愛しき世界とハンドベル
冷たい風は私のほほを冷やし
吐く息は白くあたたかく
後ろに置き去りになって消えていく。
朝の入谷は夜とは違って
どこかかしこまったような
何かの始まりのような
さわやかさも感じさせる。
歩行者をすりぬけて
最寄駅に着く。
鶯谷は猥雑な街だ。
駅前はどこもかしこも変な名前の
ラブホテルがたくさん立ち並んでいる。
山手線で1番利用客が少ないことも
納得せざるを得ない。
このホテルの数だけ愛だの恋だの
人間の美しいものや汚いものや欲望が生まれているかと思うと、私は横を通るたびに気恥