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出発を前に

「『最後に言う。その仮面をとれ!』」そういうと、男は女に一輪の青薔薇を投げつけた。しかし女は顔を隠したまま、ただ高い声で男をあざけるように笑う。そして男が投げた青い薔薇を手に取り、そのまま男に背を向けてどこかに走り出してしまった」

「これで終わりなの。なんか中途半端ね」と、眠れない夜にあるおとぎ話を読んだ私は、小さくため息をついた。
 私は時計を見た「もう真夜中。明日朝が早いのに、何をしているのかしら?」でも、ちょうど眠くなったのでそのまま眠る。

 朝起きるとしずくが窓を伝っているのが見えた。「え!まさか雨? 天気予報では午後からって言ってたはずなのに。ああ嫌だなあ。これって結構降ってるの。今から出かけるのに気が重いわ」
 私はベッドから起きると、ラジオの電源を入れる。しかし、音声が聞こえるがそれは小さく、それ以上に波のようにも聞こえる雑音が激しい。「あれ?電波の調子が悪いのかしら」と、私はラジオのチューナーを少し回して見た。するとあっけなく鮮明な音になり、さわやかな音楽が流れている。

「ダイヤルがずれていただけか。さてと」私は出かける準備を始めた。ラジオはいつのまにかCMに代わっている。「あれ、今日行くところのじゃん」それはガラス細工のミュージアムのもので、まさしく今から行くフェアーの告知であった。
「あ、手を止めてる場合じゃない。急がないと約束に遅れちゃう」といって私は準備を急ぐ、ところがこういう時に限ってろくなことが起きない。実はこの日のためにあらかじめ着ていく服を決めていたが、いざ手に取ると、一瞬絶句した。
 なんと袖が汚れているではないか。「え!何で?ちゃんと汚れが取れてないわ。これは思わぬエラーじゃないの」と言って、私は思わず洗濯機のほうをにらんだ。
 仕方がないから急遽代わりの服を探した。でもそれはすぐに見つかったので問題がなかった。

 私は傘をさしてお出かけをした。向かう先はここから電車に乗って1時間先にある遊園地。その入り口で待ち合わせている。家から駅までは徒歩で5分と近い。「起きたときよりは、雨音が収まっていそう。良かった」私はそういいながら駅に急いだ。
 こうして駅に着いたところが、あろうことか改札越しに電車が来ているのがみえる。「あちゃー」私が思わず右手で額を抑えていると、駅員からの笛が鳴りひびいた。そして空気圧の音が鳴ってドアが閉まる。
 そして電車からの警笛が鳴ったと思えば、電車はゆっくりと左方向に車体を動かしていく。レールの接続場所が来ると響く音が聞こえ、徐々に速度を上げる際に聞こえる少し高めの音も混じっている。
 と気が付いたらすべての車両は左に。最後に所掌らしい人が、身を乗り出して合図をして過ぎ去った。その代わりに視界に入ったのは、反対側のプラットホームである。

「はあ、残念」私はため息をついた。そして時計を確認。「でも、次のでもぎりぎりセーフ。あと15分後かあ」と言って私はスマホを取りだした。メールやメッセージのチェックは出発前に済ませたから、やることがない。新しい着信もなさそう。何か面白いものはとスマホを触っていると、良い暇つぶしを発見した。それはサイコロを振るだけの簡単なアプリ。私は電車を待つ間、それで遊ぶのだった。

※こちらの企画で遊んでみました。(単語で紡ぐ 10のお題)

仮面/青薔薇/おとぎ話/真夜中/しずく/電波
ガラス細工/エラー/遊園地/サイコロ 

のキーワードを、太字にして順番に入れてみました。

第2弾 販売開始しました!

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シリーズ 日々掌編短編小説 277

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