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グロースサイクルの本質とは何か?

私はGoodpatchという会社でクライアントワークを通じて、様々な企業や事業・組織にUXデザインやサービスデザインの専門性を持って携わってきました。
特に新規事業を立ち上げる際に「事業や組織共通のコアとなる循環をどのように作るのか」「複数の観点を統合するためにはどうすれば良いか」「何を持ってMVPを定義するのか」などを考える上で起点にしていたのがこのグロースサイクルです。

本記事では、グロースサイクルはなんのためにあり、どのような活用ができるのかを、幾つかの事業立ち上げで実践した経験をもとに考察していきたいと思います。

グロースサイクルとは何か

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THE GUILD / note 深津さんの記事中に「サービスがグロースする為の相互作用図」として記載されているものが本記事で扱うグロースサイクルです。

本記事では、以下のnoteにある考え方をベースとして実践した経験をもとに考察をしていきますので、実際にあるサービスのグロースサイクルを見て全体像を把握したいという方は以下の「noteにおけるコア体験と相互作用メモ」に記載されているnoteの例がとても素晴らしいので、ぜひご覧ください。

グロースサイクルの本質

早速ですが、結論から言うとグロースサイクルは事業成長のための持続的な価値循環を作るための設計図であり、グロースサイクルの本質は事業成長に必要な観点の網羅だと私は考えています。

事業・サービスを、体験価値とビジネス価値を織り交ぜながら継続的に成長させるためには、必要なコアの価値を捉え必要なオブジェクトや体験を定義して繋げ合わせることが必要です。これを繋ぐ上で、健全な状態が自然と保てる循環を生むエコシステムを作る設計図がグロースサイクルです。

ここでいう健全な状態というのは、不自然な資金投入やインセンティヴなしでもサービスの継続性が保てる状態のことを指します。

私はグロースサイクルを説明するとき、イメージしやすいように「KPIツリーのサイクル版」「ビジネスモデルから価値を抽出したサイクル」のような言葉で説明をすることもあります。

ここからは、グロースサイクルの作り方や抑えるべき観点、応用方法などを考察していきます。

グロースサイクルの描き方

では、グロースサイクルはどのように描いていけば良いのでしょうか?

前述の通りグロースサイクルとは事業成長のための持続的な価値循環を作るための設計図なので、裏を返すと複数の価値がきちんと循環しているかを測る必要があります。

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そのため、グロースサイクルのセル(四角)には達成したい効果が入り、それをつなぐ矢印部分には各KPIが配置できるように設計していきます。
また、この矢印自体が次のセルの効果を増やすための施策として捉えると、各KPIを達成してある効果を増幅させるための施策を考えることでサービスが成長するという健全な循環をつくることができます。

この達成したい効果の中身を考えるときに必要な観点は、大きく分けると以下の2つに分けられると考えています。

サービスを構築する上で欠かせないオブジェクトを扱う観点
 →「ユーザーが増える」「コンテンツが増える」など

 ・その結果や効果として設定する指標を扱う観点
 →「シェアが増える」「認知が増える」など

グロースサイクルを描く時よく陥りがちなのが、サービス内のアクションをベースにフロー図を書いてしまうという点です。
アクションをベースにするとサービスブループリント的なフロー図になってしまうため、そもそもサイクルにならずに一方通行で終わってしまいます。

グロースサイクルのセル(達成したい効果)の設定をうまくするためには、まず「〇〇が増える」という形式で考えるのがコツだと考えています。
これがないとサービスが回らないというオブジェクトに対して「〇〇が増える」というセルで最小のサイクルを描くことでグロースサイクルの基礎を作ることができます。

更に、サービスの中で特に重要なオブジェクトに関しては「〇〇が増える」というセルに続けて「良い〇〇が増える」と定義し、このサービスにとってどのような状態・属性のオブジェクトが正なのかを考える土台とします。

この定義をしてサービスにとってのDo・Don'tが明らかにすることで、Doを増やすための正の力学が働きやすくなり、その積み重ねがサービスの価値基準を作っていきます。

グロースサイクルで網羅すべき観点

「事業成長の観点を網羅している価値循環の図」を作るために、私が実践を繰り返すことでたどり着いたグロースサイクルで最低限満たすべき観点をまとめてみました。

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収益のサイクル:ビジネス観点
体験(リピート)のサイクル:プロダクト(UXデザイン)観点
認知拡大のサイクル:広報/マーケ観点
データ活用のサイクル:プロダクト拡張・グロース観点

