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日々掌編短編小説(そよかぜの千夜一夜物語)

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2020年1月1日から、ほぼ毎日掌編小説を執筆中。東南アジア小説をはじめ、興味のあるあらゆるジャンルをネタにして作品を発表しています。ちなみにこちらには「書き下ろし」としてしばら… もっと読む
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2021年1月の記事一覧

青い瞳が握りしめる籃球

「確かに青い瞳だ」ワシはひとりでこの壮大な湖を眺めていた。本来透明な湖の水。上空からの青…

もうひとつの栃木・蔵のリノベーション

「宇都宮餃子に対抗するには焼売しかない」これは久留生昭二の口癖である。  栃木市で生まれ…

旅する石像の行き先

「え! 壊すのですか?」私は次の言葉を聞いて声を失った。 「ええ、確かにこの作品は見た目…

キッチンの神を求めて

「あれから半年か」「そうね。今日は28日だから、荒神の日で間違いないわ」友美が夫のつぶやき…

開ける、空ける、そして明ける

「ふぁああ眠い」現地時刻は朝5時前だろうか? 真っ暗な道を、ワゴン車が走り続ける。  今…

3代将軍の最期

 日本の将軍と言えば、たいていは武家社会の征夷大将軍が連想できます。その中でも幕府創設者…

1月25日のカフェにて語る主婦たち

「今日は休んで良い日。だから何もしない」霜月もみじは、友達の海野沙羅と、小洒落たカフェに来ていた。  このカフェは、数店あるチェーン店である。だが良くありそうな統一されたロゴとか、店の雰囲気とか、金太郎飴のようなどこの系列店も同じというのでは無い。それぞれの店ごとにオリジナルなデザインが施され、個人店のような心地よさがある。半個室の店内は、他の人の目が気にならず、ゆったりとした時間が過ごせるのだ。 「さっちゃんもケーキセット?」「うん。もみじは、モンブランね。私はレアチーズに

ゴールドラッシュ

「ジョン、いつもありがとう」 「いやあ、心配いらないよ。だっておめぇさん、合衆国とメキシ…

深夜に遭遇した存在達

「あれ、あんなところに食堂?」自転車を漕いでいた俺は、目の前に赤い提灯がぶら下がっている…

上毛の温泉

「群馬は温泉どころ。でもやっぱり草津が一番だ」温泉ライターの西岡信二は、泊りがけで群馬県…

セレブなゴミ屋敷の1日

「ふぁああ。さて今日もネットで遊ぼう」武雄はいつもと変わらぬ朝を迎えた。武雄は地主の家系…

最後の正月で食べるフナ

「先生、今日は我が雑誌の企画に、さらにお店の協力までしていただき恐縮です」「いやいや、私…

スーパーの翁

「すみません、味噌はどこにありますか?」 「おう、えっと、どこだったかなあ。悪いが。他の…

118

「ち、またかよ。今日はやけに多いな」「新人の狭山、それはな」  横にいた治現が、話しかける。「俺が、海上保安庁での任務について5年目だから、10年くらい前の話だ。今日1月18日を118番の日と決めてからだと思う。本来の目的とは違う通報が増えたのは確かだな」 「それにしてもですよ。おかげで間違いとかイタズラの電話ばかり。記念日なんて、本当に余計なことをしたものですよ。118番は海難事故や密漁者の取り締まりのためにあるというのに」狭山は日頃からのストレスをここぞとばかりに発散。