人の心に残る作品を。“ストーリーを宿す”イラストの描き方
KUAイラストアドベントカレンダー、12月6日はフジワラヨシト先生から『人の心に残る作品を。“ストーリーを宿す”イラストの描き方』です!
京都芸術大学アドベントカレンダー6日目を担当するフジワラヨシト(@fuji25_2501)です。
ストーリーが感じられる絵とはなんでしょうか? 壮大な世界観が感じられる絵? それとも、不思議な出来事が起こっている絵? はたまた、爽快な色使いの絵……?
いろいろと挙げることができます。どれも正解といえば正解なのですが、あくまでこれらはストーリーを感じさせるための技法であり、ストーリーを感じさせる絵そのものではありません。
ストーリーを感じさせる絵とは「絵の中のキャラクターや背景が何らかの要素によって変化を促され、それと同時にイラストを見た人の感情を動かすもの」であると筆者は思っています。
我々人間はストーリーがあるものに、強く感情を動かされます。なぜかというと、登場人物に見た人自身を重ね合わせ、追体験することができるからです。
マンガやアニメ、映画、小説などでも同じ体験をした人も多いと思います。絵でも同様で一枚の絵でストーリーを描くことができると、多くの人の共感を呼ぶことができるようになります。
今回は人の感情を動かす、ストーリーの感じられる絵のつくりかたについて、筆者の方法をご紹介します。
「原因→行動→結果」を意識した画作り
さて、ストーリーというとつい壮大な物語が感じられるものかと思われそうですが、決してそうではありません。日常のなかの些細なことや、取り留めのないことも十分ストーリーとして成立します。
そういったストーリーをつくるためには、「原因→行動→結果」の3つの要素をイラストを見た人に意識させることが大切です。
この要素が揃っていると、イラストを見た人にストーリーを感じさせる絵として成立します。逆にいうと、3つの要素のうちのひとつだけの要素を描いても、ストーリーのある絵としては成立しづらいかもしれません。
たとえば、登場人物が走っている絵があるとします。これは3つの要素のうち行動を表したものですが、これだけではストーリーが感じられる絵とは言い難いです。なぜなら、これだけではどのような原因があって、どのような結果になったかが想像できないからです。
そこで、行動の前後に原因と結果をプラスしてみます。
原因:待ち合わせに遅れそう
行動:登場人物が走っている
結果:待ち合わせに間に合った
行動の前後の原因と結果をを意識させることのできる絵を描くことで、ひとつのストーリーとして成立します。つまり、見た人になぜ登場人物がその行動をして、その後どうなるのかを考えさせることができる絵が、ストーリーを感じさせる絵といえるのです。
この絵の場合、描かれている行動は「朝顔の観察日記をつけている」ですが、それだけでは見た人に登場人物の行動を理由を想像させることが難しいですね。
そこに、原因として「アゲハチョウが葉っぱにとまった」、結果として「素晴らしい観察日記が描けた」という状況を付け加えると、見た人にストーリーを感じさせることができます。
ただ、イラストレーションの場合は伝えることのできる情報に限りがあります。制作者としては動機や結果は明確に設定するべきではありますが、必ずしも見た人がそのとおりに受け取る必要はありません。
人それぞれの解釈が生まれること。そこにもイラストの面白さはあるのだと思います。
ストーリーを補強するために"5W1H”を使う
「原因→行動→結果」の要素を絵に落とし込むことがストーリーを感じさせる絵になることがわかりました。ここからは、その要素をさらに具体的にするためにするにはどうすればよいのかを考えてみます。
そのこたえは「5W1H(when:いつ、where:どこで、who:だれが、what:なにを 、why:なぜ、how:どのように)」をしっかりと設定することです。
たとえば、女子高生が走ってるという設定で考えてみましょう。
when:放課後の夕方
where:校庭
who:女子高生が
what:走っている
why:校門で待ってくれている友達の一緒に帰るために
how : 慌てた様子で
このようにどのような状況で登場人物がその行動をしているのかを設定することで「動機→行動→結果」をより補完することができます。
実際の例を見てみましょう。
この絵の場合だと
when:朝、投稿時
where:通学路・歩道橋の上で
who:小学生が
what::待ち合わせを
why:一緒に登校するために
how:楽しそうに
という状況を設定しています。状況を具体的にすることで登場人物の行動がより伝わるのではないでしょうか。
この「5W1H」は最初にきっちりと決めてしまう必要はありません。最終的に状況が伝わるようであれば途中で付け足していってもOKです。
さて、ここまでで、ストーリーが感じられる絵の作り方がわかりました。しかしこれだけでは人を惹き付ける意味というでは少し印象が弱いかもしれませんね。
それでは、見た人に強い印象を与えるストーリーが感じられる絵を作るにはどうすればよいのでしょうか?
見た人に「えっ?」と思わせる少しの違和感をプラス
印象に残るストーリーにするためには、見た人に「えっ? なんで!?」と思わせるようなギャップや違和感を加えることが大切です。なぜなら、ストーリーの想像が膨らむるため。
たとえば、さきほどの女子高生が走ってる設定で考えてみましょう。
when:放課後の夕方
where:校庭
who:女子高生が
what:走っている
why:校門で待ってくれている友達の一緒に帰るために
how : 慌てた様子で
これを「いつ:放課後の夕方」→「いつ:すっかり暗くなった放課後」と普通ではあまりないかもしれないという場面設定に変更してみます。
そうすることで、ありきたりな「友達と帰る」というストーリーから、
「部活が遅くなってしまったのかもしれない」
「放課後に補講をおこなっていたのかもしれない」
「学校の先生に叱られていたのかもしれない」
と、さまざまな想像を膨らませてもらうことができます。
ほかにも「どこで:校庭」→「どこで:人目につきにくい裏門」と変更すると「他の人に知られたくない」「こっそり帰りたい」など、こちらも見た人の想像に新しい余白を生み出すことができます。
さらに「どこで:校庭」→「どこで:隕石の降る校庭」だと、かなりギャグっぽくなってしまいますが「なぜ隕石が降ってるの!!!???」と強制的に見た人の想像力を働かせることができますよね。
この絵の場合だと、
when:花火大会の夜
where:花火の見える自室で
who:受験生が
what:机に向かって勉強をしている
why:試験勉強のため
how : 孤独に
という「5W1H」の設定をしています。
花火大会の絵であれば「明るい」「楽しい」といったようなことをイメージさせる絵が多いですが、あえて「暗い」「辛い」をイメージさせるような状況設定にすることで、印象に残る絵にすることができます。
まとめ
ストーリーを感じるイラストの描き方についてご紹介しました。最後に、今回お話したポイントをまとめます。
ストーリーがある絵は人の感情を動かす
ストーリーの最小単位は動機→行動→結果
5W1Hで細かい状況設定
少しの違和感をプラス
絵を描くこととストーリーを描くことは必ずしも結びつくわけではありませんが、ストーリーを描くことで、絵を見た人の共感につながることも多いのです。
決して難しく考えず、大切な人にお話するようなつもりで自分だけのストーリーを描いてみてくれると嬉しいです。
プロフィール
フジワラヨシト
京都芸術大学 通信教育部 イラストレーションコース 添削教員。 2020年よりイラストレーターとして活動。ストーリーを『伝える』イラストを多く制作。 書籍、広告、教材、WEBメディアなど、幅広く企業案件を手掛ける。
https://twitter.com/fuji25_2501
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