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2023年春の詩(無題)

雨がやまないので
菜種梅雨だねと言ったら
伝わらなくて会話が途切れた

春の雨は冷たい
油断しているから

何度でも繰り返すから覚えない思い出せない春はモルヒネ

足元が見当たらない
一歩を踏み出せない
新しいパンプスを買ったのに
これを履いてどこへ
どこにも

傘は随分前に失くして
ずぶぬれ 
からだの芯から冷えている
どこかで温もらなくては

入浴剤を入れずに湯船に沈んだらやけにはだかが恥ずかしかった

憧れと現実逃避を
ごちゃ混ぜにしてしまう癖
ではなく、言い訳

失くした傘は
数えきれなくて
だけどその傘で誰かが
雨を避けていてほしい
せめて
誰か
誰でも

お湯割りが喉を流れて行く先のおそらくは海 いつか何処かの

春の雨は
つめたい

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詩と短歌:藤田美香 2023年春



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