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アンビバレンス

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どんな形容詞も邪魔だ。
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#短文

好きな人が恋する表情を絶望と思わないくらい忍耐と友になってしまった。それでもそれでも、それでも好きだ。貴女の顔は哀しいほど美しい、それを知るのは俺だけだ。

#短文 #恋

理性の二律背反を実感する瞬間とは、好きな人に 君はいい友達だね、と告げられるときではないでしょうか。

#短文 #恋

この詩集、言葉で表すには難しくて雲の上で宙返りするみたいな感覚になるよ、と言いかけたのがすべて引っ込んでしまった。お気に入りの詩集をプレゼントした瞬間、じゃあ今度感想言うわ、と笑顔で見つめ返されたら、今度を楽しみに待つしかないじゃないか。

#短文 #恋 #詩

それ寒くないのと聞く私に、雪の季節だからこそアイスが美味いんだよと笑いかけた彼は、雪の持つあたたかさを常に既に知っていた。私の胸があつくなるのを知らなかったにしても。

#短文 #恋

プラネタリウムを背負って歩いているのだと錯覚するほど星が綺麗で、夜空が僕だけのためにあると夢見ることができたから、彼女が僕の知るはずのない好きな人とクリスマスを過ごすとわかっていても、嫉妬が0.1ミクロン和らいだ。

#短文 #恋

炊きたてのご飯をサランラップで包む。僕は覚悟を決める。どんなことが起きても彼女を守り抜く。サランラップより手軽な爽やかさで、けれど確実に、密着するほど側で。

#短文 #小説

愛人という言葉が現実で使われるのを、彼女を好きになって、深く知って、初めて耳にした。アイジン。彼女の発した単語はあまりに大人で、宇宙語で、僕は目が回って発狂寸前だった。僕がその歳上男性だったら貴女をそんな風にはしない、と言うのは傲慢か。

#短文 #小説 #恋

普段飲まない彼女が「酔った」と呟いた晩、地球上の海をすべてひっくり返したように僕が悶え苦しんだのを、君は想像できるか。涙すら流されて息ができなかったんだ。
#短文 #恋

酔わせるなら死ぬまで酔わせろ。さもなければ、想いを吐かせてくれ。
#短文 #小説

教えて差し上げましょうか。私は、すべてを曝け出しました。あとは破滅するだけなのですよ。もっと自分を見せてよと促されたら、慟哭して、好きだと呟いて、周囲のものを無茶苦茶に投げ飛ばして、死んだように黙りこくって、あなたから離れるしか、生きる道はないのですよ。
#短文 #小説