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シネマノスタルジア【ヒット映画と年齢制限】

私が若い頃にアルバイトをしていた映画館の話を、思い出せる範囲で綴っております。前回まではこちらになります。

今回は当時上映していた映画の思い出話をちょこちょこと書きます。

1.くま、知らず知らずにヒット映画のご意見番になる


次の上映映画は何の作品をもってくるのか?

これは映画館経営者にとっては、毎回尽きない問題であると思います。
私のバイト先では、専務が次クールの上映作品を決めていました。

ここでは、専務のセンスや時代の流れを読む力、選択力が問われます。
そして、当然ながら外れると経営にも響いてしまいます。
ただでさえ、お客さん0人の日もあるくらいの田舎の映画館ですから、専務はなるべくヒットを狙いたいし、外したくない訳です。(アルバイターはバイト代がもらえればぶっちゃけその辺りはどうでもいいのです)

彼はいつも悩んでいました。

「どうしようかな。僕はこれがいいんだと思うんだよな」

アルバイト従業員にいきなり自分の意見を聞いてくる事もありました。あまり専務のいるA館のシフトに入った事のない私でさえ、何回か質問を受けたことがありましたので、しょっちゅうこのように聞いていたのだと思います。

暇すぎていつもA館に置いてある雑誌の「ぴあ」の三巡目にぼんやりと突入しようとしていた私は、唐突に話しかけられてビクッとなりました。

「ああ、はい…..それですか?」

彼が持っていたチラシはこれです。

ああ、またシュワちゃんなのね…..

専務は大のアーノルド・シュワルツェネッガーファンでした。
なにかとシュワちゃんの映画を推してきます。

しかし、そんな事を唐突に聞かれましても「シュワちゃんの映画なんて今は流行んないんすよ!」なんて一介のアルバイト従業員が思っていてもなかなか言えないじゃないですか?

まあ、この時は私も言えなかったわけですが(他のおばちゃん従業員は遠慮なく言ってる方もいましたが)
この映画はその年のゴールデンラズベリー賞の俳優部門でシュワちゃんがノミネートされてしまったという逸話も生まれました。そしてうちの映画館も全くお客さんが入りませんでした。
やっぱり…..という感じでしたが、まあ、バイト代がもらえれば私は良かったのです。


ここで、ヒット映画に関する話を少ししたいと思います。

私が勤めていた時期の流行映画の1つに「ハリーポッター」がありました。

この映画の「本が売れているから(ヒットが)きそうだ!!」という前評判は、さすがのシュワちゃん好きの専務もつかんでいたらしく、上映するか否か、上映館をA、B、Cのどの館にするのか等で悩んでいました。

どんな話なのか….どんな層に受けるのか…..今一つ決め手がない中で、「誰かこの本を読んでいる人はいないか?」という話題になったようです。

バイト従業員の中で調べてみたところ、ハリーポッターの本を読んでいたのは私だけでした。

白羽の矢がたった私は専務に呼び出されました。

「○○さん(私の旧姓)は、ハリーポッターの本を読んだんだって?どう?この映画ヒット来ると思う?」

「きますね。たぶん、ヒットします。」

「子供たちにも人気があると思いますけど、きっと大人も観ると思いますよ。一番観客数の多いところでいいんじゃないですか?」

当時、洋画は大体A館で上映していました。なので観客数の多いC館で洋画を上映するのは異例の事でしたが、専務は「そうか、ありがとう。」と言って、私の意見を参考にしてくれたのかC館での上映を決めたようでした。

そしてその後映画は大ヒットし、平日にも関わらず多くのお客さんが映画館に足を運んでくださいました。専務はほくほくした顔で「今日もこんなに入ったよー」と嬉しそうに報告してくれたので、私も嬉しく思っていました。

私がご意見番となったもう一つの映画は「バトル・ロワイアル」です。

この映画は、深作欣二監督がメガホンをとったり、ビートたけしさんが出演を決めたりと話題性も豊富で、当時は西鉄バスジャック事件が起きてしまったことから、原作や映画が社会的な問題にもなりました。

これも「原作を読んだことある人ー?」と聞かれて、読んだことがあるのは私だけだったのです。

専務に再び呼び出された私は「たぶんヒットすると思います」と話しました。
「ストーリー自体は残酷な描写が多いのですが、同年代の学生さんにも受けると思います。高校生の子が来そうな気がするから、一番商店街の通りに近いB館がいいかもしれませんね。」ともお伝えしました。

そして、映画は読み通り大ヒットしました。私の予測が当たり、高校生の来場者が多く、学校帰りに制服姿のまま立ち寄る姿を何度も見かけました。リピーターも多かったようです。

そんな調子で、たまたま本を読んでいた私がなぜか映画のご意見番になっていたというお話でした。

2.くま、年齢制限の映画にたじろぐ

アルバイト従業員には、勤めている期間だけですが、あるとってもお得な特典がありました。
それは

<上映している映画はお休みの日にタダで見ていい>

というものです。

これ、すごく嬉しくないですか?

私はこの特典はとっても嬉しかったのです。
バイト期間中のほとんどの映画は休みの日に観に行っていました。

そして、A館なんかはあまりにも暇でお客さんがいない日だと、映写技師さんや他のアルバイトさんが「お客さん来るまで観てていいよー」とバイト中にも鑑賞している時もありました。
「働けよっ!」って感じですが、今思い出してみても相当ゆるい雰囲気ですよね。

その中で私が観なかった映画もあります。興味が沸かないのは観なかったですし、年齢制限のある大人な内容の映画はなんだか気恥ずかしかったのです。

さきほどの「バトル・ロワイアル」なんかも当時は「R-15制限」がありましたが、他にもそのような映画がありました。

「狗神」という映画が「弟切草」と同時上映だったのですが、私の勤めていたA館で上映されることになりました。

このポスターが懐かしい….。

R-15なので、私は15歳より上の年齢ではあったのですが、当時はまだ十代ではあったんですよ。

「観てはいけない!」と勝手に自分内ルールを課していたのと、「でも後学のために観ておくべきか…(←何の後学かはわからないのですが)」という葛藤で戦っていたのですが、結局バトル・ロワイアル以外は観なかったです。
しかしですね。問題は上映中なんですよ。バイトしてたら必然的に見えるじゃないですか。

待機所でも声が聞こえるので、もういたたまれない感じでした。はやく上映期間がすぎないかなーと願っていました。

今見たらそうでもないかもしれませんが、でも基本的にはあまり変わってないかもしれません。(もちろんストーリー的に必要なら、エロでもグロでも割と観られる方だとは思います)


そんな訳で今日は2つのお話でした。

次回は、上映映画のお話を
お客さんメインで少し書いてみたいと思います。

それではまた。




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