マガジンのカバー画像

垂直の詩

26
空       言 間 に 立てる 葉
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

クジラと幽霊

クジラと幽霊

言葉の水平線を泳ぐ
クジラの垂直運動
うつつのなかに
世界という沈黙を飲み込む

潮と煙
吐き出しながら
背骨を立てる いきものの
音のない旋律

垂直の幽霊は
膠着した時間の隙間から
こちらを覗いている
声のない 足のない 背骨のない

雨の歌をうたえ
クジラの見る夢の底
幽霊をみちしるべにして
世界という旋律を言葉にする

「」

「」

凍てつく朝の静けさ
橙に滲む雲の隙間に
世界が呼吸している
僕という獣は覚醒している

獣はうろつく
うろつきながら世界を見る
うろつきながら思考する
うろつくことで思考は凍結しない

街をうろつく獣のシュルレアリスム
「」をつけて世界を見る トナールの目
膠着する時間と空間のなかで
橙に歪む箱を踏む

思考のディストーション
時間が歪む 空間が歪む リズムが歪む
世界の鍵をこじ開け
獣は大地の裂

もっとみる
大地という命題

大地という命題

僕という獣は大地を蹴る
僕というは獣は坑道を掘る
坑道という行動は大地のなかで広がっていく
大地という命題

大地は空間に引かれた線だ
空間の中に放り出された
曖昧な存在の僕らは
その線の上で生きることができる

天日は死した屍を腐らす
醜いもの穢らわしいものにする
大地はそれを受け入れ
あたらしい生命の息吹にかえる

大地は呼吸している
僕らは大地において
自然と人間との交錯を経験する
僕は僕と

もっとみる
縄

フォノン
ただ漂う音の粒子を
言葉にして大地に記録する
大地という巨大なレコード

Re + cord
縄を綯う
縄にレコード針を落とす
縄に綯われた死者の声を聴く

縄は言葉
縄の彼方と此方を隔て
名は印を結ぶ
ナワールの風が流れる

骨その先端を尖らせて
レコード針で布を縫い
テキスタイルのなかに
僕のテキストは存在する

踊る

踊る

国家という曖昧な
イデオロギーという曖昧な
科学という曖昧な
酩酊のなかに踊らされるデカダンス

前にならえと並ばせられた列を離れて
僕は圧倒的現実のなかで舞い踊る
音楽は流れている
脈打つビート

風を踊る
波を踊る
言葉を踊る
その一瞬に

イズムを離れたリズム
軽やかなステップで大地を踏む
覚醒と躍動の足音は宙を舞う
そのとき僕は音楽になる

圧倒的現実

圧倒的現実

アボリジニたちの音楽に楽器は存在しない。
低く地を這うディジュリドゥの倍音。
木片を打つブーメランの響き。
そして肉体。

調律という不自然さのない。
西洋音階という抑圧のない。
自然と隔たることのない。
骨と声の音楽。

伸縮する筋肉は大地を踏み鳴らし。
からっぽの筒の中を風が通りぬける。
音楽そのものが呼吸している。
音楽という圧倒的現実。

夢見のなかで、マングローブ。
夢見のなかで、ユーカ

もっとみる
16

16

ダブ空間に漂う音楽は、ナワールの風の音。
僕はそれをつかまえて、大地につなぎとめる。
言葉を書き留めることで、音楽の息の根を止める。
プラトンは詩人を追放する。

詩は音楽の死を歌う。
記憶を大地に記録する。
僕は詩というものがわからない。
僕は死というものがわからない。

詩と死の掛け算。
4×4
シャーマンは16という数字を導きだす。
掛け算は、次元を生み出す力を持つ。

さらに掛け算をつづけ

もっとみる