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思ったことや考えたこと

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日々暮らしていて、頭にふっと思いついた考えや、人から影響を受けて浮かんできた思考の断片などを書いたもの。
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#エッセイ

つまみぐい【ニ】

モンブラン味のキットカットに思わず手を伸ばそうとしたその時。 夫が遠くからゆっくり近づいてきて、牛乳を買い物かごにどすんといれた。 スーパーは秋のおやつが目白押しである。さつまいも、くり、かぼちゃ......9月に入ったからなのか、ハロウィン風のパッケージが目立つ。 去り行く夏。 色々なことが今年もあった。 この夏、私は、ある一つの作品に出会ってひとめぼれした。 それはXのタイムラインで流れてきた漫画だった。 「神様」という作品で、このリンクから無料で読める。

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そのおうちは高いお山の上にあって、車幅ギリギリの細いくねくねとした道を登っていくと辿り着く。 道はところどころ地面のアスファルトがでこぼこしていて、草が生え、走っているとかたかたと私の車が揺さぶられる。少しでも運転を誤ると、ブロック塀の壁にすったり、タイヤが道から脱落しそうでこわいので、私は慎重にスピードを落として車を進める。最後の道は両脇に古く使われなくなった工場と平屋のトタンの屋根のおうちに挟まれて、その道の行き止まりまで行くと目的のおうちがある。 目の前には竹林が広

たとえばそれはおにぎりのような

「あなたは、どんなエッセイが読みたいですか?」 と問われたとして。 そんなことはこの先の人生で誰かに問われることはないかもしれないが、そんなことを言ったら話が終わってしまうので、問われた前提で話を進めたい。(ゆるしてくだされ) 私は誰にでもわかりやすく共感を得るような感動物語や、奇跡の大逆転劇、誰もがうらやむような憧れの恵まれた生活、勧善懲悪のスカッとするような話などもおもしろいとは思うが、実のところさほど興味がないのかもしれない。 私が読みたいものは、たとえて言うな

餃子は酢で食べるし、美しく許すことだってできるかもしれない夜

私は目を疑った。 そして私は私のポンコツぶりに、幾度となく落胆してしまう。 その日は、美大のスクーリングで都内の大学のキャンパスを訪れた。訪れたはずだった。 キャンパスに到着してから、スクーリングの抽選に外れていたことが事務員とのやり取りで発覚した。......このことが何を意味するかというと、本日、私は授業を受けられないということだ。「せっかくここまで来てもらったのにすみません」と若い事務員さんが残念そうに声をかけてくれた。事務員さんは何も悪くない。悪いのはどう考えても

ふれるだのふれないだの

最近、短歌が気になる。 本屋さんに行っても短歌の本を一度は手に取ってしまう。パラパラパラとめくって「ほぉぉ…….」とためいきをついて、そして元の場所へ戻す。でもその場をすぐ去るのでもなく、しばらく表紙を眺めてみる。私の頭の中は、買いたいと買わないの間を行ったり来たり行ったり来たり、二人の人間の間でフリスビーを投げられた犬のように、普段はなまぬるい私の思考がその時だけはせわしなくスピード感を持って行き来するのだ。 そして買わないに軍配があがる。 決まり手、熊の富士、寄り切り

「わかる」と「わからない」

土曜日の朝。 二度寝してしまって、夢と現実の間をシーソーみたいに行ったり来たりしている私の耳に、突然夫の声が鳴り響いた。 目をこすりながらぽやんとして起き上がると 「大変だ。つばめが落ちてる」 と告げながら、彼は私の顔も見ずにそそくさと部屋を出て行ってしまった。 私はのそのそとベッドから起き上がり、階段を重だるそうにとんとんと降りてパジャマのまま玄関に向かう。 玄関の扉を開けると夫がビニール手袋を手にはめようとしていた。 ふと足元を見ると丸い物体が玄関マットの上

わからないけど、そばにいる

「どうせわからないんだから」 「私のことなんてわからないでしよ」 「私のつらさなんて誰にもわからない」 目の前の少女は憤りをあらわにして 持っていた水筒を強く床に投げつける。 「あいつムカつくんだよ」 「みんなムカつく!」 私はただただ 「うん、わかったから」 「聞いてるよ、ちゃんと聞いてる」 と言って彼女を強引に抱きしめた。振り下ろした手が私の肩や背中にどんと小さな衝撃を与えた。 最近気になっている子がいる。 私は福祉職の友人からヘルプを投げかけられて

