地方起業

地方での起業を選択した3つの理由

2016年、私は生まれ育った東京を出て「地方での起業」を選択しました。

2016年8月3日、福島県いわき市にいわきユナイト株式会社という法人を設立し代表取締役になりました。東京で生まれて東京で育った私が全く縁のなかったいわきで起業したのです。「地方で起業する」ということを選択した理由、そこに至るまでの経緯を綴っていきます。

私は大学卒業後、リース会社やベンチャー企業で経営企画や経理を担当し、2011年に独立して個人コンサルタントとして活動してきました。2007年に取得した中小企業診断士を活かしての独立でした。中小企業診断士というのは経済産業省が管轄している中小企業の経営支援の専門家です。公的な窓口で経営相談を受けたり、セミナーの講師をしたり、そこからコンサル契約を取って顧問になるというのが基本となる業務です。しかし私はこのような業務は一切やらず、地域活性化や農業経営支援といった方向性に進んでいきました。これはたまたま国(経済産業省)が農商工連携という政策を進めていて、中小企業診断士もそこにビジネスチャンスを求め始めたタイミングだったこと、そして、私は東京生まれ東京育ちで故郷がなく、故郷(田舎)への憧れを強く持っていたことから、自分のやりたいことが地域活性化、農業というキーワードにピタッと一致したというのが大きな理由です。

ここから私は地域活性化、農業経営支援のコンサルとしての実績を少しずつ積んでいき、全国を飛び回る日々を送りました。地元の人と会議をしたり、ワークショップをしたり、視察などもして地域の目指す方向性をつくりながら、場合によっては商品開発をしたりもしました。この仕事はとても楽しくやりがいのあるものでした。このあたりから今後は地域活性化の道で生きていこうと決めました。これが地方での起業を選択した1つ目の理由です。

しかし楽しくやりがいのある最高の仕事にも問題はありました。それは毎年毎年仕事がゼロリセットされてしまうことです。地域活性化や農業関連の仕事はだいたい行政からの依頼であったり、民間からの依頼でも補助金を活用してのものになります。そうすると案件はほぼすべて年度単位になり、3月には報告書を作成して完了し、次の年度の仕事はどうなるのかヒヤヒヤしながら4月を迎えるということを数年繰り返しました。仕事の依頼がたくさん来るベテラン先生や華々しい実績のある方なら引く手数多で仕事に困ることはないのですが、私にとっては心臓に悪い仕事のやり方でした。

地域活性化のコンサルにはいくつかのタイプがあるように思います。東京を中心に純粋なコンサルとして活動していた方が地方に進出するパターン、逆に地方で事業が成功し他の地方からコンサルとして呼ばれるパターン、大きく分けるとこの2つで、最近は後者の方々の活躍が目覚ましくなってきています。そしてコンサルというビジネスモデルは、自分が動かないとお金にならない、いわゆる「時間給」の世界なので、働く時間を増やすか時間単価を上げるしか収入を増やす方法は存在しません。私の場合は1日拘束されて5万円というのが標準的な報酬でした。年間200日この報酬で仕事ができたら1000万円プレイヤーになれますが、残念ながら私にはそこまでの仕事量の依頼はありませんでした。毎年4月にはゼロリセットされるうえに、自分が動かないとお金にならないというこのビジネスモデルのリスクはとても大きく感じました。いつ病気や怪我で動けなくなるかも分かりません。そこで自分が動かなくても収入が入るビジネスモデル、モノを動かすことで収入が入るビジネスをベースとして地方に築くことを決意しました。これが地方での起業を選択した2つ目の理由です。

そしていろいろな地方を回って感じていたのですが、コンサルという人種はそのほとんどが東京に集中していて、地方地方には個別の会社の経営課題を解決できるコンサルはいても、地域の課題を解決できるコンサルはほとんどいないということです。これは絶対数が圧倒的に少ないこともありますが、地元に根付いた方ですと「しがらみ」がたくさんあって地域全体のことに取り組めないのではないかと想像しています。

地域を元気にするのは「よそ者」「若者」「ばか者」とはよく言われることですが、まさにその通りだと思います。私が会社を作った福島県いわき市は私にとって何も縁がなかった地域です。2014年11月に仕事で初めて訪問し、それから様々なご縁が繋がって、ここで何かやってみたいという思いを持つようになりました。他の多くの地域にも言えることですが、いわきには食や人など埋もれた資源がたくさんありました。しかしそれらをまとめて発信するプロデューサー的な立場の方がいませんでした。ここでなら「よそ者」として、自分の力で何かできるかもと思ったのが地方での起業を選択した3つ目の理由です。

こうして2016年8月3日にいわきユナイト株式会社を設立し、平日はいわき、土日は東京という二拠点生活をスタートさせました。(妻は東京で仕事を持ってましたので完全移住ではなく二拠点生活をしています。)

ちなみにいわきユナイトという社名の由来は、いわきは東京23区が丸々2つ入るくらい広い市で、海もあり山もあり街もある魅力的なところですが、それ故に地域の特色を絞り切れずに中途半端になってしまっています。そこでユナイト(=まとまる、まとめる)が必要だと思い、社名にしました。

事業内容としては、いわきの地域資源のプロデュース事業という形でスタートしましたが、その後も様々なご縁をいただき、現在はいわきの地域商社として活動しています。このあたりの話はまた改めて書かせていただきます。スタートしてからまだ2年も経ってませんが山あり谷あり、良いことも悪いことも経験させていただいてます。(つづく)

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