デフォルメ力を向上させる「資料写真」の使い方
KUAイラストアドベントカレンダー、12月13日ははーみん先生から『デフォルメ力を向上させる「資料写真」の使い方』です!
こんにちは。イラストレーターをしています、はーみんです。KUA通信教育課程イラストレーションコースの非常勤講師として、学生さんの課題添削もしております。
よくイラストの描き方の参考本などで、うまくなるには資料を見て絵を描こうといったことを目にする機会が多いですよね。ですが、資料を探すのが面倒であったり、なにも見ないでもわかっているから描けるよねという方もいるのではないでしょうか。わたしも昔は、むしろなにも見なくても描ける方が良いぐらいに思っていました……。
しかし、資料を使うことは上達するために必要なこと。今は資料なしでは不安になりますし、人物を描くときでも風景であっても資料をよく使っています。でも、写実的に写っている通りに描くわけではないのです。
では、写真または資料をどう活用しているのか?また、写真から手描き感のあるイラストへの描写の考え方とは?
今回はそういったことをお話しようと思います。こういった形で今回記事を書かせていただきますが、あくまでご紹介するのはわたしの考え方や勉強法。
これを実践したから必ずうまくなるわけではないかもしれませんが、ひとつの考え方としてご自身のやりたい表現ができるようになるためのきっかけになれば幸いです。
わたしが思う「良いデフォルメ」
人によって好みがあるのであくまでわたしが思う好きな絵のデフォルメ具合ですが、わたしは写実的でもありイラスト感があるデフォルメが良いものだと思っています。
デフォルメなら簡単にそれらしく描けば良いのではと思うかもしれませんが、じつは実際の物をみると自分の想像と違うものです。実在しているものをそれらしく描くために必要なのが資料なのだと思っています。
資料の探し方
風景であればできる限り自分が実際に行くことをおすすめしています。実地で写真を撮るほうが雰囲気も掴みやすいし、好きな角度や画角で撮れるためです。ただ、足を運ぶのが難しい場所もありますよね。その場合はネットで探します。最近はさまざまな画像が見つかる「Pinterest」を活用することも。
資料は一枚ではなくできる限りたくさん集めます。写真によって映り方や雰囲気が異なるため、一つの資料だとそれに影響されてしまうからです。
デフォルメのコツ
デフォルメする場合、写真通りに描いているわけではないとお話しました。では、資料のなにを見ているのでしょうか。
私の場合は、
・シルエット
・質感
・構造
・風景であれば建物の影の落ち方を参考にする
・物の大きさ、関係
などを中心に見ています。
次に私なりのデフォルメの描き方をご紹介します。簡単に情報を捉えることが基本です。
シルエットで描いてみる
植物であればどこから葉っぱが生えているのかを観察をして理解した上で描く。写真からわからない情報は解説文などを調べたりします。そうすることで細かく描写しなくてもリアリティが出てきます。
時には影を省いてみてシルエットを残すだけでも、描いているものがなにか伝わることも。これを使うのは画面から遠くにあるものであったり、明暗差で形が出せそうな場合です。
写真を記号化してから描いてみる
写真なのでつい鮮明にみてしまいがちですが、イラストにする際に必要な情報だけ見たいので簡単な形で捉えていきます。慣れてないうちは目を細めて写真を見てみると、大きな影やシルエットしか見えないので捉えやすくなります。とくに遠くの背景を描く際に有効です。
グラデーションにしてみる
ただグラデーションにすれば良いわけではなく、色の特性なども取り入れていきます。
この絵の場合は写真よりも昼間の晴れている絵なので、光が当たっていそうな上の方は白っぽく明るいといった感じです。
手描き感が出せるブラシ
デジタルで絵を描く場合、ブラシの種類はなにを使うかで絵の印象が変わってきます。今回は私が使っている手描き感の出せるブラシをご紹介いたします。
私が使用しているおすすめのブラシは「Photoshop」で無料ダウンロードが可能なpastel-ish-brush。商用利用も可能です(「CLIP STUDIO PAINT」でもダウンロードは可能)。
ブラシは自分で使いやすいようにカスタマイズもできますが、とくに不便がないのでそのまま使っています。
写真からデッサンしてみる
デフォルメするために資料写真から正確な形や情報を読み取るには、実はデッサン力も必要です。
デッサンを描くことがなぜ大事なのかというと、見る力とそれらしく描くための力を上げることに向き合うことができるためです。光の反射具合や影のつき方などを見ることで素材の描き分け力もデッサンで養えます。これができるようになってくると、単純ですが絵のクオリティを上げることができると思います。
私も鉛筆デッサンを学校で習ったことがありますが、昔はデッサンをすることにあまり意味合いを感じられませんでした。ところが、やはり基本的なデッサン力はどういった絵を描くうえでも重要なのです。
作品を描いているほうが楽しいと感じることもありますが、それだけですと単純なデッサン力が衰えてしまう気がするので、今でもたまに思い出すために描いたりします。
こちらのデッサンは、透明のフィルムとかガラスとかを観察するために描きました。目的があれば描きやすいですね。
実際に見て描くと細部も見えるので、すこしリアリティが高くなりすぎました。悪いことではないですが、目指す所のデフォルメより描きすぎてしまったなという感じです。(とはいえ、とくに初心者であれば立体物の構造を把握する練習になるので、慣れるまでは実物を見て描くデッサンをしたほうが良いです)
こちらのドーナツは自分で写真を撮ってから見て描きました。デッサンは実物を見て描かないといけないと言われてきたのですが、実際にイラスト制作で使う資料は写真がほとんどなので、写真からデッサンするほうが実用性があるのではと思っています。
実物を用意したうえで写真を撮影し、それを描くのがデフォルメの場合は良いかもしれません。大きさや素材感など実際に見たうえで写真を見ると描くときに理解がしやすいからです。
ドーナツの影は写真では濃く見えていますが、それをそのまま描いてしまうと、ドーナツの穴が見えづらくなってしまいますよね。また、お皿とドーナツとの空間も感じにくくなってしまいます。なので、実物よりも明度は高めで描いています。
デッサンは「見たまま描く」というイメージですが、これは考え方としては合っていないと思います。実は、見たまま描こうとすると奥行きの表現が上手くできなかったりします。
また、絵を描くときに注意しなければいけないのは、たくさんの枚数をこなせばいいわけではないということです。
たくさん描くことはもちろん必要ですが、それよりも理解できているかのほうが重要。ひとつのモチーフに向き合って、時間をかけてゆっくりとコツを掴んでみてください。
まとめ
今回はいろいろと資料写真に関することをお話していきましたが、どうでしたか。
私は最初の頃、背景が苦手だったため、人物メインの絵ばかりを描いていました。そのうち表現したいことが増えたので背景のある絵にも挑戦するようになりましたが、それでも資料写真を参考にうまく描写できず、もやもやしていました。
その状態を脱却できたのは、資料写真の捉え方を変えたから。知ることで好きになり、好きになることで苦手意識がなくなるという経験ができました。
ですので、まずは興味のあるものから挑戦してみたり、苦手意識を持たずに楽しく絵と付き合ってもらえたらと思います。それでは、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
プロフィール
はーみん
イラストレーター。主な実績は下記の通り。
・学宝社「夏の補充学習」「冬の補充学習」数学、社会、理科、国語、英語、各表紙
・「ローソンプリント」にてイラストブロマイド4点販売
・アサヒ飲料 カルピス新商品「カルピスとリンゴ酢」公式TwitterアカウントにてPRイラスト
https://twitter.com/_haaaaamin
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