ミニストップのあの子のように私はなりたかった

日頃お世話になっているコンビニエンスストア。 スーパーで忘れたものをちょっと買い足したり、仕事の訪問業務中におトイレをかりたり、私の生活にかかせないものだ。 そんな数あるコンビニの中で、私は気づけばふらりとミニストップに立ち寄ってしまう時期があった。 目的はこれ。 「ダブル蜜いもソフト」 私と私の娘が一時期これにはまっていた。 この「熱い・冷たい」のコンビに私は異常に弱い。 私が代表的に好きなのは、熱々のアップルパイと冷え冷えのアイスの組み合わせである。 遡るこ

ことばがいらない場所

ことばは人を包み込んだり やわらかい気持ちにしたり ここにいていいんだって思えるような 羽根布団みたいな 軽くて ふわふわしてて あたたかな側面もあるけれども 一方で 時には人を傷つけたり 自信をなくさせたり もうここにはいたくないというような まるで水を含んだ衣服のように もがき苦しみながら うまく抗えずに 深く深く 海の底に 人を落とし込めてしまうような 孤独に陥らせる凶器にもなる。 そういう時に 私はある人たちを思い出す。 それは以前、施設に勤めていた時

くまのぬくぬく日記③

12月7日(木)の日記。 ◾️朝からnoteに投稿してみる これはその前の夜から書いていて、投稿するか悩んだけども、まあいいかと思って投稿してみた。コメント欄を開けるか閉じるか悩んだけども開けておいた。 結果的には開けておいてよかったなと思った。 コメントを早々とくれた方。ゆっくりと来てくれた方。また読んでくださった方やスキを置いてくれた方。 ありがとう。ありがとう。ありがとう。 (ありがとうの3連チャンは淀川長治スタイルを意識している) ◾️なんですって!の話 山崎ま

くまのぬくぬく日記②

12/1(金)の日記 ◾️チキンシチュー? 朝起きて、寝室から出るとビーフシチューの匂いがした。 正確にはこれはビーフシチューではない。 チキンを入れたので「チキンシチュー」、か? ブロッコリーとホワイトマッシュルームとチキンとにんじんとじゃがいもと玉ねぎが入っているチキンシチューの鍋は、いつの間にか夕飯後に火を焚いた薪ストーブの上に静かに置かれていた。 これは夫の仕業である。 そのおかげか、具材はかなりほろほろの状態になった。 そして朝方、夫がコンロで再加熱したのでそ

夜ふかしとナルホイヤの心

こんなことあるか! ってくらい、先日若いことをしてしまいました。 まあ、ざっくり言いますと、私のお友達がお酒を飲んで酔ってしまい、苦手な方と喧嘩して泣き叫んでいたのです。 それが夜の23時半。 そして彼女は 「私はくまさんが神様なんです!」 と叫んでいたそうで。 その場にいた夫は その荒ぶる雰囲気をなんとかしたかったようで 「君が来ないとこの場がおさまらないので来なさい」と電話をかけてきました。 私は次の日は美大のスクーリングで 朝早く出かける予定であったので 寝

木がどこかで音もなく倒れていることを私は忘れたくない

雨降り。 ぽつぽつとフロントガラスに落ちていた雨音は、次第にぼつぼつぼつっと強い音に変化する。音の間隔は次第に狭くなって連続的になる。 車のワイパーが規則的に雨を横に払い除ける。 運転しながら私は色々なことを考える。 お友達のnoterさんのゆうゆうさんが 先日、コメント欄で 「諸法無我」 ということばを教えてくれた。 この「諸法無我」に対していくつかなるほどと思うことがあった。 そして、過去に私の心の中にいくつか生まれた問いたち。 その問いたちはその時は解決に

心のささくれと絆創膏

ささくれができてるなと気づいたのは、会社の朝礼をリモートで終えた朝の車の中の出来事であった。 私の左の親指の爪の左側にできたささくれは、皮が少しむけていて、右手の親指で何回かなでるとひっかかる感触がある。 ひらひらした私の皮膚の一部。 このひらひらをむいてしまうと、いつもの通り赤い血がにじんでくるのだろう。 ぎりぎりのライン。 ひっかかりは違和感。 そのままひっかかりを放置して皮膚の再生を待つのか。 それともひっぺがして、血が滲んで傷ついても、ひっかかりをなくし