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上から読んでも下から読んでも、わたしはわたし。

もし体全体が目だったら、どこで聞きますか。もし全体が耳だったら、どこでにおいをかぎますか。そこで神は、御自分の望みのままに、体に一つ一つの部分を置かれたのです。すべてが一つの部分になってしまったら、どこに体というものがあるでしょう。だから、多くの部分があっても、一つの体なのです。
新約聖書 コリントの信徒への手紙一 12章17-20節 (新共同訳)

こんにちは、くどちんです。キリスト教主義学校で聖書科教員をしている、牧師です。

Netflixで今話題の「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を見始めました。

自閉症スペクトラム症を持つ弁護士ウ・ヨンウ。天才的な頭脳を持つけれど、回転ドアをうまく通れなかったり、大好きなクジラの話を相手構わずまくしたててしまったりするウ・ヨンウが、新人弁護士としていろんな事件と関わっていくお話です。まだ途中のエピソードまでしか配信されておらず、これから少しずつ見進めていくのが楽しみです(^^)

なぜこれを見始めたかと言うと、BTSの我らがリーダー、RM氏が、インスタグラムのストーリーでこのドラマのセリフを引用していたから。
ウ・ヨンウという名前はハングルで書くと우영우、上から読んでも下から読んでもウ・ヨンウです。ウ・ヨンウは自己紹介の度に、「上から読んでも下から読んでもウ・ヨンウです。ガチョウ(기러기きろぎ)、トマト(토마토とまと)、スイス(스위스すうぃす)、インド人(인도인いんどいん)、流れ星(별똥별ぴょるとんぴょる)、ウ・ヨンウ( 우영우うよんう)」…という一連の流れを並べ立てるのがお約束。
このセリフが韓国で流行っているのか、RM氏が引用されていたのを見て、「それなら私も観てみよう」と思ったのでした。ミーハーだね。うん。でもこうやって世界が広がるのも面白いから、いいのです(^^)

物語はまだまだ続くので、ドラマ全体のストーリーとしてはどういう展開になるのか分からないのですが、あるお話で印象に残った部分があります。
それは、ウ・ヨンウが弁護士事務所を辞めようと葛藤する場面。「自分は、弁護士ウ・ヨンウではなく、自閉症のウ・ヨンウとして見られる。そういう自分が依頼人の傍にいることは、依頼人のためにならない」という言葉でした。

他の弁護士と同じように法を愛し、依頼人のためを思って努力しても、「弁護士」という立場より先に「自閉症」という属性で括られてしまうことの痛み。

自分自身に対してもこういう「思い込み」による「囲い込み」というのはありそうです。「私はこういう人間だから」と決めつけてしまって新たな挑戦に背を向けたり、「私はこうでなければならないんだ」と自分に強過ぎる要求をしてしまったり。

枠組みを作ることは、自分の居場所を確かにしてくれるようで安心する部分も確かにあります。けれど、多くの場合それが枷になって自分を息苦しくもさせてしまいます。そして、「自分はこうでなければ」と思うと、他者と比較して自分を否定したり卑下したりしてしまうことも増えてしまいがちです。

檻も枷もいらない、何の制約も無くても、それでも私は大丈夫。
そう思えることが本当の「魂の自由」なのかな。
そんなことを思いました。

冒頭の聖書箇所はまさにそういう私たちへの「自由」のメッセージです。
「輝く目にならなければ」「よく聴き分ける耳でいなければ」と思うあまり、「においをかぐ」という自分のありのままの力を認められなくなってしまっているかもしれない私たち。
そんな私たちに「目は目で大事だし、耳は耳で大切。でも、どちらが上とか下とかいう問題ではなくて、鼻であるあなたもとても素晴らしいんだよ」と語ってくれています。

「上から読んでも下から読んでもウ・ヨンウ」という名前は、もしかしたらこの「ありのままの存在でいい」ということを暗示しているのかもしれません。
「上から読んだって下から読んだって、あなたはあなただよ。他の人があなたのことを褒めたって貶したって、それらとは関わりなくあなたはあなた、ウ・ヨンウはウ・ヨンウなんだ。」
そんな励ましが込められているように感じられました。

私もつい自分に対して「母親なのに」「教員なのに」などと、自分の持つ属性に従った「らしさ」のイメージを重ね合わせ、それとのズレに悩んだり自分を責めたりしてしまう時があります。
でも、「上から読んでも下から読んでもウ・ヨンウ。前から見ても後ろから見ても私は私。神さまはそれでいいって仰ってる!」と思えたら、自分に与えられた賜物をより良く活かしていけそうな気がします。

流行りのドラマを見るなんて、学期末の忙しい時期にドラマなんか見てるなんて、教員らしくない? 牧師らしくない? いえ、いいんです、そんな私も私なんです(`・ω・´)!
(……でもドラマはほどほどにして仕事はします。がんばれ学期末の先生たち。トホホ)


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