨院が患者負担分を窓口で受取り、保険適用部分を健保組合からもらう。
N接骨院では、患者はその手数料として、毎月200円を払うことになっていた。

私はそのイカツイ「療養費支給申請書」に被保険者の名前を記入した。しかし、施術の内容などは書かれていず、いわゆる「白紙」の状態だった。つまり、月の最初に署名だけもらっておき、あとで施術内容を書いて健保組合に提出するということだ。事務効率を考えればアリだとは思うが、署名欄の上には「上記の施療内容を確認しました」というような、文言があったのを記憶している。
本来ならば、患者が内容を確認して署名しなくてはならないところ、ここでは白紙状態で署名させており、詳しい説明もなかった。少々心に引っかかりながらも、ま、いいやとその時には何も聞かなかった。
2回目のその日の料金は療養費支給申請書発行手数料200円を含む800円だった。

数回の施術によって、状態は少しづつであるがよくなっていった。そして、週1回のペースで通院した。だが、施術した日は良くなる感じはあったが、なにせ体の使い方のクセや柔軟性、筋力など、長年の負の蓄積によって、根本的には改善しない。

年が明けて2月中旬くらいだったろうか、健保組合から「調査依頼書」という、これまた仰々しい書類が届いた。
『あっ!これ・・・確か初診の時に、"健保組合からアンケートが届いたらすぐに教えてください"って言ってたヤツだわ!』

私が自ら記入するアンケートみたいな調査票の他に、11月分の医療費の内訳と調査依頼文、そして接骨院への正しいかかり方を説明したチラシの合計3枚が入っていた。
そう、これは、不正請求がないかどうかを確認するための調査。
ちょっとドキッとした。
早速、接骨院へ相談。コピーを取り記入見本を作成してくれるとのこと。数日待って、LINEで見本の写真が届いた。
私はその通りに調査票に書き、返信用封筒に入れて投函した。

さて、私が気になったのは医療費の内訳だ。毎回、600円〜1000円くらい会計時に支払っていたわけだが、保険適用の部分は300円〜700円程度だった。
あれ?差額は何?ということで、領収明細書を請求したが、そこにも差額分の記載はなく、質問してみたら、
「すみません。その説明を失念しておりました。柔道整復術の施術となって保険外となります」というLINEのリプライがあった。
わざわざ数千円の発行手数料まで払って明細書を発行してもらったのに、肝心の保険外の内訳の記載がなく、言うに事欠いて「説明を失念した」だと?
私はサブスクと毎回数百円の保険適用外の施術代を払っていたことになる。
え?
そこで私は初診時に署名したサブスクの書類の写真を確認した。書面には「矯正定額制加入同意書」とあった。
①施術内容=背骨・骨盤矯正治療、②料金、③支払い方法、そして中途解約の場合の清算金についてが書かれている。

お〜、周到な!
サブスクはあくまでも「ボキボキ」骨格矯正の部分であって、柔整の部分は毎回窓口で払っている料金に含まれていた、ということらしい。

だが、ちょっと不誠実ではないだろうか?

患者からすれば、定額制で通い放題で来やすいから、加入してしまう。
回数通えば、それだけ請求額も多くなるので接骨院からすれば、かなり儲けられる。

つまり、保険適用で客寄せし、サブスクでリピート患者を増やすというビジネスモデル?
ちなみにN接骨院のホームページを見ると、料金ページに定額制のことは一切記載ない。

この業界ではこのようなことが常識なのか?だんだんN接骨院に対する信用が薄れてきてしまい、足が遠のいてしまった。
先生方はみんな明るく、挨拶も元気で雰囲気がとてもよく、雑談もできるよいところだったのだが、お金の部分はグレーだ。
私が詳しいからくりを知ることができたのは、たまたま健保組合から調査票が来たためで、来なかったら知るよしもなかったかもしれない。

その後、通院はフェイドアウト。
サブスクの解約は違約金みたいな「清算金」を請求されてしまうので、「多忙につき」という理由で予約せず。
ふた月分が無駄になってしまうが、心がすっかり接骨院全体への不信感で充満してしまったので、骨折や脱臼などにならない限りお世話になることはないだろう。

巷では、なんだかんだと理由をつけて通院させる接骨院や整骨院があるようだ。その中には「部位転がし」と言って、施術の場所を定期的に変えて請求するというツワモノも。

「保険取り扱いあり」と謳っているところがほとんどなので、健保組合としては不正請求のチェックで大変な事務作業だろう。
今回の私がいただいた調査票は、どこかのアウトソーシング会社から発送されていたので、業務委託が当たり前のようだけど。
とはいえ、やはり不正請求が減らないからこんなことをする必要があるわけで、経費的にもバカにならない。

なぜ、こんなことになっているのか?
どうやら、供給過多と年金暮らしの高齢者の増加が同業者間の競争を生んでいるということが、背景にあるようだ。

知らず知らず患者も不正請求に加担しているなんて事態にならないように、接骨院や整骨院には「正しく」かかろう。

現在、私は自宅近くに一昨年オープンした整形外科に通院している。そこにはリハビリテーション科があり、理学療法士が体の使い方などアドバイスしてくれるし、ちょっとした運動もある。それに、何と言っても全部保険適用。最初はレントゲンで数千円かかったが、2回目は780円だった。
診断された病名は「変形性腰椎症」。
背骨がS字ではなく、真っ直ぐフラットになっているせいで、周りの筋肉に負担をかけている状態だという。少しヘルニア気味でもあるので、結果、ギックリになりやすい。
しばらく、リハビリに通うことになる。

心配なのは、調査によって不正請求と判断された場合、私が全額負担しなければならないということだ。
やれやれ、高い授業料だこと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?