響く礼節をペンペンしてみる

「残念だけど仕方がないな」上司に言われた最後の言葉。この日私は会社を退職した。

 業界では中堅クラスの会社で安定感もあり、本当はそこにずっといても良かったが独立するために決断。
 社内ではトップクラスの成績を収めていたから上司からは何度も慰留を求められたが、もう私の心は決まっていた。だから退職をする。

 最終日の会社を出ての帰り道。「ホント礼節の厳しい会社だった」と、誰もいないことを良いことに思わず本音が出る。私にとって妙に礼節を重んじる社風が最後まで合わなかった。
 会社の言い分を頭で理解できても、会社が実践している「礼節」とやらは、ちょっと度が過ぎているような気がしてならない。

「けどこれで、あの礼節とはお別れね」しばらくの間、礼節とは無縁の関係だ。無縁どころかあんな無意味な礼節をペンペンして消したくなるほど。

「自由の身になったし、暫く旅に出ようか」と私がつぶやいた視線の先には、ペンペン草が逞しく生えていた。

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