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きれぎれ、陰の棲みか 芥川賞ぜんぶ

ちょっと大阪もんが読みたくなり、図書館で検索したら、二〇世紀末の芥川賞:122回と123回の受賞者がまさに大阪出身の作者だった。


きれぎれ

投身自⚫︎ の幻影からはじまり、焼そばをケダモノのような格好で食うランパブ出身の妻、画家の友人への妬み、事故死の友人への憐憫など、腐敗と劣等感と嫉妬と軽蔑にまみれた 俺いや僕の、破天荒な日常がヘドロのようにあふれ出た文章。
あーあ。もう。めんどくさいわね。むかつくぅ。おうやるのか、こら。うるせぇんだよ。きぃー。わぁやめろやめろ。うわっうわっうわっ。

「あなたの目は死魚のようだ。あなたは穢れそのものだ。私に触れるな。わたしの名を口にするな。あなたは生涯、恐怖と汚辱のなかで呪われる。立ち去れ偽善者。立ち去れ部外者」
一言も。ねぇ。

そうして、最後に
妻は焼そばを食べ、青空はきれぎれ。

うまい。ちゃんとオチがつく。
美しいと真逆の物語なのに不思議と清らかに染みわたる、町田節。
チタンの心 おおきに。
読後すなおに一礼した。

#きれぎれ  #町田康  
43/113冊
第123回 2000年上半期 芥川賞


陰の棲みか

在日韓国人が多く住む、大阪市生野区の鶴橋エリアが舞台だ。
戦争で腕をやられたソバン爺さんがひとり暮らす狭いバラックに、ボランティアの日本女性が訪ねてくると、近隣の男たちはざわつく。そして、頼母子講で集められた同郷民の金を、無断使用した輩が捕まり、私刑がはじまった..。

「心配はいらん。<時間>とはすぐに仲良くなれる」
(中略)
わしは三十年間ひとりで無為に過ごしてきたが、時間はいつだって滞りなくするすると音を立てて過ぎていった。

ソバン爺さんのいい加減な生き方は彼の処世術であり、今まで“われ関せず“と時間をやり過ごす事で生き延びてきた。しかし、ボランティア女性については真っ当な意地をみせるのだった。

#陰の棲みか #玄月
44/113冊
第122回 1999年下半期 芥川賞


どちらもディープな大阪の匂いがぷんぷんする小説で、大阪が苦手な人にはウケないだろうなぁ と思ってたら、まさに当時の芥川賞選考委員の石原慎太郎氏(故人)が酷評していた。もと東京都知事だもんな、そら合わんはずやわ。

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