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なにも書かれていない白い本の物語

高2の終わり頃。バスの中でふと気が付いた。

毎日毎日たくさんの人がなにかのために家の外に繰り出している。ある人はあてもなく、ある人は大切な人のため。ご機嫌な方もいれば、考え込んでいるような方もいる。

僕らはいったい、一日に何百人の人とただすれ違っているんだろう。

今ものすごい偶然でこのバスに乗り合わせている人たち。彼らの顔も存在も、僕はきっとバスを降りた途端に忘れて行く…。

ただすれ違っていく人たち。その一人一人がなにかを信じ、なにかに苦労し、なにかに熱中している。

それは僕の予想もつかないことかもしれない。
それに、もしかすると誰かに話したいかもしれない。

いや、誰かに話したいなんて自分でも気付いていない人もいるんじゃないかな。

でも、もしふと誰かに話しかけられたらどうだろう?

自分のことについて素直に関心を示してくれる学生が目の前に現れたらどんな気持ちになるだろう?

僕は、なんとなくこの問いかけについて確かめてみることがステキなことを起こすような気がした。

それで、勇気をふりしぼって、バスで隣に座っていた女性に話しかけてみることにした。緊張で喉がからっからだった。心臓が激しく鳴っていた。

それでも、あの時はなぜだか一歩踏み出せた。

変わりたかったからかもしれない。

僕はその日まで高2のクラスメイトの誰ともまともに会話したことがなかった。同級生に今さら話しかけるより、知らない大人に話しかける方が気が楽だった。

「迷惑なこともあるかもしれないけど、
同じようなことをする人もあまりいないようだし、
たまにはこんな変な人がいても大丈夫だ。」

「それに、僕はチビでひ弱そうで、真面目そうで、制服も着てるし、怖がられて悲鳴を上げられたり通報されたりはしないはず、よし!」

自分を鼓舞し、ようやっと話しかけることができた。

僕はしどろもどろになりながらも、

「大人って楽しいですか?」というようなことを隣に座る20代後半くらいの女性聞いた。

その人は一瞬驚いたような顔をしたけれど、でもすぐに「どうして?」と笑って聞いた。僕が言葉にするのに苦戦している様子を見て、彼女は自分から語り出した。

「私ね、これまでけっこういろんな仕事をしてきたんだー。会社に少し勤めたり、保育園で働いたり。今はね、空港で働いてる。パイロットのサポートをしたりするんだよ。」

ほんとうに楽しそうに、彼女は自分の仕事について話してくれた。僕の話も聴いてくれた。名前は、アサトさん。ステキな女性だった。

しばらく話して、自分の降りるバス停が近づいてきた僕は思い出したようにバックの中から白いノートを取り出した。

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中には何も書かれていない、白い小さなノート。僕はその1ページ目を開き、ペンと共にアサトさんに渡した。

「このノートに、言葉を書いてほしいんです。アサトさんとの出会いを、このノートを見たら思い出せます」

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忘れもしない、2018年2月23日。僕は1人の人との出会いの中で、自分の殻を一つ破っていた。そして、この世界の温かさを垣間見た気がした。

高2の終わりに、僕は自分の知る人知らない人に話しかけ、語り合い、その後で白いノートに言葉をもらうという活動を密かに始めた。どんな言葉をもらうかは特に決めていなかった。そのときのフィーリングで、質問をしてみたり、今思いついたことを書いてくださいと言ってみたり。

やがて、校内で100人近くの人に言葉をもらいノートは2冊目に突入した。同級生と話すのがだいぶ楽になっていた。


沖縄で高校を卒業し、富山大学に進学した。

その活動は沖縄から富山に移った今も続けている。気ままに。

始めてからもうすぐ2年が経つ。300人以上の方々から言葉をいただいた。2冊のノートは富山であっという間に埋まり、3冊目からは「白い本」にグレードアップした。白いノートのチャレンジが、白い本のプロジェクトになった。

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ちょうど令和に変わった時だったし、5月だったから、表紙に薫風と書いてみた。「薫」も「風」も両方出典に入っている。なんだかいい感じ。

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僕は白い本をテーマに作品を作りたい

物語っぽく、僕の白い本について書いてみました。

いかがでしたでしょうか?

僕は白い本を通して様々なものを得ました。

たとえば…

ほとんどどんな感情にもフィットする言葉が見つかる(現在400通り近くもあるので)。

一度しか会っていない人との出会いがちゃんと宝物になる。時には思い出して涙することも。

自分はこんなにたくさんの人と話せたんだという自信になった

意外とみんな突然の頼みを快く引き受けてくれることを確かめ、世の中には優しさが溢れていることを実感できた。

いろんな方との出会いがあり、長く付き合うことになる人もちらほらいました。

などなど。

僕は、白い本のプロジェクトを小説か絵本か、とにかく作品にして少しずつ広めたいんです。そうすれば世の中がもっとあったかいものになると信じているからです。


用意するのは小さな白紙ノートだけ。

自分の視野を広げるために世界を旅できなくても、諦めなくていい。話すはずがなかった誰かと語り合うことだって自分の世界を広げてくれます。

世の中に嫌気が差しているなら試しに白いノートを持って街に繰り出してみてください。きっとステキな大人が言葉をくれます。

友達や家族から言葉をもらってみてください。なにかで打ちひしがれた時見返すときっと勇気が湧きます。喧嘩したあとに見返せば、なにか大切なことを思い出すかもしれません。

久々に会ったときに、書いてもらった言葉について話してみてください。相手も、あなたと出会ったときのことをより鮮明に思い出すはずです。

ね、なんかほっこりしません?


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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!




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