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地方起業のカギはメインバンクが握っている

私が福島県いわき市での起業を決意したのは地元金融機関の存在が大きく影響しました。(東京生まれ東京育ちの私が、縁もなかったいわき市で起業するに至った経緯はぜひこちらをご覧ください。)

いわき市には都市銀行の支店は1つしかなく、地方銀行、信用金庫、信用組合が地域密着の体制を築いています。その中で、私が東京のコンサルとしていわきを初めて訪れた際に名刺交換させていただいた金融機関があります。それがいわき信用組合です。
信用組合という組織とはそれまでお付き合いしたことがありませんでしたが、休日に行われた地域おこしの会議にわざわざ参加されているところを見て、とてもやる気のある熱い金融機関だという印象を持ちました。その後しばらくお会いすることはありませんでしたが、イベントの案内等をわざわざ郵送してくれたのを覚えています。

そしていわき信用組合は「磐城国地域振興ファンド」というファンドを持っている点も非常に魅力的でした。融資だけでなく投資という選択肢を持っている地方では数少ない金融機関です。私はこのファンドからの投資を期待していわきでの起業を考えていた部分もあります。投資を受けるには株式会社である必要があります。そこでまず株式会社をいわき市に設立しました。

その会社で最初に取り組んだのは林業の補助事業で、無事採択されました。しかし手持ちの資金は資本金の50万円しかない中で、260万円の補助事業を進めるためにはつなぎ融資をしてもらう必要がありました。通常補助金が担保になるつなぎ融資は金融機関としても取り組みやすいものですが、この時の補助事業は当時私が代表をしていた東京の会社も絡めた複雑な形になっていました。これを理由に他の金融機関からは融資を断られましたが、いわき信用組合だけは対応してくれました。この融資をきっかけにメインバンクはいわき信用組合というのが固まりました。

この補助事業が終わり融資を返済したところで、ファンドからの投資について相談に伺いました。当初私が考えていた事業計画はいわきの食の地産地消を推進するこじんまりとした計画でした。ちょうどいわき信用組合でもこの数年前から農業や食の分野に力を入れ始めていて、いわきの地域をまとめて外に売り込む「地域商社」が必要だと考えていたようです。そこでいわき信用組合から「地域商社」というキーワードを提示されました。私にとって「地域商社」という言葉は、国が力を入れ始めた時でもあり、流行りものに乗っかるという意識があったためあえて避けていましたが、ファンドからの投資を受けるためと受け入れることにしました。

そして私1人で地域商社といっても何とも心細く感じられたのでしょう、いわき信用組合から紹介したい人がいるということで、1人の経営者を紹介されました。それが今共同経営者として共に活動している人物でした。彼は地元のスーパー、水産卸などを経て独立し、スーパー向けのコンサルや卸、いわき市内でセレクトショップの運営をしている流通のプロです。私が持っていない経験と実績を持っています。2人で話をして、私の会社いわきユナイトに参画してもらうことになりました。その後、スタッフとしてうちに入社してもらう人財もいわき信用組合の方から紹介していただきました。

そして「地域商社」としての事業計画を作り始めた訳ですが、融資を受ける場合の事業計画と投資を受ける場合の事業計画は根本的に違うんだなということを感じました。あまり無理をしない堅めの事業計画を作っていわき信用組合とファンド運営会社に見てもらったところ、「もっと大きな絵を描いてほしい」「夢を語ってほしい」と言われました。この時に自分たちにはベンチャースピリットが足りないと感じました。ここから事業計画を修正し、より大きなものにして、数か月の審査期間を経た後にようやく投資が決定され、実行されました。

ファンドからの投資が実行され、いわき信用組合で地元メディアを呼んでの記者会見を行い、地元紙には大きく取り上げていただきました。ここから「地域商社」として、いわき市内の企業と連携しながら商品を全国に流通させていくという事業を本格化させたのですが、出来たばかりの会社が「地域商社です」と名乗ったところで信用してくれる会社は少ないというのが世の常だと思います。しかし、今回はいわき信用組合がバックについている、磐城国地域振興ファンドから投資を受けている、新聞にも大きく取り上げられた、オフィスが公的なインキュベートルームにある、といった理由から創業間もない会社であっても信用力については問題を感じることはありませんでした。

こうして私の会社いわきユナイト株式会社は順調なスタートを切らせていただくことができました。この記事のタイトルにもあるとおり、「地方起業のカギはメインバンクが握っている」と強く感じています。資金面のサポートはもとより、人材のマッチング取引先の紹介、そして信用力の補完これらはスタートアップの企業にとってはとても大事な要素です。これだけのサポートをしていただいているので、当然のことながらWin-Winになれるようにいわき信用組合にも貢献しなければならないと思っています。それはいわき信用組合の取引先がしっかり儲かるようにすることです。これはいわきユナイトが掲げているビジョン、ミッションにもなっていて同じ方向を向いていると言えます。このような関係を築くことができたというのも、自分の思い切った行動力とそれを受け入れてくれたいわき信用組合の懐の広さがあったからだと思います。素晴らしいメインバンクに巡り合えたことに感謝です。

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