続いて、上記4つの観点について解説していきます。

▼収益のサイクル
ビジネス観点として、継続的にサービスを提供し続けるための収益が見込めるかどうかを定義するサイクルです。
これは便宜上「サイクル」という形にしましたがビジネスモデルによっては、グロースサイクル全体=サービス自体に対して対価として料金が発生するSaaS系のサービスもあるため、ビジネス観点で持続可能性を考えられているかどうかを確かめるという意味合いで捉えていただければと思います。

▼体験(リピート)のサイクル

多くのサービスは、ユーザーの継続的な利用を念頭に設計されます。
継続的な利用をするかどうかユーザーが判断し、リピートする時に回るコアの体験がこのサイクルで考慮すべき観点です。

▼認知拡大のサイクル

サービスをグロースさせていく上で、広報やマーケティングで予算をつけて外部にTVCMやWEB広告などの発信をしていくのは必要です。
ただ、そういった大幅な資金投入なしに認知を拡大させるためにはどうすれば良いかを考えるのがこのサイクルで考慮すべき観点です。

▼データ活用のサイクル

体験(リピート)のサイクルが回ることで、サービスの資産として溜まるあらゆるデータを正しく活用し、更に良い粘着性のある体験を提供することを考慮する観点です。例えば、ユーザーの注文データ・閲覧履歴などからレコメンドするシステムなどもこのデータ活用のサイクルに当たります。

これら4つの観点を網羅することで、事業成長や事業継続に必要な観点が、循環するシステムとして落とし込まれ、サービスの提供価値がつながっているかどうかを測ることが可能になります。

また、データ活用や認知拡大の観点を通して中長期の視野で広くサービス全体を捉え直すことで、将来的なグロースの方向性を検討することや、初期からデータ活用をある程度見越した構造の設計をすることにも役立ちます。

MVP(Minimum Viable Product)との関連

さらに、MVPと呼ばれる価値検証可能なプロダクトを作る際にもこのグロースサイクルは起点となり得ます。

多くの場合においてMVPでは、コアの体験に対してユーザーがお金を払ってでも使いたいと思うか検証できる状態を目指すため、4つのサイクルのうち、以下の赤線で表される収益・体験・認知拡大の重なっている部分のサイクルを満たし一連の体験が実現できる最小限のプロダクトがMVPであるという定義ができると考えています。

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グロースサイクルの応用

グロースサイクルはビジネスモデルが大きく変わらない限り、基礎の部分はほぼ普遍なため、グロースサイクル起点で組織の仕組みへの反映を試みることも可能です。(むしろここが普遍でないと感じる場合は、おそらくセルの粒度が細かすぎると思います。)

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上図のように、事業が成長してきて組織をセクションで分けそれぞれ自走していくフェーズでは、このグロースサイクルで追うべき指標と効果が明らかになっていることで、OKRをたてたりTHE MODEL型にKPIをかぶせるなどの事業判断をする際にもどのような設計・判断が必要なのか一目瞭然です。

また、上図で隣り合うセクション同士が対話・連携する仕組みが組織にないときには、そういった会議体や仕組みを設計して組織構造で補いきれない部分を補完するとセクション間の連携もスムーズになり、ユーザーへの価値提供が最大化していきます。

さいごに

グロースサイクルとは、事業を持続的に成長させるために本来別々の専門性をもつ人たちが個別で脳内に持っている観点をつなぎ合わせ、一つの持続可能なサイクル(相互作用)を考えるためにあるものです。

言うなれば、事業成長のための持続的な価値循環を作るための設計図であり、事業成長に必要な観点を複眼的に網羅するための地図でもある。
こういった判断や観点の依代を得ることがグロースサイクルがもたらす効果だと私は考えます。

チームとしてあらゆる観点を複眼的に網羅して考え、誰にでも伝えられる依代を持つことで、一つのチームとして高いレベルでビジネス価値と体験価値を織り込んだ事業判断や、OKRの設計や組織マネジメントなどを実行するための要になるというのが、私が実践を通して導き出したグロースサイクルの本質的価値の解釈です。

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國光俊樹

記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。とても嬉しいです!

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Experience Designer|Goodpatch ビジネス価値と体験価値を繋げるデザイナー。特に新規事業系が得意。 入社オンボーディングSaaS「Onn」の創業メンバーもしています。 onn-hr.com Twitterは @ku_ni_29