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アイスランドで時を超える、哀しくも優しい物語「緑衣の女」:アナールデュル・インドリダソン

はじめに

アイスランドといえば、何が思いつきますか? 私はこのスタンドアップコメディしか思いつきませんでした…

imdb.com/title/tt10277516/

アイスランドあるあるを面白おかしく話してくれる一本。ゲラゲラ笑ってしまいました。NETFLIXで見れます。
私のアイスランドレベルはそんなものですが、アイスランドのミステリーは初めて読みました。北欧つながりで言えばドラゴンタトゥーの女シリーズぐらいかなぁ。

本の概要とあらすじ

数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が捜査官エーレンデュルの手で明らかに。CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞受賞作。世界が戦慄し涙した。究極の北欧ミステリ。(Amazon商品説明より引用)
住宅建設地で発見された、人間の肋骨の一部。事件にしろ、事故にしろ、どう見ても最近埋められたものではない。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックもあったらしい。住民の証言の端々に現れる緑の服の女。数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が、捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。CWAゴールドダガー賞/ガラスの鍵賞同時受賞。究極の北欧ミステリ。(「BOOK」データベースより引用)

感想

人骨が発見されたが、最近埋められたものでは無さそう…なので捜査のスピードはゆっくり。アイスランドの犯罪発生件数(2016)のうち、暴行は1605 件、そのうち殺人はたったの1件!!!! 平和…と思いきや、女性に対する暴行事件は多く発生しているそうです。

https://www.is.emb-japan.go.jp/files/1802ZairyuHoujinMukeAnzenNoTebiki.pdf より

人骨の発掘を考古学者にお願いしたら、恐るべきスピード感(めちゃめちゃ丁寧に土を取り除いている)で、いらだつ捜査官との掛け合いが微妙にほっこりしてしまいます。

さて、本題。本作は女性に対する暴力をテーマに描かれています。捜査の描写と過去の暴力のシーンが交互に描かれるのですが、あまりにも真に迫りすぎていて読むのが辛かった。ぐいぐいと読ませてくるのですが、どうしても暴力のシーンが多くて目を覆いたくなるほど。束の間の穏やかな夏の風景とあまりにも落差のある終盤で、ラストシーンでようやく救われる思いでした。

印象的だったのは、「あれは暴力なんて言葉では言い表せない。魂を殺す作業よ。」という風に登場人物が放った一言です。もし自分の身に起こったら…その時自分が立ち向かえるか、ちゃんと逃げられるかは自信がありません。

ともかく救いのある話で良かった。北欧といえばいい響きですが、緯度の高い国ならではのうつうつとした冬の情景も美しかったです。それにしてもアイスランドの名前、馴染みがないのでなかなか覚えられなかった…

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My thoughts in English

Human bones are found but they were from the decades ago…so there is no need to speed up of investigation. In Iceland, there were 1605 violence cases include only one murder in 2016. Looks peaceful, but the numbers of violence for woman are increasing.

The archaeologist is handling the exhumation bones with tremendously slow speed; so carefully removing layers of soils. The negotiations of tidy archaeologist vs irritated police investigator melt my heart somehow.

Now, we are in main subject. The theme of this book is the violence for women. It shows alternately the investigation scene and the scene of violence happened in the past. The violence scene was illustrated so real that I read that so stressfully. The book has power that attract the reader, even so there were too painful scenes for me. The gap of brief peaceful summer and the final phase made a striking contrast. The very last scene made me felt rescued.
One of impactful phrase is “It can’t be described by the word ‘violence’. This is killing soul.”
If I were in that situation, I have zero confidence of dealing or running away.

I’m glad that this is tragedy but with salvation. The gloomy winter description was beautiful. By the way, I had difficulty of remembering the Icelandic names because I’m barely familiar with.


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