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シネマノスタルジア【出てこなかったお客さんとゴジラマニアと戦争映画】

私が10代の頃にアルバイトをしていた映画館の話を細々と書き連ねております。今日は印象に残ったお客さんたちの話です。
前回のお話はこちら。

1.出てこなかったお客さん

今のシネコンに慣れている若い世代の方はきっと想像つかないとは思うのですが、昔の映画館はその場にいようと思えばいくらでも何時まででもその場にいられたんです。

日本の映画人口が減少期に入った1960年代後半以降、多くの映画館では『流し込み制』(一度入場すれば、途中退出しない限り、最終回の上映終了まで、何度でも鑑賞可能)を採用してきた。が、近年主流となっているシネコンやミニシアターでは『入れ替え制』を採用しており、チケットに指定された回の上映が終わった後は、観客は速やかに劇場から退場しなくてはならない。(wikipediaより)

私の勤めていた映画館はシネコンではなかったので、この上記の流し込み制のスタイルでした。

なので、シネコンではできないことなのですが、上映途中から入って鑑賞し、次の回まで残って先程観られなかったところまで観て帰るということもできました。

上映時間ぴったりに入らなくとも、終演後に入れ替えをしないで、そのままCMが流れてまた同じ映画が繰り返し放映されるので、観ようと思えばいくらでも好きな時間までいられた訳です。

中途半端な時間にチケットを購入されるお客様に「始まってだいぶ経ちますよー」と切符売り場でお話するのですが、「いや途中から観て、また次のも観ていくよ」とおっしゃる方は意外と多かったんですね。

その中でも私が記憶に残っているお客さんがいまして。

その上映映画はM:i-2(ミッションインポッシブル2)なのです。

トム・クルーズめちゃめちゃかっちょええですね。
私もこれ、タダ見なのをいいことに2回観ました。(1回目は1人、2回目は親と観たのを覚えてるのです。)

わかるんです。だってこの映画おもしろかったし、トム様かっこよかったですもん。音楽もノリノリですもん。

でも4回連続で観たお客さんはさすがにすごいなと思いました。

平日だったんですよ。その日はね。
だから観客数も少なかったんです。そしてお客さんの出入りもわかりやすかったので、最初は「あれ?入った数とか出た数が合わないな….」くらいにしか思っていませんでした。

朝入ったあの女の人、ずっと出てこなくね?みたい話に従業員同士でなりまして。

中で具合が悪くなっちゃったのかなぁとちょっとみんなで心配してたのですが(実際、こっそりと様子を見に行ったりしました)
夕方になってやっと出てきました。

そして彼女の顔を見て「ああ、あの人トム・クルーズファンで有名なんだよ」とベテランの従業員がぽつりとつぶやきました。

それにしてもそんなに観るんだ!と私にとっては大変衝撃的で、いまだに覚えているお客さんのうちの1人です。

大好きなんだなぁと思いました。(パンフレットももちろんですが、グッズもたくさん購入されていました)

そのあとも何度も何度も来場してました。

愛ですねー。今のシネコンではできない技だと思います。

2.ゴジラ好きおじさん

そのままです。

これですよ。これこれ。
検索したら出てきました。すごいなぁ。インターネットってなんでも出てくるんだなぁ。今更ながら感動しましたが、このフィギュアですよ。

これは映画「ゴジラ2000ミレニアム」の劇場限定版で販売されていたフィギュアですが、グッズの中でもけっこうお高くて2000〜3000円くらいしたんですね。

けっこうキラキラしていて軽くて綺麗でした。

そのフィギュアを20体くらい一気に予約して購入していくおじさんがいました。

そして、やはり先程と同じようにベテラン従業員が「この人、いつもこうやってゴジラのグッズをたくさん予約して買っていくの。」と私に教えてくれました。

大人買いだなぁ。すごい金額!と、当時は思っていたのですが

今考えると転売目的かもしれんですね。

真相はわかりませんが、かなりの上客であった事は間違いないです。その日の売り上げが頭一つ飛び抜けていたのを覚えています。

3.戦争映画で怒られる

パールハーバーという映画を上映していた時の事でした。

びっくりしたけど、これベン・アフレックが出演してたんですねー。知らなかった。

その名の通り「真珠湾攻撃」のアメリカ人サイドから見た物語なのですが、私はこの映画は観ていませんでした。

だから映画の内容を詳しく知らなかったのですが、ある老夫婦の方が鑑賞をされていて、終演後にその男性のご老人からクレームを受けました。

「あんなの嘘だ。こんなひどい映画は初めてだ!」と。

そのクレームを受けたのは先輩従業員でしたが「何あれー感じ悪い。私たちは何も悪くないじゃんね。」と帰られた後に愚痴をこぼしていまして、聞いた私も当時は「そうだよね」と共感していました。

けれども、この事はずっと何かひっかかっていて今となっては「もう少しあのおじいちゃんに対して何かできなかったかな」と思っていたりもします。おそらく彼は戦争体験者であったのだと思います。彼の痛みや経験をもっと想像できると良かったのかなとも思います。

もうお年を考えると亡くなられていてもおかしくはないと思うのですが、私の心に少しだけとげのようにささっているエピソードでした。

今更ですが、映画も機会があれば観てみたいと思っています。

今日は印象に残っているお客さんのお話でした。

次回は大繁盛したアニメ映画の1日について書きたいと思っています。

それではまた。



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