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生クリームオンリー

クレープの屋台であったりお店だったりで必ず注文するものがある。
それは「生クリームオンリー」のクレープだ。

お店の人に「え?」って言われたりそういう顔をされたり、鼻で笑われる事もある。
それでも私は必ず「生クリームオンリー」を注文する。


つまらないこだわりと子供の頃の思い出が今でも私をそうさせる。

子供の頃の私にとって「生クリームオンリーのクレープ」はとても贅沢に思えた。
他にトッピングなどあっても邪魔に思えて、生クリームだけの真っ白いクレープ、雑味の無い純粋な生クリームだけのクレープを頬張る私を見て周りの大人たちは笑うのだ。

大人たちが私を見て笑う。
微笑ましい光景だと言わんばかりに和やかになる。

「お前は本当に生クリームが好きだなぁ」

別にそんなことはないんだよ。
だってみんなが笑うから。
「この子は生クリームだけのクレープしか食べないんだよ」
そういう認識と設定に従っていればみんな笑顔でいられるでしょ?
笑顔でいてくれるでしょ?
ケンカしないでくれるでしょ?


子供心に思う事はあっても出来る事は少ない。
拙い頭で考えて自分自身に擦り込む。
人に求められる自分を理解してそう在りなさい。
キャラクターは複数使い分けなさい。
必要とされる自分を造り上げなさい。


初対面でも人見知りしなくなった。
楽しくなくても大笑い出来るようになった。
興味が無くても興味があるように振る舞える。
何年もやってたから割とカンタン。

笑って欲しいんでしょう?
和ませて欲しいんでしょう?
場を盛り上げて欲しいんでしょう?
嫌な顔せずに応じればいいんでしょう?


自分が傷付く事は回避出来ない。
そんな事を気にしてたら生きていけない。
他人を傷付けてでも自分を守って、なのにやっぱり傷付いてる自分の弱さは変えられない。
傷付けて傷付くのは世の常。
そうやって学んで少しずつ成長する。


お花見の屋台で今年も言った。

「生クリームオンリーできますか?」

来年も再来年も、どこかのお店でも。
私はクレープを食べたがり、そしてあまり喜ばずに食べ切る。
生クリームだけのクレープを注文する事を私はこれからも止められない。

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