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コンラッドはまたの機会に
夫婦でお出かけをした。
一日かけてのお出かけは、あの時以来である。
誕生日が近いということで、我が子たちが「行ってきていいよ」と言ってくれた。目指すは都内。二人の時にしか乗れないフェアレディZで海の上の道を走る。私が「はやーい」と言うと「言うほど速くスピードは出してないからね」と言われる。さいですか。
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夫は、車内音楽をいつも私の好きにさせてくれるので、アップテンポの曲にした。私は夏が近づくとMONDO GROSSOがなぜだか聞きたくなる。あとはスーパーカーとかbirdとかUAとかを流れで聴く。
東京駅の駐車場に停めて美術館を目指す。
今回はアーティゾン美術館のブランクーシ展に行きたかった。
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アーティゾン美術館は本当に東京駅に近いのだ。目と鼻の先。
美術館をゆっくりまわる。
夫はどんどん先に行くが、私は気にせず自分のペースでまわる。
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チラシにも載っている「接吻」がとてもいい。これは1907年作の直彫りによる石のヴァージョンをもとに、1910年までに石膏で制作された作品だそう。密着していてやわらかで親密で素朴さがある。
私は一つの写真が気になった。
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ブランクーシの写真の傍らにいつも同じ犬が横たわっている。
私は咄嗟にバクゼンさんとマル太郎さんを思い出していた。
この2人(正確には1人と1匹なのだろうけども)たぶんいつも一緒にいたのだろうな。すごくいい表情で空間の雰囲気もやさしくて、どの写真も自然にたたずんでいる。
彼はアトリエにこだわりがあった。そこに置くものは白で統一されていた。犬の服装も白で統一されていたという説明文を読んで思わず微笑んでしまった。
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卵形のミューズが横になっている。やさしい顔をしている。
ブランクーシは明確に伝えたいことがあって、一貫性があるのだなと感じた。迷いがない。
そぎ落とした表現。なくていいものはなくす。
するどく明確なタイトル。
ブロンズを磨くことで作品にうつっている私たちすら作品の一部になっている。私たちが動くことで光も移動し、色も変わる。動いてないのに動的である。
伝える素材や方法は、木であり石膏でありブロンズであり写真であって、ことばでもある。
おもしろいなと思う。相反するものがせめぎ合っている。本質とはなんだろう?と作品を超えて問いかけてくる。それは目に見えるものを限りなくリアルに再現することではない。表現はそれだけではないということだ。伝える術は無限である。
自由を感じた。
単純さとは美術における目標ではない。対象の真の意味に迫ろうとすることで単純さに到達するのである。
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なるほど、シンプルにならざるを得なかったのね。
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昼食はアーティゾン美術館のカフェで頂く。
お皿がかっこよすぎる。そして料理のお味も品があって、美味しい。
夫がこんなに美味しいお肉を久しぶりに食べたと感動していた。よかったねぇ。嬉しそうな感情が見えるとほっとする。
次の場所に行こうとすると手芸屋さんが目の前にあったので、ふらっと寄って、マクラメの材料を購入する。
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次に目指すは荻窪。
本屋さんに行きたい。
目指すは「Title」という場所だ。
「荻窪は初めてきたなー」と夫が言う。
歩いていて体が具合悪そうな方やお年寄りが目につく。職業柄か?
ベビーカーに乗っている男の子が夫のことを凝視している。渋い顔で視線を外さない。
「見てるよ」と私が言う。夫は微笑んだり、変顔をしてみたり、反応を返す。男の子は渋い顔を崩さない。
いったん距離が離れてもまた信号で一緒になって、またガン見している。私はそれがおもしろすぎてくすくす笑ってしまう。
たまーにこういうことがある。
彼は子供や動物に興味をしめされるのだ。理由はよくわからない。どこか異形のもののような見た目をしているのか。
なんだかんだで本屋に辿り着いた。
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この本屋さんは「暮らし」や「生活」の本を主に扱っているのだ。
本のラインナップを見て驚いた。
あれもこれもそれも.....みーんな欲しい!
どうしよう。
悩んじゃうなぁ。
私は悩みに悩んで2冊本を買った。
夫はさっと決めて3冊本を買った。
買った後、奥のカフェで休憩する。
夫が頼んだおつまみを誤ってこぼしてしまった。
店員さんが拾って、のちほど2度目のおつまみを提供してくださった。いい心遣いを頂いた。
ほくほくして帰路に着く。
今回は、ある方への伏線になっている。ある方が私におすすめしてくださったり、行きたがっていたりした場所なのだ。この話を彼女へのお土産にしたいなぁと思っている。
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たまにお出かけすると、夫がいきいきするのがわかる。刺激を色々受けるのだろう。
私はいつもでなくてもいいとは思っているけども、時々は彼にいきいきしていてほしいなと思う。
この日はそんな日になったと思う。
この記事のタイトルにある「コンラッド」はホテルの名前だ。
私たちは誕生日のたびに
「コンラッドに泊まりたかったね」と言う。
数年前からずっと泊まりたいと言い続けていて、今年も泊まることができなかった。
でも、またの機会にしましょうと、コンラッドホテルを首都高速から眺めて、久しぶりのでえとの話はおしまい。
それではまた。
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