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📕医療従事者にしか書けないと思った小説【サイレントブレス~看取りのカルテ~】

〈看取りのカルテ〉と書いてあるから、患者さんは亡くなるのだろうと察しはついていたけど、想像していたのとだいぶ違ったこの小説。


「これ、絶対に医療関係者じゃないと書けないよな」

と序盤から感じるリアルさ。

それもそのはず、調べてみたら作者の南杏子さんは現役の内科医。

医者と作家の兼業って……どんなバイタリティ。

プロフィール調べたらもう、とんでもない人だった。



《Wikipediaをギュッとして紹介》

編集の仕事 → 25歳で結婚、イギリスで出産 → 帰国 →33歳で東海大学医学部に学士編入 → 都内内科勤務 → スイス → 帰国 → 終末期医療専門病院に内科医として勤務 → 小説執筆にハマり小説家デビュー

医学部に編入したとき長女は2歳ですってよ。
仕事で乳幼児の病気を取材して、その記事を執筆した経験から「もっと知りたい」って思ったって。

もっと知りたいって思って子育てしながら医学部に編入するポテンシャルもバイタリティも、私の使ってない脳をどうほじくり出しても無い。

イギリスで出産の時点で、環境の変化に激弱な私は撃沈するだろう。


容姿がいい人を見て「同じ人間とは思えない」って表現をするけど、この人生こそ同じ人間とは思えない。マジで。

輪廻転生があるとしたら、私が人間2回目くらいで、南杏子さんは9回目くらいだろうか。


《ひとことあらすじ》

大学病院から訪問診療クリニックへ左遷された女医が、「最後」を待つだけの様々な患者と出会い命と向き合う話。ってひとことでまとめるのは何か違うけど上手く伝えきれない重さと深みがある話。

南杏子さん自身が終末期医療専門病院に勤めていたということもあり、視点が他の医療系小説とは違う。

あーーなんて言えば伝わるんだろう。もどかしい。

死を待つだけの患者と向き合う医者
残り僅かとわかっている人生をどう生きるかを考える患者
在宅でお世話をする家族

美しい映画になるような話ではなくて、リアルでズーーーーンとくる。

かと言って終始重苦しいわけでもなく。

いや、だけどズーーーーンなんだよなー。



《こんな人におすすめ》

訪問診療のお話なので、一般的な病院の医療とはまた違うとは思うのですが、とてもとてもリアルでした。

終末期医療に携わってきた筆者だから書けた本だと思う。

きっと色々な経験をされてこられたのだなと。

医療関係のお仕事をされている方は、「その大変さわかる」と思われるでしょうし、今後携わりたいと思っている方には「治す」だけではない色々なことがあるのだと知るきっかけになると思う。


しかし大変なお仕事をされていながら執筆をされた南杏子さん。
私があと7回生まれ変わっても、こんな人生は歩めないだろうな。


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