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旅情かき立てる二冊: なんくるない | スーツケースの半分は

旅に出たい。
あぁ海外旅行に行きたい。

5月はお念仏のようにそう唱えながら、メイン仕事合間に週三軒不動産屋で内見したり、週三本映画見たりして、日常逃避して過ごしてきた。
ざらざらの毎日を包んでくれたのは、よしもとばななと近藤史恵の自然体かつ共感できる小説だった。

なんくるない

大丈夫、なんとかなるさ。Take it easy, never mind. 

主人公は、夫と別れ、生きづらさを抱えつつ暮らす三十代半ば女子。姉のマンションに転がりこみ、マイペースで仕事しながら、このままくたびれて中年になっていくのかなぁ、と自己肯定感そこそこ低かったのだが、沖縄の空と海と風のおかげで、明るさを取り戻す。

なんでもないよ。よくあることさ。

そう思っていた表題について、あとで調べてみると
「挫(くじ)けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日がくる」という意味だった。

 ありがとう、と誰にも言えないから空に向かって思った。行き場のない悲しみより行き場のない感謝のほうが好きだ。それは光みたいにこの島にどんどん広がっていって、また自分に返ってくるみたいな気がした。

よしもとばなな「なんくるない」

たよりなくて、へなちょこで、でもきらきらしている、登場人物たちは沖縄で癒され、自分を取り戻していく。
よしもとさんの沖縄いいなぁ。あぁ旅に出たい、とまたつぶやいてしまうやん。

スーツケースの半分は

あなたの旅に、幸多かれ――。

そう書かれたメモが入っていた、フリマで買った青いスーツケース。
全九章の主役はすべて違う人物とすべて違う旅先と、一個の青いスーツケースによって紡がれる。そう、旅の相棒は、いつも主人公のそばで見守っているのだ。

憧れの一人旅、
旅先の幻滅、
旅で自分を取り戻す、
新たな門出、
帰郷と再出発、
自分探しの旅

近藤さんが描くショートストーリーにはいろいろな出会いがある一方、旅は良いことばかりではないとも諭される。
自分のまわりにもお金と時間がたまったら日常生活を捨て、海外渡航する"旅ガール"が複数いる。どうやら、魅力にはまったら、旅沼から這い出すのは困難らしい。

航空券についてきたオマケ

さて、ここから脱線。
ついに、私も2年半ぶりに海外渡航チケットを予約した。

面白いことに、相方の故郷マレーシアへ航空券を手に入れて以来、故郷にちなんだお客様がつぎつぎ現れた、しかも日替わりで(笑)

  • MM2Hという移住ビザでマレーシアに住んでいた、一時帰国中の女性

  • 母親がマレーシア人で、我が相方の実家とご近所だったミックス男性

  • 夫がマレーシア人で、隔離制限も楽になったからと一時帰国の女性

  • マレーシアから日本へ、留学生カップル

  • 仕事でマレーシアに駐在していた日本人女性

    恋ゆる気持ちと、惹きつけあう磁力が絡まったのか。
    出発前は8月末とまだ先だが、皆さんの楽しいエピソードを聞かせてもらい、旅情くすぐられまくり。今から、海外旅行(またの名を里帰り&親戚サービス・自由時間なさすぎツアー)が楽しみで仕方がない。

    あぁ、やっと本物の旅に出られる。
     


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